お茶屋美術館 お茶屋文化の次元の高さに驚け~
2022年11月12日
現在も脈々とお茶屋文化を継承し続けている金沢のひがし茶屋街。
そんなお茶屋文化の一端を見られるのが、今回紹介するお茶屋美術館です。
場所はメインの通りの1本裏側。
志摩の真裏になります。
ちょっと見付けにくいかもしれませんが、頑張って探してください。
こちらでは茶屋建築と共に、茶屋文化を支えた様々な小道具なんかが展示されています。
酒器とか芸妓さんの着ける簪(かんざし)とか。
これがクオリティめちゃめちゃ高くて、しかもサンプル豊富。
思わず、ほお~~~と見とれてしまう見事なコレクションです。
では内部の間取りから。
建物は2階建て(本当は3階(屋根裏部屋?)もあるっぽい)となっており、1階で茶屋文化の小道具を、2階で建築仕様を見学できるといった趣向になっています。
どちらを楽しむかはその人次第。
好きな方に喰い付いてください。
まずいきなり2階から。
こちらは「前2階」と呼ばれる、このお茶屋の最上級ルームです。
弁柄色の壁がビンビンに光ってますね。
いかにも『男と女が酒飲んで遊ぶ場所』。
耳を澄ますとドンチャン騒ぎの喧騒まで聞こえてくるようです。
ちょっと特異なのが床の間。
画像右側の掛け軸が掛かっているスペースがそうなんですが、えらい簡素です。
奥行きナシのぺったり平面。
織部床(おりべどこ)と呼ばれる、超シンプルな床の間です。
これ多分、部屋のスペースを確保したかったんでしょうね。
織部床ってのは奥行がない分、部屋を広く取れますからね。
反面、空間としての重みは失われますが。
こちらは「ひかえの間」。
芸妓さんが芸を披露するステージです。
金屏風が素敵ですわね。
このゴールドをバックに芸妓さんが舞い、そして楽器を奏でるのです。
そこに繰り広げられるのは妖艶な夢の世界。
んーーー1回生で見てみたい!
庶民にゃ縁のない世界だけど・・・。
部屋を移って「ひろま」。
ご覧の通り、こちらはちゃんと奥行のある床の間がしつらえられています。
ただ形式としてはややラフな感じ。
付け書院がないし、床脇には天袋も棚もない。
これ多分わざとでしょうね。
ガチガチにフォーマットされた武家屋敷的空間ではなく、敢えてカジュアルに仕立てた遊興の場としての空間。
そんな意図を含ませてあるのでしょう。
その広間を出て、廊下を少し進むと突然目に飛び込むのがこの「はなれ」と呼ばれる部屋。
思わず息を飲みますよ。
うお!なんじゃこのいきなりのブルーは!?みたいな。
これはもうぜひ生の現場で確認して欲しいのですが、凄まじいのですわ、青の「映え」が。
色というよりもエネルギーがギンギン飛んで来るようなイメージ。
まるで別世界にぶっ飛んだかのような唐突感!
そこからトントンと階段を降りて最初に目にするのがコレ。
トイレです。
陶器でできたトイレ。
ヤバくないこれ?
するの?コレに?
だって水洗でも、ましてやドッポン(←死語)でもないのよ。
こんなのにしちゃったら、モロにそのまんま『ブツ』が残っちゃうのよ。
自分の出した『ブツ』が見事に公開された状態で残っちゃうって、ありえなくね?
すぐ隣には臭い消しの香炉なんかも置かれていますが。
臭いよりも自分の出した『ブツ』が他人にそれとモロに分かる状態で残される事の方が遥かに問題として深刻だと思うんだけど・・(怖)。
その先の中庭にこんな面白いものがあります。
「水琴窟(すいきんくつ)」。
これ何かって言うと、今で言うBGMです。
石に隠れてて見えませんがこの下には甕(かめ)が埋められていて、この中に水滴が落ちる事で独特の音が出るのです。
キンキンとしたちょっと金属的な音。
それが微妙な反響を伴いながら、リズミカルに音を打ち続けるのです。
風情ありますよ。
い~い音ですから、ここではぜひしばらく耳を澄ませてその音色を楽しんでってください。
ここから先はお茶屋文化に関わる工芸品がズラリ。
この展示品、1点1点が至高とも言えるほどにアーティスティックでね。
どれもこれも素晴らしいのですわ。
精緻・繊細・優美・典雅。
文句ナシの芸術作品です。
これは簪のコレクションなんですけどね、どうですかこの細やかさ?
たった1本の簪に込められた職人の技術の高さ、そして情熱。
これ1本作るのに、一体どれだけの手間と時間がかかってるんですかね?
まるで職人さんの熱量がそのまんま形となっているかのようです。
これを髪に刺した芸妓さんの笑顔まで見えてきそう。
この蒔絵なんかも見事ですわな。
手で描いてもここまで精密には描けませんわ。
それを金粉で表現しちゃうんですからね、まさに職人技!
これも手間暇かかってんでしょうね。
木地、漆、蒔絵の細工。
スタートからカウントしたら、完成まで1年くらいはかかるんじゃないの?
ここまで器の水準が高いと、変な料理乗っけられないな。
建築と小道具からお茶屋文化の一端まで見られる、お茶屋美術館。
まー別世界ですわ。
非日常感全開。
こういう世界もあるんだな~って分かってても実感として飲み込めない、そのくらいの異次元世界です。
訪問に際しては殿上人にでもなった気分でお越しください。
茶屋建築はこのすぐ裏にある志摩でも見学できます。
似て非なるふたつの建築。
そんな対比を楽しみながら見学するのもまた面白いですよ!
関連タグ >> 古民家 古建築 ひがし茶屋街
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