敦賀赤レンガ倉庫 「木造小屋組瓦葺」ってなんじゃ?
2021年01月20日
敦賀港の一角にひときわ目立つ赤レンガ造りの建物があります。
敦賀赤レンガ倉庫です。
建造は明治38年、日露戦争が終結しポーツマス条約を結んだ年。
バリバリの軍国国家だった頃です。
用途は石油備蓄倉庫で、建てたのは紐育スタンダードという石油会社でした。
ちなみに「紐育」の読み方は「ニューヨーク」です。
読めんわ!(笑)
ええですわね~、このマスク。
レンガ建築というレトロ感がな~んともロマンチック。
今は亡き古き時代の臭いみたいなものがむんむん感じられます。
なおこの建物、一見レンガによる積み上げ構造に見えますが、実は木造。
木骨の結合によって建物を支えています。
なので壁材がレンガでなければならない理由は何もなく、漆喰でも土壁でも、それこそ木板でもオーケーでした。
そんな中でレンガが選ばれたのは、ひとえに『オッシャレ~』だったからでしょう。
「レンガ」=「近代モダンの象徴」、当時はそんな時代だったのです。
レンガはイギリス積み。
イギリス積みってのはご覧の通り、レンガの長辺と短辺を1列ごとに組み替える積み方です。
こうするとガッチリ強く組めるんだとか。
なおこのレンガ、オランダ製なんだそうです。
当時既に国内でレンガ製造は行われていたはずですが、まだまだ供給が追い付いていなかったんですかね?
それとも品質的に外国産の方が良かったのか?
その辺はちょっと謎です。
壁の中央にはガッチリ重い鉄の扉。
石油備蓄倉庫として使われていた頃は、ここから物資の出し入れをしていたのでしょう。
ここでちょっと見て欲しいのが、開口部の上にあるアーチ。
これは「隠しアーチ」と呼ばれるもので、開口部上部にかかる負荷を左右に逃がすための仕組みです。
これがないと上からの負荷が開口部上辺にモロにかかる形になり、下手すれば変形、最悪崩落してしまう恐れがあるのです。
それをこのアーチで分散するんですね。
と、いうのが本来の用途なのですが。
これはどうもただの飾りっぽいですね。
恐らく表面にタイルを貼ってあるだけでしょう。
上を見上げると、妻部分のど真ん中に窓。
これもやっぱり鉄の扉。
が、それよりも注目して欲しいのが位置。
ど真ん中にありますよね?
通常この位置には通し柱(棟持柱・むなもちばしら)が立っています。
なので本来ここに窓は付けられないんですね。
逆に言うと、この場所に窓があるって事は、棟持柱がないって事になります。
参考までに棟持柱建物の例がこちら、金沢城の鶴丸倉庫。
同じような位置に窓がありますが、こちらは位置が中央より右にズレてますよね?
これは棟持柱を避けてあるためです。
ちなみにこの棟持ち柱を用いない建て方を小屋組(こやぐみ)と呼びます。
敦賀赤レンガ倉庫の公式サイトを見ると『構造:煉瓦造(イギリス積)、木造小屋組瓦葺』なんてさらっと記載してありますが、その「小屋組」とはこの事を言っています。
まあ普通は気にも留めんだろうけど。
では次に中を見て行きましょう。
建物は2棟あって、手前がレストラン及び物販スペースとなっています。
ここもやっぱりレトロなムードになっていて、忘れられた昭和的な空気でいっぱい。
最も利用しやすいのは手前左側にあるお土産物屋さんですかね。
色々な地場色の濃い商品が取り揃えられています。
お菓子・調味料・工芸品などなど。
気に入ったものがあれば、旅の思い出にどうぞ。
その奥の建物がジオラマ館。
こちらは有料となります。
中には昭和初期の敦賀の様子を再現したジオラマがどーん!
でっけーのですよ、これが。
全長約27メートル、奥行き最大7.5メートル、これだけで丸々ワンフロアを使用。
これ一体いくらカネかけて作ったのよ?と言いたくなるくらい、圧倒的なサイズ。
ジオラマ内では電車がカタカタカタ・・・。
しかも昼と夜とを交互に繰り返し、夜になると夜景も見られる。
ぼんや~と浮かぶ街の明かりがなんともい~い味♪
この光景、なんとなくジブリ感があるんでよね。
ジブリの映画って、このくらいの時代設定のもの多くないですか?
じーっと眺めてるとなんだかジブリの世界に入り込んでるみたいで、不思議な気分になって来ます。
ジブリファンの人には結構ツボかも?
さらに30分おきにかつての敦賀の様子を紹介した「ジオラマショー」と、敦賀の観光を案内する「まったり敦賀浪漫」の動画が上映されます。
ジオラマの背景になっている青空がそのままスクリーンになって、ちょっとしたミニシアターの様相。
特に観光案内は県外から来た人には大いに参考になるはず。
時間のある方はこれもぜひ見て行ってください。
建物を出ると、裏にこんな展示もあります。
気動車です。
昭和43年に製造されたもので、車両名は「キハ 28 3019」。
なんでもこの車体、とっても希少なものなのだそうで。
正面の窓が側面にまで食い込んでいるのと、下部にスカートを装着しているのが大きな特徴で、このタイプで国内に現存しているものはわずかこの1両のみ。
なのでこれ見たきゃ、ここに来るしかないんですね。
刺さるんでしょうね~、鉄道マニアにはこういうの。
多分これだけ見にここまで来たって人、結構いるんじゃない?
明治~昭和の空気感が味わえる敦賀赤レンガ倉庫。
現場は本当にレトロ感一杯です。
鉄道に興味がなくても、レンガ建築に興味がなくても、この空気だけでお腹いっぱい楽しめます。
昔むか~しの雰囲気を味わいに、ぜひ遊びに来てみてください。
関連タグ >> 美術館・博物館 古建築
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