西田家庭園 玉泉園
2019年11月16日
金沢の庭園と言えば兼六園。
だけどご存知でしょうか、実はその兼六園のすぐそばに隠れた名園があることを。
それが今回ご紹介する玉泉園です。
場所がね、ちょっと分かりにくいのですよ。
地元の人間でもここに行くという明快な意思がなければまず行かない場所。
え?こっちにナンかあんの?みたいな少路をちょこっと入った先にあります。
ハッキリ言って生活臭むんむんの住宅地の一角。
そんな中に突然ポツンとソレっぽい門が現れるのです。
門前には「玉泉園灑雪亭露地(ぎょくせんえん・さいせつていろじ)」の文字が掘られた石柱。
何気にカッコいいエントランスとなっています。
庭の面積は約2,370平方メートル。
サッカーコートのほぼ半分くらいの広さですかね?
兼六園の117,000平方メートルに比べれば、ごくごく小規模なスケール。
とは言え兼六園が藩主お抱えの大名庭園であったのに対し、玉泉園は元々は個人の庭園。
そりゃまあ格差があるのは当たり前ですわね。
でもそのサイズゆえか、凝縮感がすごくて。
まあ詰まってるんですわ、要素が。
樹木、石、水、苔、そして静寂。
しん~みりと落ち着けるサイレントワールド。
広くて観光客がうじゃうじゃ泳いでいる、どこか気ぜわしい兼六園とは真逆の雰囲気です。
庭は入って順番に「西庭」「本庭」「東庭」そして細い石段を登った先にある「灑雪亭露地(さいせつていろじ)」の4つのエリアに分かれてまして。
まずは西・本・東の3庭を散策。
なかでも本庭が最も充実しており、水芭蕉が群生する池を中心とした池泉回遊式の庭園構成になっています。
そもそもこの庭、北西側にある建物内からの眺めを前提に設計されています。
実際、建物を背にして眺めてみると、そのことがはっきりと実感できます。
目の前に本庭、その中央にはとうとうと水をたたえる池。
左右には緑豊かな樹木がダイナミックに展開し。
目を正面奥に移すと、台地の崖を利用した植生と人工的に作られた2本の滝が上方へと伸びる。
さらにその向こうには借景としての兼六園。
水の「動」、植物の「静」、借景の「遠」が巧みに組み合わされた、まるで1枚の山水画のような風景が広がっているのです。
も~シブイんスわ!
崖の急勾配を石段伝いに登ると、その先は灑雪亭露地に繋がります。
下の庭より一回りコンパクトで、片隅には古びた茶室が1軒建っています。
この茶室は江戸時代に建てられたもので、金沢に残る最古の茶室と言われています。
設計を指導したのは、裏千家始祖である千仙叟宗室(せんのせんそうそうしつ)。
躙口(にじりぐち)と貴人口(きにんぐち)のふたつの入口を備え、内部は畳三枚に小さな床の間だけをしつらえた超狭~~い構造になっています。
茶室が極端に狭いのは、ホストとゲストの親密度を高めるためだそうですが。
それが分かってても狭い!
さてこの玉泉園、シロウト目には気付かないのですが、って言うか専門家でも言われにゃちょっと気付かないと思いますが。
「玉澗流庭園(ぎょっかんりゅうていえん)」って、100回くらい唱えんと覚えられんようなややこしい名前の庭園構成になっています。
「玉澗」ってのは「芬玉澗(ふんぎょくかん)」という、中国南宋時代の画僧です。
彼が残した絵の中に「理想の庭」みたいなものがあって、その構成を模して作られた庭を「玉澗流庭園」と呼ぶのだそうです。
特徴としては
1.築山を2つ設けてある
2.築山の間に滝を組んである
3.滝の上部に石橋(通天橋)を組んである
4.石橋の上部は洞窟式になっている
の4点。
玉泉園はこの4条件をすべて揃えてるのです。
当時としては、恐らく最先端のモダン庭園として造られたのでしょう。
江戸期の日本庭園の風情を今に伝える玉泉園。
ま~い~~い所です。
静かにゆっくり庭園鑑賞したいなら、兼六園よりもむしろこちらの方がオススメ。
人ゴミのわずらわしい喧騒を離れて、スローな時間をお楽しみください。
園内には茶室があって、有料でお茶と和菓子をいただくこともできます。
金沢は京都・松江と並ぶ日本三大和菓子処のひとつ。
目と肌で和を感じながら、舌で美味を楽しむってのもなかなか味があっていいですよ!
関連タグ >> 庭園
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