
町民文化館
2020年01月25日

尾張町の大通り沿いに1軒の重苦し~い建物があります。
町民文化館です。
この建物、元々は銀行で、建てられたのは約110年前の明治40年。
日露戦争の勝利も冷めやらぬ、軍国国家バリバリの頃。
金沢貯蓄銀行として産声を上げました。
すごいですわな、外観が。
黒瓦の大屋根がどどーん!
勾配にゆるやかな反りを持たせることで、視線を横方向に引っ張り、サイズと威厳を強調し。
その屋根頂部の両端にはシャチホコを備え、まるでお城のような堂々とした風格を備える。
誰を威嚇してんのよ?みたいな(笑)。

壁部分にも注目。
まずは腰部分にぐるりと貼り付けられた石材。
これは金沢城の石垣なんかにも使われている戸室石で、まあ言ってみれば高級品。
お城と同じ素材を使う事で、ステータスの高さを印象付けています。
その上には黒漆喰。
白じゃなくて黒。
金沢城は白なんだから、ここもご当地カラーの白使えばいいじゃない、って感じなのですが。
多分銀行だからエラそうに見せたかったんでしょうね、ずしーっと重い黒で固めています。

中に入るとガラリと印象が変わります。
和から洋へ。
まるで全然別の建物に入って来たかのようなサプライズ。
この辺はどうでしょうね?
多分建物の外見では威厳を、内側ではモダンな雰囲気を出したかったんじゃないですかね?
ものすごくチグハグではありますが。

見て下さい、この凝った装飾。
外ではあれだけ黒を強調しておきながら、室内はライトな白。
しかもポイントポイントにシャープなラインを入れて、伸びやかな空間を形成。
これ多分全部左官仕事でしょうね。
コテでえっさえっさとこしらえたんですよ、きっと。
照明もしゃれてますよね。
いくつもの電球が天井からぶらりと吊り下がって、真っ白な光を放って。
明治40年当時、ここを訪れた人々の目には、きっと今まで体験したことのない近未来ワールドとして映った事でしょう。

柱も凝ってますよ。
ズンと重たい深茶色の角柱。
そこに縦方向の溝を入れたり柱頭に装飾を施すことで、洋風スタイルを徹底演出。
洋風だと本当は角じゃなくて丸柱になるんですけどね(笑)。
さらによーく見ると太さにも変化を加えてあります。
中ほどが太く、根本と上部をやや細くした、いわゆるエンタシス。
ギリシア神殿の建築なんかにも使われているヤツです。

そして室内で最も印象的なのがこのアーチ。
大きな半円がぐるっと壁を切り抜いています。
ここも本来なら半円ではなく逆U字にするのが正しい洋風スタイルなのですが、まあその辺はお遊びなので。
って言うかこの建物、作ったのは日本の大工さんなのです。
西洋建築の専門家がデザイン・設計したとか、そんなんじゃありません。
なので西洋のエッセンスを取り入れつつも、日本的な要素やちょっと間違った使い方が所々に見られるのです。
だけど。
カッコイイからいいですわ♪

地下室もあります。
地下は金庫室。
入口には厚い鉄の扉が備えられています。

扉の厚みはどうでしょう?30センチくらいありますかね?
普通の人間のパンチではまずブチ破れません。
範馬勇次郎クラスじゃないととても無理です。(←誰?)

中は展示室になっていて、広さは小部屋程度。
昔はここにお金や貴重品が厳重に保管されていたのでしょう。
壁面には銀行時代からのこの建物の歴史が、ズラリとパネルで紹介されています。
写真の風景を見ると今とほぼ同じ。
大きな改築や改装が行われないまま、今までずっと残って来たことが分かります。

明治期のモダン建築を今に残す町民文化館。
素晴らしい建築意匠と共に、どうか当時の息遣いみたいなものも感じてみてください。
うれしいことに入場は無料。
尾張町周辺の観光散策に疲れたのでちょっと休憩、ってのにもいいですよ!
関連タグ >> 古建築
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