銭五の館 赤い壁と緑の壁の違いを見抜け
2022年12月20日
金石(かないわ)の港の一角に謎に古い屋敷がります。
その名も『銭五の館』。
「銭五」とは「銭屋五兵衛(ぜにや ごへえ)」の略です。
銭屋五兵衛、石川県内では有名ですが、県外の人は多分知らないでしょう。
ざっくり言えば幕末に海運業でボロ儲けした大富豪です。
しかしながら出る杭は打たれると言うか、最後は干拓の埋め立て事業に失敗し、無実の罪を着せられて投獄・獄死しました。
そんな悲劇の大人物、五兵衛が住んでいた屋敷の一部を移転・公開しているのが銭五の館です。
まずは見取り図。
屋敷は2階建てで、1階は3つの部屋と蔵、2階は4つの部屋と物置きで構成されています。
大富豪の家にしちゃ小さくね?と思われるでしょうが、前述の通りこの建物は本来の屋敷の一部です。
オリジナルはこの何倍もある広大なものでした。
一応その辺、含んでおいてください。
ずらりと並ぶ掛け軸。
すべて五兵衛のスケッチです。
茶器(多分)の詳細を写し取ったものです。
マメやな~。
ただスケッチするだけでなく、なんやら詳細なメモ書きまで付けて。
めっちゃオタク感全開やん!(笑)
そしてこの掛け軸の部屋、面白いものが見られます。
それは天井。
見ての通り、別仕様の天井が並列しています。
左は格式高い折り上げ格天井、右は一般的な棹縁天井。
茶室なんかで2種以上の天井を混在させる例はよく見かけますが、座敷の部屋でやるのは珍しいですね。
かなり異例。
五兵衛の遊び心と風流がさり気なく感じられる景色です。
その隣は床の間をしつらえた座敷。
床の間の仕立ては最もフォーマルな本床となっています。
明らかに接客用ですね。
そもそも壁の色がプライベート向きじゃないし。
恐らく格上、あるいは大事な客人をもてなすために用意された部屋なのでしょう。
この釘隠しなんかカッコエエ~♪
黒地の縁に金のラインを走らせてあるって言うね。
ブラックとゴールドのコントラストがビリビリに映えてますわ。
ただ明らかに付け替えの痕跡が見られるんですよね。
この釘隠し、ひょっとしたら五兵衛時代のものとは違うのが付けられているのかもしれません。
この香炉なんかもイケてるわ~。
すっげー高そう!
キャプションによると舶来品との事ですが、見るからに中国的ですね。
うるさいくらいゴテゴテにデコレーションされている感じがものすごくゴージャス。
こんなんうちの家にも欲しいな~!
2階に上がると壁の色が一変、グリーンになります。
このグリーン、恐らくあるメッセージが隠されています。
その根拠は画像右側にある出入口。
上部がアーチ状になった、和風建築ではあまり見ない形になっています。
これ、お茶室に設けられる貴人口(きにんぐち・上客が出入りする場所)ですね。
という事はこの部屋は茶室。
つまり壁のグリーンはお茶の色を表現しているのです。
こちらはその茶室の床の間。
1階で見た床の間に比べて明らかにラフになっています。
茶室の床の間ってね、基本的に不定形なんですよ。
武家屋敷で見られるようなセオリーをガッチリと踏まえたものはあまり好まれず、多くの場合こんな感じであえて正式な形を崩します。
その崩れた感じが「ワビ・サビ」の精神に通じるんでしょうね。
その隣にも細長い部屋が。
たった4畳の部屋ですが、これも立派な茶室です。
角度的に分かりにくいですが、左側には床の間もちゃんと備えられています。
この床の間はさらにラフですね。
もう本当に「あるだけ」的な床の間。
ただこれよりさらに適当(?)な織部床(おりべどこ)という床の間もありまして、そちらは引っ込みすらなく、ほぼ壁。
以前に野村家の茶室やお茶屋美術館の座敷で紹介してますので、興味があったら読み返してみて下さい。
その斜め前にも小部屋がひとつ。
えらいバックヤードっぽいですが、実際バックヤードで、「水屋(みずや)」と呼ばれる部屋です。
役割はお茶の準備。
レストランのイメージで言えば、茶室がお客さんが食事するフロア、水屋が料理を用意する厨房、みたいな感じですね。
最後に蔵。
現在はご覧の通り展示室となっています。
並んでいるものは銭屋家に伝わる品々や古文書。
なんやら骨董感むんむんのものがズラ~リ。
こんなのもいいんですけどね、それより楽しいのが。
天井の梁!
太っ!メチャメチャ太っ!
さすがお宝を地震や火事から守る土蔵!!
え?喰い付くのソコかって?
いやだって楽しいじゃないですか、古建築。
こんなん見るたびにテンション上がりまくりますわ♪♪(※と感じる人は病気です)
銭屋五兵衛の往時の威光のほ~~~んの一部が見られる銭五の館。
ハッキリ言って地味です。
派手な見所は特にありません。
地味~に江戸時代のノスタルジック感を楽しみたいって人のみお越しください。
ただ古建築好きには間違いなくホットスポットです。
古建築大好き~♪って人はハートうきうきで遊びに来てください。
関連タグ >> 古民家 古建築
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