下開発茶臼山古墳群 古墳観察から分かる身分社会の痕跡
2022年02月09日
「古墳の里」を自称する能美市。
実際古墳がゴロゴロありまして、まさに古墳銀座の様相を呈しています。
どんだけ古墳大好きだったのよここの古代人?とツッコミを入れたくなるくらいの数。
ただあまりに数が多すぎて、整備が追い付いていないのが現状です。
なので見学できるのはほんの一握り。
今回はそんな見学できる古墳群のひとつ、下開発茶臼山古墳群をご紹介します。
場所は能美の山の方の住宅地の中。
市の運営する高齢者支援センターの敷地に隣接するような形であります。
ちょ~っと部外者には入り辛い雰囲気。
でも入場オッケーですので、遠慮なくどうぞ。
駐車場も広いし、どこでも好きな場所に車を停められます。
目指す古墳は建物の左側。
古墳の分布状況はこんな感じ。
案内板のある真正面の丘が西支群、ちょっと離れて西尾根支群。
西支群4基、西尾根支群10基、合計14基の古墳が散在しています。
ただこれとは別に今はなくなってしまった東支群ってのがあってそこに8基、その他にも6基の古墳がありました。
だから本来は28基。
他にもひょっとしたら見付からないまま消えてしまった古墳もあったかもしれません。
いきなりですが、メインの9号墳。
なんやらただの土山に見えますが、ちゃんと古墳です。
最大径17.2メートルって事なので、円墳としては中規模サイズ。
ただ画像でなんとな~く雰囲気は分かると思いますが、現場の地形はかなりあいまいです。
え?ドコからドコまでが9号墳?って感じ。
そんな状況にさらに拍車をかけるのがコレ。
窪んで墳丘の形が損なわれています。
これ、発掘の跡です。
古墳を発掘するって事は、イコール破壊に繋がります。
それは学術研究上ある意味仕方ないんですけど、その後の処理として「ほったらかし」と「埋め戻し」の2通りのパターンがあります。
これは典型的なほったらかしの例ですね。
ちょっとひどい扱い。
とは言え、いいモン出てるんですよ、ココ。
こちらは甲冑。
この近くにある能美ふるさとミュージアムって施設に展示されています。
おお~シビれるね~♪
めちゃめちゃ保存状態いいし。
コレ、三角板革綴短甲(さんかくいたかわとじたんこう)と竪矧板革綴衝角付冑(たてはぎいたかわとじしょうかくつきかぶと)というものすご~いレアな甲冑だそうです。
え?漢字難し過ぎて意味分からん?
そりゃアレですよ、アレ。
わしもワカラン。(←?)
こんなのも出てますゼ。
縦櫛(たてぐし)。
櫛なんで当然頭に差すヤツです。
ファッションアイテムですね。
ただ特異なのはその数。
えっれ~いっぱい出てるのですよ。
その数なんと175枚!
ひとつの古墳から出土した数としては、全国でも2番目の多さだそうです。
よっぽど髪の毛多かったんでしょうね!(※それは違う)
他にもこんなものが出てます。
鏡、鉄鏃(てつぞく)、刀子(とうす)、鉄斧(てっぷ)等々。
中でも面白いのが三葉環頭太刀(さんようかんとうたち)の柄頭(つかがしら)。(※左下の鍵みたいなヤツ)
これは7号墳からの出土品なのですが、国産ではなく朝鮮半島からもたらされたものと考えられています。
でもなんでそんな希少品がここにあったのかが不明で、いまだその入手経路が解明されていません。
一体どんな経緯でやってきたんですかね?
話を現場に戻して、こちらは西尾根支群。
なんとな~く分かるでしょうか、丸い盛り上がりがぽこぽこっと連続しているのが?
先に見た分布図の通り、このエリアは10基の古墳がほぼ直線状に並んでいます。
明らかにわざと並べたって感じ。
恐らくですが、ここは臣下レベル用の埋葬場所だったんじゃないですかね?
9号墳のあった西支群がこの地を支配した一族の埋葬地で、臣下の墓はそれを取り巻くように並べられた。
そう考えると全体の位置関係の整合性が取れます。
西尾根支群(左)と西支群(右)の丘を別角度からみるとこんな感じ。
ご覧の通り全然高さが違うのが分かります。
こうして見比べるとやっぱり西支群は上位、西尾根支群は下位クラスの埋葬場所だったと考えるのが妥当でしょう。
上位の人間はこうして死んだ後も下位の人間を見下ろすのです。
ザ・古代ヒエラルキーの痕跡です。
ぱっと見、やや殺風景な下開発茶臼山古墳群。
でも地形や配置をじっくり観察すると、色々な読み取りが楽しめます。
ここを訪れる時は頭をグルグル回転させながら、力いっぱい妄想を膨らませて遊んでください。
時間があれば、すぐ近くの能美ふるさとミュージアムもぜひどうぞ。
現場を見てからそこから出たものを見ると、さらに感慨深いですよ。
関連タグ >> 古墳 遺跡
コメントをする
能美市の最新記事一覧

