石川護国神社 参道編 ◆戦没者を祀る鎮魂の空間
2020年07月11日
兼六園のすぐ隣に大きな神社があります。
石川護国神社です。
その名の通り戦没者の英霊を祀る神社で、境内には多くの慰霊のための石碑が建てられています。
まずは神社の歴史から見ていきましょう。
始まりは明治3年、戊辰戦争で亡くなった人たちを祀るために作られた招魂社が起源でした。
やがてこの招魂社には西南戦争、日清戦争、日中戦争といった戦争で亡くなった御霊も合祀されていきました。
そして昭和10年、規模拡大によってそれまでの場所では手狭になってしまったため、より広いスペースを求めて現在地に移転。
昭和14年には社名を「招魂社」から「石川護国神社」へと改称し、今に至ります。
ちなみに社名を変えたのは国の指針です。
「招魂」=「魂を招くのは一時的な行為」+「社」=「恒久的な施設」という事で名称に矛盾を生じているため、全国の「招魂社」を一斉に「護国神社」に改称させたんだとか。
こまけぇーなー(笑)。
参考までにかつて招魂社があった場所は現在こんな感じ。
ほぼ空き地となっています。
距離的には現在地から車で5分ほどの卯辰山の中腹で、あまり交通の便がよくありません。
しかも狭くて暗い。
そこで戦没者遺族に参拝してもらいやすいようにと、今の場所に移転されたのです。
まず入口を飾るのがこの大きな鳥居。
全面銅板葺きの大鳥居。
石鳥居や木製の鳥居はよく見ますが、銅板葺きって珍しいですね。
内部の骨組みは見えませんが、多分鉄筋コンクリートでしょう。
金属素材のせいか、これがめちゃくちゃイカつくてね。
なんか神域への入口というより、戦艦みたいな印象。
結構威圧感あります。
参道左側には石碑がいくつも建っています。
全部戦争にまつわる慰霊の石碑。
それは参道を抜けた本拝殿のある境内左側にまで続き、その数全部で17基。
数は別にどうでもいいんですが、これらすべてを「左側」に寄せてあるっての何か意図を感じません?
これはね、参拝の作法と関係しているのですよ。
神社の参道は左側を歩くのが基本となっています。
なので左側に石碑を寄せておけば、順々にたどって行くと自然と本拝殿までたどり着く、とそんな仕掛けになっているのです。
要は全ての石碑に目を通して欲しいという神社側の願いですね。
拝殿前の二の鳥居をくぐると右手に大きな建物。
こちらは社務所兼遺族会の会館となっています。
中央に入口があり、ちょっと勝手に入っちゃいけないっぽい感じですが、自由に入って大丈夫です。
ぜひ見てもらいたいものがあるので、遠慮なく入場してください。
その見てもらいたいものというのがこちら。
遺品展示室。
こちらには第二次世界大戦で亡くなった人たちの遺品がずらりと展示されています。
手紙を始め、軍服やかばん、日用品など。
どれも生々しく、当時の人たちの息遣いがそのまま残っているかのようです。
気合の入った文字が躍る日の丸なんか、めちゃめちゃ「戦時感」ありますわね。
国威高揚!!!!みたいな。
怖い時代です。
壁にはずらっと戦没者の写真が並べられています。
全部名前入り。
ほとんどが軍服を着た姿なので、恐らく戦地に赴く前に軍が撮った写真なのでしょう。
「帰還できなかった場合」の遺影として。
これがね、みんなおにーちゃんばっかなんですわ。
まだまだ若い、これからの人たち。
この先いっぱい泣いたり、笑ったり、遊んだり、悲喜こもごもの人生が待っていた「はず」の人たち。
でも戦争によって突然、そのドラマが断ち切られてしまったんですね。
そう思うとね、なんか見てられんですわ。
戦争という黒い歴史を今に伝える石川護国神社。
ちょっと直視したくない現実ですが、目を背けてはいけません。
決して繰り返してはならない悲劇に向き合い、二度と同じ過ちを起こさないことが後世の我々の役割です。
参拝の際にはそんな神社からのメッセージをしっかりと受け止め、戦没者の安らかな鎮魂をお祈りしてください。
次回は拝殿を見て行きます。
こちらも面白い仕掛けがいっぱい。
全体の構図、社殿の配置。
その辺をじっくりと検証します。
関連タグ >> 神社 石川護国神社
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コメント
1.あさ
いいですね 石川県 わたしの本名もイシカワです 爆 ネットはいろいろ都合ありますからね 兼六園には 何回か行きましたが若き日ですから 忘れてしまいます
あさ 2020-07-14 11:43:59
>> このコメントに返信
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