店主たみこの観光案内ブログ

栄照山 了願寺 この難解な文書を解読できるか!?

2020年12月30日

栄照山 了願寺

 

犀川に架かる白い鉄橋、天神橋
その天神橋を卯辰山側に渡ったすぐ先に、こじんまりとしたお寺があります。
了願寺(りょうがんじ)です。

 

このお寺、ちょっと変わってるのですわ、立地が。
通常お寺は、神社もそうですが、高台に設けられます。
だって仏さま・神さまって上にいるイメージでしょ?
間違っても足の下って事はない。
なのでお寺や神社を建てる時も、意識的に高い場所が選ばれるのです。

 

了願寺を入口から見たところ

 

でもここは違います。
ご覧の通り(って言っても画像じゃ全然伝わらんけど)、くぼ地にあります。
入口より本堂の方が低い位置にあるのです。

これは常識ではちょっと考えられんのですが、その理由は脇の方に回ると分かります。

な~んか門があったっぽい痕跡があるのです。

 

多分今あるこの入口、車の出入りがしやすいよう、比較的最近開けられたものなのでしょう。

その結果、元々あった入口→境内の高低差関係が崩れちゃったんですね。
お寺も時代に合わせて色々姿を変えていくのです。

 

弁財天像

 

そんな反セオリーな入口を入って、まず最初に目にするのがこちらの弁財天像。
通称弁天さま、七福神の一人ですね。
インド起源の水の神様で、それが転じて現代では芸事や学問の神様として崇められています。

 

ここになんで弁天さまが祀られているのかと言うと、かつてこのお寺にいた妙善上人というお坊さんが関係しています。
妙善上人とは明治(から多分昭和初め・没年不明)に活躍した人物で、晩年は琵琶を弾いて説法を行ったと言われています。
そんな彼に琵琶を持つ弁天さまの姿を重ね、この像が建立されたんですね。

 

弁財天像の由来

 

詳しくは弁天像の脇にある石碑に書かれているので興味のある人は読んで欲しいのですが、これがまたね、読みにくいのですわ。
難解と言うか、そもそも日本語的に明らかにおかしい。
その暗号のような文章の中にこんな一文があります。

 

「真実信心の行者が正覚華化生と成んが為に当山了願寺にて問答されました」

 

何書いてあるか分かります?
「真実信心の行者」=「妙善上人」は分かるとしても、「正覚華化生」、コレなに?
なんか気になるのでちょっと調べたところ、「正覚」ってのは「悟り」で、「華」は「仏座」、「化生」とは「生まれる」こと。
繋げて考えると、「悟りを得て如来へと変化すること」って意味になるんですかね?
それを元に翻訳すると。

 

「妙善上人が悟りを得るために了願寺で修業した」

 

と、こういう意味になると思われます。
じゃあ最初からそう書けっての!(←なぜ怒る?)

 

了願寺本堂

 

こちらはお寺の心臓部となる本堂。

 

ばっさり大きな切妻屋根に、正面には唐破風。
壁の中程にも屋根が1層あって、ぱっと見2階建てにも見えますが、これは裳階(もこし・飾り屋根)ですね。
恐らく建物としてはシンプルな平屋建てでしょう。

 

装飾はそれほど派手に施されておらず、比較的簡素な造り。
向拝柱上の虹梁(こうりょう)と木鼻・蟇股(かえるまた)、それと破風下の懸魚(げぎょ)にチョコチョコっとあるくらいですかね。
実用重視の地味なお堂です。

 

鐘楼

 

その正面には鐘楼(しょうろう)。
石垣の基壇の上に4本の柱を立てた吹き放し鐘楼です。

 

鐘はゴッチゴチの銅製。
分厚い造りが重厚、音も重そ~~~。
下部には吉祥天女が描かれ、突き座の上には「南無阿弥陀仏」の文字。

 

これもまあまあスタンダードな造りですね。
特段変わった特徴はないのですが、その鐘楼の前にこんなのがあります。

 

聖観音像

 

観音さま。
聖観音(しょうかんのん)ですかね?
高さ30cm程の小さなお像。

 

惹かれますわ~こういうの♪
仏像大好きなので、こういう唐突にチョコッと現れる仏像にめちゃめちゃ喰いついちゃうのですわ。

 

ポーズがいいですな。
ゆったりした衣をまとい、胸元に瓔珞(ようらく)を下げ、頭には宝冠をかぶって。
両手を合掌印に結んで、背後に神々しい円光を輝かせる。

 

見てるだけでご利益ありそうですわ♪

 

観音立像

 

もうひとつ、ちょっと向こうの方にも像があります。
天女ですかね?

 

左手に持っている、なんやら長細いもの、これ何だか分かりますか?
これは未開敷蓮華(みかいふれんげ)と呼ばれるもので、花の咲く前のつぼみの状態の蓮華です。
花が咲く事は悟りを開くことに通じ、それがまだつぼみという事は悟りに至る前という事を表しています。
つまり我々の事ですね。
要するにこの天女像は、悟りに至れない未熟な我々を優しく導きサポートしてくれる存在、と言う訳です。

 

い~い仏さまじゃないですか。
わたしも早く悟りの境地に至れるよう、頑張りますッッッ!!(←一生無理)

 

了願寺本堂と弁天像

 

強烈な見所には欠けるかもしれませんが、それでも細かく見て行くと色々な発見があって面白い了願寺。
特に中央にある弁天像はなかなかインパクトがありますので、ぜひじ~っくりと見てってください。

 

ここから3分ほど歩けば、金沢観光のド定番ひがし茶屋街にたどり着きます。
古い町家建築がずらりと続く街並みは、ノスタルジックムードむんむん!
こちらもぜひ楽しんでいってください。

 

 

栄照山 了願寺

住所:石川県金沢市東山 1-37-1

TEL:076-252-1871

 




エリア >> 石川県 > 金沢市 > 東山

 

関連タグ >> お寺 卯辰山寺院群 

 


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