前田土佐守家資料館
2019年03月02日
ノスタルジックな藩政期の屋敷がつらつらと続く長町武衛家屋敷跡の界隈。
その外れに鉄筋建てのきれいな建物があります。
前田土佐守家資料館です。
前田土佐守(まえだとさのかみ)?
加賀藩なのになんで土佐?
ってか誰??
と、知らない人は色々と???でしょう。
少々ややこしいかもしれませんが、ひとつずつ説明していきます。
まず前田土佐守ですが、ざっくり言えばひとつの「家系」に付けられた総称です。
家祖は前田利政(まえだとしまさ)。
加賀藩初代藩主前田利家とその正室まつとの間に生まれた次男です。
ちょっと話逸れますが、本家筋の前田家の血筋は実は「利家+まつ」の直系ではありません。
二代目の利長(としなが)こそ「利家+まつ」の実子ですが、その利長は男子に恵まれませんでした。
そこで三代目として就任したのが利常(としつね)。
この利常は「利家と側室(寿福院・じゅふくいん)」との間の子で、正室のまつとは何の繋がりもない人物です。
その後前田本家は四代、五代・・と続いていくわけですが、以上のようないきさつにより、まつの血は二代目で絶えてしまっているのです。
そこでまつが目をかけたのが利政。
彼は正真正銘まつの実子なので、まつの立場から見れば「直系」にあたります。
成長した利政は能登20余万石を治める大名にまでなったものの、関ケ原の戦いの不参加が原因で家康を怒らせ、隠居の憂き目に遭います。
あわや利政系も消えてなくなるかという事態となってしまったのですが、そこでまつの機転が光ります。
裏で手を回し、当時まだわずか12歳であった利政の子直之(なおゆき)を利常の元に仕官させ、家を繋いだのです。
仕官当初2,000石だった直之の禄高は、まつの死後その遺知7,500石を譲り受け、さらに加増もあって、最終的には10,050石にまで膨れ上がります。
この膨大な禄高が、江戸期終焉まで続く前田土佐守家の礎となったのです。
ちょっと出てくる名前多すぎて分かりにくいですか?
よく分からなかったらあと2回くらい読み直してください。
興味なかったらスルーしてください(笑)。
で、なんでこの家系を「前田土佐守家」と呼ぶの?って事についても触れておきますと。
それは歴代当主の肩書に由来します。
それぞれをざっと羅列します。
1. 利政:従四位下侍従
2. 直之:ナシ
3. 直作(なおなり):ナシ
4. 直堅(なおかた):従五位下近江守
5. 直躬(なおみ):従五位下土佐守
6. 直方(なおただ):従五位下土佐守
-. 直養(なおやす):ナシ(早世により正式に家督を継いでいない)
7. 直時(なおとき):従五位下土佐守
8. 直良(なおさだ):従五位下近江守
9. 直会(なおより):ナシ
10. 直信(なおのぶ):従五位下土佐守
みたいな感じで、全11人のうち4人が「土佐守」の叙任を受けたんですね。
なのでぐるっとひとくくりにして「前田土佐守家」なんて名前が付いた訳なんです。
って言うか「従五位下土佐守」も意味分からんって人もいるでしょう。
これまた説明難しいんですけど。
「従五位下(じゅごいげ)」とは叙任の階級のひとつで、正一位~少初位下の全30段階ある階級区分の14番目に当たります。
ちょうど真ん中あたりですな。
ここに「~守」ってのをくっつけて貰うのが慣習だそうで、「~」の部分には「土佐」とか「近江」とかの地名(国名)が入ります。
そうすると当然「加賀」なのになんで「土佐」なのよ?とツッコミが入りそうですが、これも慣習だそうで。
事実上名前だけのカラ手形なので、几帳面に居住地と「~守」を一致させる必要はなく、かなり適当に割り振られていたそうです。
要は実体のない単なる看板ですな。
ただひとつ注意してほしいのは、ただの看板とは言え「従五位下~守」の肩書は本来大名クラスの人物に与えられる称号。
つまりこれを貰えるってことは大名レベルの扱いだったという事になります。
そう考えるとすごいですよね!
そんな土佐守を4人も輩出してきた前田土佐守家の遺品を収めたのが前田土佐守家資料館。
収蔵点数は全部で9,000点、文書から武具・美術品など多岐に渡り渡り、通常公開されているのはその内ほんの約80点ほど。
それらが年4回のペースで入れ替わるので、タイミングを上手くズラせば何度でも楽しめます。
大名クラスの重臣がが現代に残した遺品の数々。
どうぞそのビッグ感を思う存分ご体感ください。
すぐ前には金沢市老舗記念館もあります。
こちらは江戸期の商業風景や一般庶民の生活ぶりなどを紹介した施設。
前田土佐守家資料館とはある意味真逆な展示内容となります。
時間があれば両館を訪れ、互いを比較しながら見学してみると面白いですよ!
前田土佐守家資料館
住所:石川県金沢市片町 2-10-17
TEL:076-233-1561
関連タグ >> 美術館・博物館
コメントをする
片町の最新記事一覧

福利 うな重 トロけるわ~♪甘旨いわ~♪この幸せ、一生独り占めしたいわ~♪
2024年09月21日
ヤバイわ。ヤバイですわ。何がヤバイってね。メシがガツガツ食えるーーー!!!どーすんのよ、この腹?これ以上栄養分与えたらダ・・・
カテゴリー:グルメ

グリルオーツカ ハントンライス 老舗洋食店の怒涛のハルマゲドンフード
2020年05月20日
この日は武家屋敷界隈をぶ~らぶら。あっちをテクテク、こっちをテクテク。無駄に歩いて歩いて歩きまくって。も~へとへと。よし・・・
カテゴリー:グルメ

- 薬王院 温泉寺 「あいうえお」はここから始まりました
- 餃子のあひる 餃子定食 この餃子、エンドレスに食えるわ~♪
- 栄谷丸山横穴群 コウモリに注意してご鑑賞ください
- 富山市郷土博物館 復元模型のテクノな仕掛けがイカスのよ!
- 富山城跡 千歳御門~日本庭園周辺 庭園の読み解き、楽しいわ~♪
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪
- 加賀大観音 怖いです、マジで
- 高岡市万葉歴史館 大伴家持への愛がどっぷり詰まった万葉の空間
- 武家屋敷旧内山家 古き日本のノスタルジーを今に残すシブ~いお家
- 兼六園 鶺鴒島 見ただけじゃ絶対に気付けない隠されたストーリーを読む
- 南新保C遺跡現地説明会 詳しい事後検討の報告を求ム
- さぶろうべい 親とり白菜鍋 素材の味が素朴に生きるそのまんまの味