石川県立能楽堂別館
2020年02月01日
伝統産業工芸館の敷地内、斜め向かいに別棟の建物があります。
石川県立能楽堂別館です。
あれ?能楽堂って道挟んだ向こうにある施設なんじゃないの?
なんで敷地すっとばしてこんなトコに別館あるの?と不思議に思われるでしょう。
その経緯を説明するとちょっとややこしいのですが、現在の伝統産業工芸館は元々は石川県立美術館として建てられました。
遅れてこの別館が追加され、以降は二棟体制で運用されていたようです。
やがて手狭になったんですかね、ここから徒歩3分ほどの所に移転することに決まり。
じゃあ残った建物どうする?となって、本館は伝統産業工芸館に転用、別館は能楽堂の付属施設となったのです。
同じ敷地内に所有者の異なる二棟の建物が並んでいるのはそのためです。
この能楽堂別館がね、い~いんですよ♪
入口を入るといきなり蹲(つくばい)。
蹲とは手を洗う場所なのですが、茶室の基本設備になります。
って事はこの先に茶室がある訳で、実際あります。
それがこれ。
サイズは8畳なので、茶室としてはやや大きめ。
抜けが良く採光も大きく取られた、開放的な空間になっています。
部屋奥には床の間が据えられていて、右わきには付け書院。
わたしが行った時はただの見学だったので何も置かれてませんでしたが、茶会の時は掛け軸や生け花なんかが飾られるのでしょう。
天井はシンプルな棹縁天井になっていて、よーく見ると段差が設けられています。
この段差には意味があり、低い方にはホストが、高い方にはゲストが座るしきたりになっています。
相手を高座に案内することで敬意を表すのです。
茶室によっては高さだけでなく天井材まで変えているケースもあります。
よくあるのがホスト側が質素な棹縁天井、ゲスト側が高級な網代天井というパターンです。
入口には立派な扁額がどどーん!
ちょっと読みにくいですが、「対青軒」と書かれています。
この茶室の名前です。
「対青」とは江戸時代の画家俵屋宗達(たわらや そうたつ)の雅号で、文字は日本画の安田靭彦(やすだ ゆきひこ)によるもの。
宗達と言えば国宝の「風神雷神図屏風」で有名な人です。
真偽不明ながら、彼の墓は金沢にあると言われており、多分そんな所縁にあやかったのでしょう。
部屋の隣には水屋があり、お茶の準備ができるようになっています。
思いっ切り水道の蛇口なんかが露出してて、和室の情緒に少々欠けますが、まあ基本ココはゲストの立ち入らないバックヤードですので。
必要な機能と設備があればそれでいいのです。
茶室の横には立礼席(りゅうれいせき)。
立礼席とは椅子に座ってゆったりお茶を楽しむための場所です。
気軽にわいわい歓談するには、茶室よりもこちらの方が肩の力が抜けていいでしょうね。
2階に上がるとまた面白いものが見られます。
能舞台です。
先に書いた通り、この建物は元々は県立美術館の別館でした。
1階の茶室はその当時からあったものですが、この能舞台は違います。
所有が県立美術館から能楽堂に移った際に改装・追設されたものです。
そもそも美術館に能舞台いりませんしね。
舞台は奥行と天井高をたっぷりと取り、大きな可動領域を確保。
床は歩きやすいようフラットにならし、形状は位置取りのしやすい四角形。
演者がのびのびと動ける、快適な舞台構造になっています。
正面壁には能舞台のド定番の松の絵。
1枚の壁に大きく描かれた少々太り気味(←笑)の松は、生で見るとなかなかの迫力。
ダイナミックな臨場感で見る者を圧倒します。
この場所で日々、舞台や稽古が行われているんでしょうね。
お茶と能が楽しめる能楽堂別館。
レンタル施設なのでいつでもふらっと立ち寄って見学できるわけではありませんが、時折観能や茶会などが行われているようです。
機会があればぜひ一度訪れてみてください。
関連タグ >> 近代建築
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