伏木北前船資料館 母屋編 回転する仏壇に金持ち趣味を見る
2024年07月13日
かつて北前船の寄港地として栄えた伏木。
その廻船問屋の屋敷として現在まで残されているのが伏木北前船資料館(旧秋元家住宅)です。
エントランスがいきなり立派だわな。
古木の深茶色がシブく沈んで、重厚感満点!
豪商としてブイブイ言わせてた当時の勢いを今も無言で語りかけて来るようです。
屋敷の構成はこんな感じ。
手前に母屋、奥に土蔵。
母屋は明治20年に火事で焼け、その後元通り建て直したものだそうです。
なので恐らく明治中~後期頃のもの。
土蔵は火事を免れているので、江戸時代後期頃のものがそのまま残っています。
入口の様子。
屋敷図面によると左側の部屋が「ミセ」となっているので、かつては売り場となっていたようです。
何を売っていたのかは分かりませんが、やはり北前船絡みでしょう。
東北や北海道から仕入れた昆布やニシン、材木、あるいは工芸品や工業製品。
そういった物品がこの部屋で売買されていたのでしょう。
そのまま奥へと進むと表座敷。
水色の壁に覆われた、やたら明るい部屋です。
なんとなーく雰囲気で分かるかもしれませんが、この部屋がこの屋敷の最上級ルームです。
なので部屋の位置、しつらえ、全てに渡って格式高い造りになっています。
床の間なんかもフォーマルな仕立てになっていて、背筋の伸びるような緊張感を漂わせています。
上に目をやると鶴と松の透かし欄間。
鶴は長寿、松は永続的な繁栄を表し、いかにも金持ち好みのモチーフです。
実際おカネあったんでしょうね。
こんな立派な屋敷にプラス土蔵3棟ですからね。
今で言えば年収ウン億円クラスの人だったのでしょう。
その奥に茶室。
中央に炉を据えた、わずか三畳の狭ーい部屋です。
ここは一転質素。
ワビ・サビ重視の地味地味ルーム。
柱なんかも細~い黒木を使った、素朴なしつらえとなっています。
で、茶室に来たら必ずチェックして欲しいのが天井。
見ての通り2パターンを並存させてあります。
これ、意味があります。
左の網代編み天井の下が客の座る位置、右の棹縁天井の下が主の座る位置。
客に格の高い天井下に座らせることで、相手に対する敬意を表すのです。
床の間が客側にあるのも同様の意味(画像には写ってないけど)。
わずか三畳の狭~い空間ですが、注意して見ると色んなおもてなしエッセンスが発見できます。
そこに隣接する座敷。
先ほどの表座敷よりやや肩の力の抜けた、カジュアルなしつらえとなっています。
ここは構造的に茶室と繋がっているので、恐らくセットで使われていた部屋でしょう。
茶室という狭い部屋で密な時間を過ごした後、こちらに移ってゆっくりくつろぐ。
今で言えばサウナと水風呂みたいな関係ですな。(ちょっと違う?)
そのままぐるりと回り込むと骨董の展示室。
秋元家に代々伝わる品が並べられています。
こんなのがゴロゴロある所がすごいわな。
漆器に焼き物、豪華な着物。
いかにもマネーパワーギンギンの名品ばかり。
やっぱカネのある家は持ってるモノが違いますわ。
最後に仏壇。
漆と金箔で彩られた重厚なヤツがどずーん!
が、見て欲しいのは仏壇本体じゃないんです。
その背後に隠された仕掛け。
この仏壇が置かれているスペース、なんと回転するんです。
するとあら不思議、先に見た表座敷の部屋にクルッと現れるのです。
親戚一同が集まる法事の時には、そうやって使ってたんだそうで。
さすが金持ち。
変なモン作りたがるわ・・。
北前船船主の豪奢な暮らし振りが見られる伏木北前船資料館。
い~い所です。
スタイリッシュな現代住宅にはない重み、深み、威厳。
それらすべてが醸し出す格調高さ。
伝統的な日本住宅ってのはやっぱいいな~と再認識させてくれる、素敵なお屋敷でした。
次回は奥の土蔵を見ていきます。
こちらは主に展示品が目玉。
そして怖い(?)アトラクションも待っています。
関連タグ >> 古民家 古建築 伏木北前船資料館
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