和田山城 小さなお城に隠された恐怖の仕掛けを暴く
2022年04月20日
古墳で有名な能美市の和田山。でもここ、古墳だけじゃありません。中世の山城跡も残っているんです。それが今回ご紹介する和田山・・・
カテゴリー:観光名所

下開発茶臼山古墳群 古墳観察から分かる身分社会の痕跡
2022年02月09日
「古墳の里」を自称する能美市。実際古墳がゴロゴロありまして、まさに古墳銀座の様相を呈しています。どんだけ古墳大好きだった・・・
カテゴリー:観光名所

荒屋古墳群 古墳力が試される試練の現場
2021年11月03日
能美の住宅地の中にある松が岡古墳公園。その名の通り古墳がある公園です。史跡としての名称は「荒屋古墳群」。この古墳群にはA・・・
カテゴリー:観光名所

寺井山古墳群 能美古墳群の〆はやっぱココさ!
2021年08月28日
5回に渡ってお届けしてきた能美古墳群レポート、最終回は寺井山古墳群です。能美古墳群が和田山・秋常山・西山・末寺山・寺井山・・・
カテゴリー:観光名所

末寺山古墳群 古墳マニアの心くすぐる前方後方墳が3基も見られるレアスポット
2021年08月25日
古墳と言えば、前方後円墳を思い浮かべる人が多いでしょう。確かにあの鍵穴形はまさに古墳の象徴。ある意味アート的な気質さえ感・・・
カテゴリー:観光名所

秋常山古墳群 デケー前方後円墳と中に入れる方墳に心アゲアゲ♪
2021年08月23日
能美古墳群探訪最大のクライマックス、それがここ秋常山古墳群です。なぜならここには能美古墳群の中でも最大、というか石川県内・・・
カテゴリー:観光名所

和田山古墳群 5号墳 古代の王様、スッゲー!!!
2021年08月21日
古代人の活動の痕跡である古墳がズラリと見られる和田山古墳群。その数実に23基。(※現存19基)。現在は公園として整備され・・・
カテゴリー:観光名所

和田山古墳群 バラエティ豊かな埋葬品に古代のエネルギーを見る
2021年08月18日
ザ・古代ロマン、古墳。この心くすぐるモニュメント。ああ・・・ため息が止まらない・・・ふー!ふー!ふー!(←?)そんな古墳・・・
カテゴリー:観光名所

ひろちゃん 焼餃子定食 止まらない味の喜びに掻き込む箸の動きが止まらない!
2021年06月21日
この日はお休み、ふらふら放浪する日。が、放浪にはエネルギーがいる。エネルギーを得るためにはメシを食わねばならない。よし!・・・
カテゴリー:グルメ

能美ふるさとミュージアム 展示編2 古墳愛が止まらない♪
2021年06月02日
古代好きにはわくわくの博物館、能美ふるさとミュージアム。前々回は建物の仕様、前回はD以外の展示室の様子をお伝えしてきまし・・・
カテゴリー:観光名所
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪
- 加賀大観音 怖いです、マジで
- 高岡市万葉歴史館 大伴家持への愛がどっぷり詰まった万葉の空間
- 武家屋敷旧内山家 古き日本のノスタルジーを今に残すシブ~いお家
- 兼六園 鶺鴒島 見ただけじゃ絶対に気付けない隠されたストーリーを読む
- 南新保C遺跡現地説明会 詳しい事後検討の報告を求ム
- さぶろうべい 親とり白菜鍋 素材の味が素朴に生きるそのまんまの味
- 城が平横穴古墳 古代の墓地跡にちょっと戦慄
- 西山 光照寺 空海が彫った伝説の仏像はどこ??
- 穴水城址 アッケラカンとした拍子抜けな城跡
- 魯山人寓居跡 いろは草庵 魯山人も愛したシブ~い屋敷
- エジプト、サッカラ遺跡発掘調査最新報告展 エジプトに眠る古代ロマン、胸躍るわ~!