西田幾多郎記念哲学館(ミュージアム編) 空の神髄を体感せよ
2020年03月07日
石川県かほく市にある西田幾多郎記念哲学館。
石川県出身で日本を代表する哲学者、西田幾多郎を顕彰する記念館です。
ここは建物がとにかく面白い!
建物のアチコチに「哲学」が込められているのです。
この建物の一体何が哲学なのか?
隠されたヒミツをひとつひとつ解き明かします。
前回は駐車場から建物に至るまでの「アプローチ編」でした。
ここまでで既にふたつの「哲学」を体験。
この時点で深淵なるザ・哲学ワールドへと迷い込む、軽い準備運動は終わってるはず。
今回はいよいよ建物内部の「哲学」を見て行きます。
受付を済ませると、左側が館内への正式な入場口。
ここから中へと入るわけですが、目の前に飛び込むのは、いきなりすーーーっと伸びる直線。
定規でビシッと引いたような直線。
右はコンクリート壁、左はガラス。
無機質な人工物で構成された無機質な直線。
これもね、哲学なんですよ。
何の道標もない、冷たい道。
真っすぐ進むのが正しいのか?振り返るのが正しいのか?
それとも真っすぐという既成概念を打ち破って、ぐねぐねと曲がりくねるのが正しいのか?
そんなことを考えさせ迷わせる空間、それがこの直線通路なのです。
とか言いながら、この通路の右側に第一の展示室が現れます。
やっぱね、人生寄り道も必要なのですよ!
展示室のコンセプトは「哲学へのいざない」。
ここでまず西田哲学に触れます。
冒頭、いきなりぶつけられるのが「円と井戸と窓の話」。
まあ要するに同じ事象も見方を変えると全く違って見えてくるという話なのですが。
うん。
分からんし先進みましょう!(←おいっ!)
難解な西田哲学ルームを抜けて、さっきの直線通路に戻り、突き当りまで行くと映像ルーム。
ここで西田幾多郎の生い立ちや人生、作品などに触れることができます。
画面はタッチパネルになっていて、興味のある情報だけを拾って好きな順番で見られます。
と、機能だけに感心していてはいけません。
この空間の意味を考えてみましょう。
それは「立ち止まり」。
迷い迷う哲学の世界、時には立ち止まり、休憩し、考える時間も必要。
その「立ち止まる時間」こそがこの部屋なのです。
そんな哲学な哲学を哲学しながら。
まあとりあえず一服してください。
急ぐ必要はございませ~ん。
休憩ルームでストップ・ザ・哲学を堪能したら再出発、次の通路は背後です。
ここも再び直線通路。
要するにここの通路、建物の外周をグルグルと旋回させる構造になっているのです。
このグルグル、ひょっとしてこれも哲学とか言うんじゃないの?とお思いのあなた。
察しがいい!
その通り、この構造も「哲学」なのです。
真理に向かって時には真っすぐ、時には回り道してぐるぐる、決して一直線ではないルートを迷い迷い迷いまくって進む、それが哲学という道。
そんな哲学ワールドを、この建物は構造と構成で表現しているのです。
うーん、哲学。
面倒臭い(笑)。
二度目の直線通路を抜けると、その先にあるのが第二の展示室「西田幾多郎の世界」。
西田幾多郎のたどった人生を、いくつかのテーマに切り分けて解説しています。
哲学者であり、研究者であり、教育者であり、父親でもあった、西田幾多郎。
そんな彼を取り巻く人間関係。
西田幾多郎という人物を様々な角度から俯瞰し、知ることができます。
はい、次行きましょう。
あんまこういうの苦手なんですわ。
それより建物見てる方が面白いし。(←何しに来た?)
この部屋を出て右に折れると、次はエレベーターを使って地下1階へ。
ここ、ちょっと違和感があるんですよね。
普通建物の順路って、一直線に「下→上」へと上がるか「上→下」へと下るかのどちらか。
でもこの建物は地上1階→地上2階→地下1階の順路になっているのです。
これもひょっとして哲学?ってお思いのあなた、そうです!
哲学です。
この行ったり来たりの繰り返しこそが哲学の体験なのです。
深いですね、哲学。
って言うか。
こんな事しとったら日が暮れるわ!(笑)
エレベーターを降りると第三の展示室「西田幾多郎の書」が現れます。
壁の両際には彼の直筆の文字。
特に書を学んだ事はないそうですが、そこはまあ天性の才でしょうね。
味のあるい~い字が、細く伸びのある線で書かれています。
わたし字が下手なんでね。
字の上手な人、うらやましいですわ。
その部屋を抜けると、いよいよザ・ロード・オブ・哲学のゴールが待っています。
この短い通路のすぐ先ね。
そこで目にするのは・・。
「空の庭」。
”くうのにわ”と読みます。
1辺3メートルほどの正方形の空間。
装飾一切ナシ。
殺風景なコンクリートの壁が高々とそびえ、天井は吹き抜けで、そのまま空へとダイレクトにつながっています。
当然雨の日は雨が降り注ぐし、雪の日は雪が降り積もります。
ここ何のための場所?というと、思索のための場所なんですね。
ここで考えろ、と。
余計なノイズのないこの場所でただひたすら考えろ、と。
空と共に自然と一体となり、無私無念で考えろ、と。
そんな場所なのです。
でもまあ退屈でね、何もなさ過ぎて。
ここに1分いられたら、結構「賢者」ですよ(笑)。
そんな哲学まみれの西田幾多郎記念哲学館。
哲学が好きな人も。
哲学はよく分からんけど、ちょっと触れてみたいという人も。
哲学に興味ないけど冷やかしで~という人も。
ぜひ一度訪れてみてください。
深淵なる哲学ワールドが。
あなたをきっと。
抜け出ることのできない哲学の迷宮へと引きずり込んでくれるでしょう。
わたしは「???」だったけどね。(←!)
次回、あともう1回だけここのお話。
今回は触れなかったセミナーホール部分についてレポートします。
関連タグ >> 美術館・博物館 近代建築 西田幾多郎記念哲学館
コメントをする
コメント
1.自然数の本性
開館20周年記念特別展「漱石と幾多郎―ふたりを慕う人々」を開催中。
ふたりから数の言葉ヒフミヨ(1234)を、動なる『ヒフミヨ矩形』『ヒフミヨ渦巻』 静なる『自然比矩形』に想う・・・
この物語の風景は、3冊の絵本で・・・
絵本「哲学してみる」
絵本「わのくにのひふみよ」
絵本「もろはのつるぎ」
数哲句(「肉中の哲学」) 2023-02-11 20:36:11
>> このコメントに返信
2.Re:自然数の本性
> 数哲句(「肉中の哲学」)さん
また行ってみっかな?
あそこの図書館の仏教書でいくつか借りたいのあるのよね。
でも今ちょっと忙しくて、ゆっくり読んでるヒマないしな~(悩)。
たみこ 2023-02-13 00:08:30
>> このコメントに返信
内日角の最新記事一覧

