兼六園 瓢池 日本庭園はなぜ池に島を浮かべたがるのか?
2021年11月01日
兼六園の真弓坂口から入場し、最初に目にする大きな池が瓢池(ひさごいけ)です。
池の中央部付近がくぼんだ形をしている事から、この名前(瓢=ひょうたん)が付きました。
実はここ、兼六園のスタート地点となります。
現在約12ヘクタール(東京ドームの2倍強)ある兼六園ですが、元からこのサイズだった訳ではなく、まずはこの瓢池周辺の作庭から始まりました。
その後竹沢御殿が隣接されたり、そこからさらに拡張されたりを繰り返し、今ある大きさにまで膨れ上がったのです。
池の面積は約760坪、サッカーコートの大体半分くらい。
静かに照り返す水面を周囲の高木が鬱蒼と覆いつくす、どこか幽玄な雰囲気を放っています。
園内でも屈指の落ち着いた空間。
ここがね、い~いんですわ。
気持ち良く抜ける池の広がり、起伏に富んだ地形、木々の緑、静と動が交錯する水のしつらえ、そのどれもが楽しく、目に肌に心地よく。
不思議な癒しが心を満たしてくれます。
ではまず池全体の様子から確認。
水はこのちょっと向こうにある霞ヶ池(かすみがいけ)から引かれていて、流入口には高低差を利用した滝が設けられています。
池内には2つの島を配置し、大きい方の島へは石橋を渡って上陸可能。
北側には夕顔亭という茶亭を置いて、池の風情を眺めながら茶の湯を楽む事ができるようになっています。
この池で一番の見所がこの翠滝(みどりたき)。
約6.6メートルの高さから一気に水が落ちてきます。
着水地は坪状になっておらず、岩に直接たたきつける恰好になっているので、水しぶきが強烈!
さらにその先は粗い石が段上に並んでいるので、小さな落差が連続し、白い水流が勢いよく池に注ぎ込む、というダイナミックな景観になっています。
生きてますねー、水が。
池の静寂を打ち破るこの一点の水の激しさ、なんとも風情があります。
その滝の左側にも注目。
どうですこの岩、人の手に見えません?
親指を内側に折り込んで、残り4本の指を柔らかく立てた形。
これは「仏掌岩(ぶっしょうせき)」と呼ばれるもの。
この岩の形がお釈迦さまの手を表していて、池に仏の祝福を取り込むという意味があります。
自然石で作った大仏さま(の一部)といった感じですかね。
・・・・うそです。
単に思い付きで書いたネタです。
でもどう見ても人の手に見えるな。
ジャンケン岩って名前どう?(笑)
こちらは日暮らし橋。
池の中島へと架かっている橋です。
表面模様はご覧の通り四半敷き。
斜めに並ぶ正方形の連続が実に幾何学的で、自然石を多用する事の多い日本庭園の中にあって、極めて人工的な空気を放っています。
それゆえか妙な吸引力があって、なんかね、渡りたくなるのですよ、この橋を。
おお~~ココ渡っとかなおれんわ~、みたいな。
ってコトで早速渡りましょ♪
その渡った先の中島に立っているのが、こちらの海石塔。
江戸時代からあるんでね、苔の厚みハンパねー!
そしてこの海石塔、よーく見ると傘の部分と火袋の部分の疲労感が露骨に違います。
傘はボロボロ、火袋はまーそれなりにキレイ。
なぜ?
これ、素材を変えてあるんです。
傘の石は海から持ってきたもので、風化・劣化しまくった虫食い石。
火袋の石は山から採ってきもので、まだフレッシュな石。
つまり傘の部分がボロいのは元からこうなんですね。
制作者のこだわりです。
ところでこの中島、何のためにわざわざ島にしてあると思います?
別になくてもいいと思いません?
これね、日本庭園のオキマリ思想なんですけど、神仙島をイメージしているのです。
神仙島とは不老不死の仙人が住むと考えられた伝説の島です。
方丈(ほうじょう)・瀛洲(えいしゅう)・蓬莢(ほうらい)と3つあり、海石塔のある島が方丈、その先にある小さな島(岩島)が瀛洲、現在夕顔亭が建っている場所(今は陸続きだけど昔は島になっていた)が蓬莢って事らしいです。
こうして神仙島を池に浮かべることで、不老長寿を願ったんだとか。
健康不安のある人。
この島にしっか~りお願いすれば、長生きできるかもしれませんよ!
そして夕顔亭。
江戸時代から現在地に建っている茶室です。
カッコええな~この建物。
分厚く重くかぶさる茅葺屋根の下に、細身の柱が優雅に伸びて。
壁は素朴な土壁。
明かり障子はなく、開口部を守るのは木戸。
この木戸を開け放つと瓢池をダイレクトに眺めることができ、明媚な庭と一体となりながらお茶を楽しむことができる。
ん~風流だ♪
兼六園の始まりの地、瓢池。
ややもすると素通りして終わりがちですが、とんでもない!
見所いっぱいです。
兼六園に来た際には忘れずに立ち寄って、その魅力を思う存分楽しんでいってください。
池のほとりにある三芳庵では食事もできます。
江戸時代から続く名園の池を眺めながらお昼をいただくってのもいいですよ!
関連タグ >> 兼六園 庭園
コメントをする
兼六園の最新記事一覧

兼六園 鶺鴒島 見ただけじゃ絶対に気付けない隠されたストーリーを読む
2024年12月28日
日本庭園には様々なストーリーが込められていることが多く、今回ご紹介する鶺鴒島(せきれいじま)もそのひとつです。場所は兼六・・・
カテゴリー:観光名所

兼六園 瓢池 日本庭園はなぜ池に島を浮かべたがるのか?
2021年11月01日
兼六園の真弓坂口から入場し、最初に目にする大きな池が瓢池(ひさごいけ)です。池の中央部付近がくぼんだ形をしている事から、・・・
カテゴリー:観光名所

兼六園 梅林 名園の梅景色の中に日本庭園の楽しさの秘密を探る
2021年03月13日
さくら名所100選にも選出されている兼六園。でもここ、桜だけじゃなく梅も楽しめるんです。それが園内にある梅林。その名の通・・・
カテゴリー:観光名所

兼六園 栄螺山 お魚くわえたドラ猫を追いかけろ!?
2020年06月24日
兼六園で一番大きな池、霞が池。その脇に小高い丘があります。それが今回紹介する栄螺山(さざえやま)です。栄螺と言えば国民的・・・
カテゴリー:観光名所


- 薬王院 温泉寺 「あいうえお」はここから始まりました
- 餃子のあひる 餃子定食 この餃子、エンドレスに食えるわ~♪
- 栄谷丸山横穴群 コウモリに注意してご鑑賞ください
- 富山市郷土博物館 復元模型のテクノな仕掛けがイカスのよ!
- 富山城跡 千歳御門~日本庭園周辺 庭園の読み解き、楽しいわ~♪
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪
- 加賀大観音 怖いです、マジで
- 高岡市万葉歴史館 大伴家持への愛がどっぷり詰まった万葉の空間
- 武家屋敷旧内山家 古き日本のノスタルジーを今に残すシブ~いお家
- 兼六園 鶺鴒島 見ただけじゃ絶対に気付けない隠されたストーリーを読む
- 南新保C遺跡現地説明会 詳しい事後検討の報告を求ム
- さぶろうべい 親とり白菜鍋 素材の味が素朴に生きるそのまんまの味