金沢城 三十間長屋
2018年10月06日
金沢城散策の際、、ついうっかりしてるとスルーしてしまうのが、ここ三十間長屋(さんじっけんながや)。
と言うのも、ちょっとメインルートから外れたところにあるから。
石川門から入り、三の丸広場を抜けて、橋爪門をくぐると目の前に広がるのが二の丸広場。
そしてその二の丸広場の右手にあるのが菱櫓(ひしやぐら)。
目立ちますからね、菱櫓。
そのまま右側に向かってスタスタスタ・・・、おっと待って!!
左側なんです、三十間長屋!!
左側ぁーーー!!!!
それも極楽橋って橋を渡って、ちょっと登って、雑木林に隠れるようにひっそり。
こりゃスルーしますわ・・・。
でもこの三十間長屋、金沢城においてはとても重要な建物で。
江戸期に建てられたもので現存する、たった3つの建築の内のひとつなんです(後のふたつは石川門と鶴丸倉庫)。
すごく貴重ぉーーーーなんです。
サイズは長さ48メートル、幅5メートル。
構造は二層二階。
用途は倉庫。
「鉄砲蔵」などとも呼ばれてたので、かつては武器庫として使用されていたようです。
屋根は見事な鉛瓦。
この鉛瓦ってのは金沢城の大きな特徴の一つで。
瓦の表面に鉛板が貼ってあります。
この鉛が放つ白くて鈍い光沢が実に美しく。
でも同時にカネもかかり。
加賀百万石の財力があったればこそできた贅沢なんです。
壁面の腰回りにはこれまた金沢城の大きな特徴である海鼠壁(なまこかべ)。
四角い瓦をタイルのように互い違いに敷き詰め、隙間を漆喰でかまぼこのようにこんもりと盛り上げてあります。
これも大変手間とカネのかかる装飾で、潤沢な資金がなきゃできません。
贅沢好きだったんでしょうね、前田の殿さま。
底部の石垣も大きな見どころで、「金場(かなば)取り残し石垣」と呼ばれています。
石をガチガチ組み上げること自体は一般の石垣と同じですが、表面にわざと凹凸をつけてあります。
これにより視覚的堅牢さを表現したのです。
屋根と壁をじっくり楽しんだら、今度は1回ぐるっと建物の周りを一周してみてください。
表と裏で装飾に違いがあるのが分かるはず。
表側はのっぺりとした退屈な見た目なのに、なぜか裏側には派手な出窓が三つ。
中央は入母屋造り、両側ふたつは唐破風。
なぜか表より凝った装飾になってます。
なぜ?
これはまあちょっと考えれば分かるんですが、城外から金沢城を眺めた場合、この裏側が「見える側」になるんですね。
なので「見えない側」の表面はシンプルにして、「見える側」の裏面は大げさにデコレーションして見栄を張ったと。
そういう訳です。
金持ちのクセにやること姑息ですな(笑)。
そしてもうひとつの注目ポイントが屋根の造り。
左右で違う造りになってます。
改めて建物を左右真横から見比べて下さい。
左側は立派な入母屋造り、右側はさっぱりした切妻造り。
これも外から見える左側だけ見栄張ったんじゃないの?と思われるかもしれませんが、こちらはちょっと事情が違いまして。
この三十間長屋は、1759年に起きた宝暦の大火で1度消失しています。
この消失前、実は右側に櫓が建っていたのです。
その約100年後の1858年に建てられたのが、今ある三十間長屋でして。
ただこの時の再建では、櫓までは造られなかったのです。
財政状の問題からか、それとも必要性の問題からかは知りませんが、とにかく後回しにされたんです。
でも将来的には作る可能性もあるから、その時は改めてこの三十間長屋にドッキングさせようと。
だから接続側に当たる右側の屋根は、取りあえず適当で(←?)いいんでねえの?と。
そういう事だったらしいです。
とは言え、御覧の通りその構想が実現する事はありませんでした。
残念。
金沢城の三十間長屋。
メインルートとは外れたところにあって、ちょっと分かり辛いとは思いますが。
大事な必見スポットです。
忘れずにぜひ足を運んで御観覧下さい。
時々内部公開もやってます。
無料ですので、その時はぜひ中も見てってくださいね。
出窓から見降ろす金沢市内の眺めは壮観ですよ!
金沢城 三十間長屋
住所:石川県金沢市丸の内1 金沢城公園内
TEL:076-234-3800
関連タグ >> 金沢城 お城
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