旧津田玄蕃邸
2020年01月22日
津田玄蕃(つだ げんば)、なんやら難しい読み方ですが、人の名前です。
初代の正勝は(まさかつ)は室町幕府の名門斯波(しば)家の系譜に連なる人物で、かつてはあの織田信長に仕えていたこともありました。
その後滝川一益(たきがわ かずます)、豊臣秀次(とよとみ ひでつぐ)など、転々と主を変え、最後は浪人となって京都で隠居。
そして63歳でここ加賀藩にやって来て、前田利長に召し抱えられたそうです。
「玄蕃」とはその津田家で代々受け継がれてきた当主名のようなもので、本名ではありません。
2代目の孟昭(たけあきら)から9代目の正邦(まさくに)までが名乗りました。
そんな津田玄蕃の屋敷が現在も残されています。
場所は兼六園の敷地内。
有料エリアの外なので、いつでも気軽に立ち寄れます。
見ると分かりますが、迫力ありますよ~。
うわっ!カネ持ってそうだー、みたいな。
それもそのはず、津田家は家禄1万石の超セレブな家柄だったのです。
当時1万石以上が大名と呼ばれていたので、ほぼ1国の主クラスの財力を持っていたという事ですね。
そりゃ屋敷もデカいですわ!
かつてはこんなイメージだったそうです。
見ると分かりますが、今よりさらにデカいです。
つまり今残っているのは切り取ったサイズ。
このサイズでですよ!
絵によると本来は今の建物の右側にさらに建物が続き、その前には大きな書院造庭園があったみたいです。
周囲には上級武士だけに許される白漆喰の高い塀が張り巡らされ、正面には大きな長屋門がどーん!
家禄1万石に恥じない、威風堂々、雄大な屋敷構造でした。
そのでっかいお屋敷がなんでサイズダウンしちゃったのかと言うと、移築したから。
明治に入り津田家の手を離れた後、コロコロと主や用途が変わってきた経緯があるのです。
ざっと羅列するとこんな感じ。
・明治3年 金沢医学館
・明治5年 金沢病院
・明治8年 石川県立金沢病院
・明治21年 第四高等中学校医学部
・明治34年 金沢医学専門学校
・明治45年 乃木会館
・大正12年 兼六会館
・昭和39年 兼六園管理事務所
この下から2番目、大正12年の時にそれまで大手町にあったものを現在地に移築。
その際にどうも建物を切り取っちゃったみたいです。
しかもご覧の通り色んな使われ方をしてきたもんだから、その都度アチコチいじってまして。
改修・改装も相当繰り返されてるそうです。
できればオリジナルのまま触らないで欲しかった。
残念!!
そんなリフォームされまくりの旧津田玄蕃邸ですが、エントランスは比較的当時の姿を留めてるそうです。
確かにこの建物、一番の見所は玄関ですわな。
ビジュアルがもー素晴らしいですわ♪
入母屋造りの大屋根が屋敷全体をがばっと覆い、その直下に唐破風屋根がぐっと突き出し。
ゆるやかに描くカーブの造形は美しく滑らか、そして品格にあふれ。
屋根上端に据えられた鬼瓦は大振りで力強く、両脇には湧き立つようにうねるひれの装飾。
軒下中央には雲間に浮かぶ龍の彫刻を配し、梁を挟んでシンプルに仕立てられた彫刻欄間と格子欄間が下に向かってすっと切れ込む。
んーシビレる!
目線を足元に落とすと、枠の大きな敷石。
石は戸室石ですね。
戸室石とは金沢南東の戸室山で採れる安山岩で、丈夫でしかも加工しやすいという特徴があり、金沢城の石垣なんかにも使われています。
色はわざと散らしてあるんですかね、赤・青・緑と色調の不規則な石が、斜め方向にビシッと配置されています。
この石の並べ方は加賀藩独自のものだそうで、非常に格の高い使い方。
この上を歩く時はわざわざ白い緒の藁草履に履き替えたと言われています。
そう言われてみると、なんとなーく緊張感みたいなものがありますかね?
きっと当時、この上に立てるという事は、それだけでひとつのステータスだったんでしょう。
そしてそんなスゴイ場所に今、土足で立っているわたくし。
江戸時代だったら切り殺されてるな(笑)。
藩政時代の超上級武士の生活の面影を今に残す旧津田玄蕃邸。
現在は兼六園管理事務所として使われていて、内部非公開、外観が鑑賞できるのみです。
室内の様子については全く情報がなく詳細不明。
中も見学したいなーと思っているのは多分わたしだけじゃないでしょう。
いつか公開に踏み切って欲しいですね!
すぐそばには兼六園や金沢神社、金城霊澤(きんじょうれいたく)、さらに道路1本挟んで県立美術館や歴史博物館なんかもあります。
観光名所目白押しのこのエリア。
どこから攻めるか、思いっ切り悩みながらご散策ください。
関連タグ >> 古建築 兼六園
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