西田幾多郎記念哲学館(セミナーホール編) 高台からの眺めが気持ちいい~♪
2020年03月11日
西田幾多郎記念哲学館。この建物は有料で入れる「ミュージアム」部分と、無料で入れる「セミナーホール」部分のふたつで構成され・・・
カテゴリー:観光名所

西田幾多郎記念哲学館(ミュージアム編) 空の神髄を体感せよ
2020年03月07日
石川県かほく市にある西田幾多郎記念哲学館。石川県出身で日本を代表する哲学者、西田幾多郎を顕彰する記念館です。ここは建物が・・・
カテゴリー:観光名所

西田幾多郎記念哲学館(アプローチ編) 安藤忠雄設計のビューティフル建築に酔え
2020年03月04日
西田幾多郎(にしだ きたろう)ってご存知ですかね?明治3年、ここ石川県で生まれた哲学者です。全国的にはマイナーですが、地・・・
カテゴリー:観光名所
- 薬王院 温泉寺 「あいうえお」はここから始まりました
- 餃子のあひる 餃子定食 この餃子、エンドレスに食えるわ~♪
- 栄谷丸山横穴群 コウモリに注意してご鑑賞ください
- 富山市郷土博物館 復元模型のテクノな仕掛けがイカスのよ!
- 富山城跡 千歳御門~日本庭園周辺 庭園の読み解き、楽しいわ~♪
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪
- 加賀大観音 怖いです、マジで
- 高岡市万葉歴史館 大伴家持への愛がどっぷり詰まった万葉の空間
- 武家屋敷旧内山家 古き日本のノスタルジーを今に残すシブ~いお家
- 兼六園 鶺鴒島 見ただけじゃ絶対に気付けない隠されたストーリーを読む
- 南新保C遺跡現地説明会 詳しい事後検討の報告を求ム
- さぶろうべい 親とり白菜鍋 素材の味が素朴に生きるそのまんまの味