
金沢湯涌江戸村 旧園田家・旧野本家◆古建築はやっぱり美しい!
2022年05月07日

江戸時代に建てられた4棟の農家建築が残されている金沢湯涌江戸村。
前回はその内の2棟、旧平家・旧高田家を見てきました。
今回は残りの旧園田家と旧野本家を見ていきます。
まずは旧園田家。
いきなり印象的なのが屋根中央の煙出し。
流線型のフォルムがなんかすげースタイリッシュ。
今見てもビンビンにファッショナブルなデザインです。

中の間取りはこんな感じ。
パッと見で分かる通り、前回見た旧平家・旧高田家とはえらい違いです。
部屋数が多く広い。
詳しい事は分かりませんが、これは多分単純に経済力の差なんでしょうね。
きっとおカネあったんですよ、この家は。
なんでも加賀藩に御料紙(ごりょうし)を納めていた家だったそうで。
要は藩御用達の紙漉き屋さんですね。
きっといい商売だったのでしょう。

その紙漉きの作業をしていた部屋がこちら。
江戸時代感完全無視のパイプ椅子とかステンレス製の流し台なんかがありますが、そこはスルーで。
見て欲しいのは床。
石敷きになっています。
これは紙漉きに水を使うからです。
板だと濡れて腐るし、土間だとドロドロになるし、って事で石敷きにしてあるのです。
でもこれじゃ冬場メチャメチャ冷えそうだな(寒)。

続いて居間。
カッコエーな黒光りツヤツヤの床。
この『使い込んでる感』がたまりませんわ!
こんなん見ると、やっぱ木造っていいな~ってシミジミ思っちゃいます。
土壁もいいですね。
黒い木材とぴったりフィットしてて。
そこにさーっと差し込む明かり障子の柔らかい光も素敵!

廊下も味がありますな。
古びた床がカッコエー♪
踏み心地もいいのですよ、この床。
しと・・しと・・とひと踏みごとに吸い付くような感触。
まるで家が生きているみたい!

こちらは奥の間。
上に何か付いてるスペースがありますが、これ何か分かります?
答えは床の間。
吊り床ってヤツです。
床の間と言えば押し入れみたいに引っ込んでて、掛け軸や生け花なんかが飾られてて、横には違い棚なんかがあってってイメージだと思いますが、こんな簡易タイプもあります。
小さなスペースで取り合えず感じだけ味わえればいいわーってヤツです。
見た感じやや違和感強めなので、ひょっとしたら後付けで取り付けられたのかもしれません。

こちらは仏間。
奥に見えている仏壇は雰囲気を味わってもらうためのパネルです。
本来はここに本物の仏壇がどーん!と据えてあったみたいです。
ただそれよりも見て欲しいものが別にあります。
それはこの部屋の入口の上。

それがコレね。
長押に取り付けられている二つのフック。
これ、花嫁のれんを掛けるためのものですね。
花嫁のれんとは、輿入れの日、花嫁が嫁ぎ先でくぐるのれんです。
これをくぐってその先にある仏壇に手を合わせる事で、今日からその家の人間になりますという事を宣言するのです。
石川と富山の一部に伝わる古い風習です。
(※詳しくは→ 花嫁のれん館)

続いて旧野本家。
こちらも立派な家構えですね。
バシッと末広がりの茅葺屋根がたまらなく素晴らしい!
元々は能登の柳田村にあった屋敷で、1820年(江戸時代末期)頃の建造です。
柳田村と言えば前回見た旧平家と同郷ですが、あちらとはエライ違い。
こちらの方が露骨に広く、しかもスタイリッシュ。
なんでかね?
やっぱ経済格差なんかね?

内部の間取りはご覧の通り。
ニワと呼ばれる土間から入り、右手に次の間→上座敷と続く接客用のパブリックスペース。
それ以外が居間や納戸といった生活空間。
どことなく武家屋敷に似た構成になっていて、農家の造りとしてはやや異質。
この家、一体どういう人が使ってて、どんな使われ方をしていたんですかね。
もう少し詳しく知りたい。

土間がいきなり広いのですわ。
縦横奥行の空間的広がりが格別。
ここからもう毛並みが違いますわね。
はっきりと生活レベルの高さを感じる。
大地主とかそんな人の家だったんだったんですかね?
謎だ~~~。(悩)(悩)(悩)

こちらは居間。
部屋の中央には古き日本家屋の象徴、囲炉裏がどん!
囲炉裏の真上になんか四角い覆いみたいなのがぶら下がってますが、これ何かご存知でしょうか?
これは「火棚」と呼ばれる熱拡散装置です。
囲炉裏から上がった熱をこの火棚にぶつけて横に流し、部屋全体を効率よく温めるのです。
隠された日本人の知恵ですね。

上を見上げると屋根裏がダイレクトにバーン!
見て欲しいのは木材と木材の結合部で、なんと縄で締めて固定してあります。
これでもつのか?って感じですが、もつんですね、不思議な事に。
豪雪地帯として知られている白川郷の合掌集落なんかもこんな感じになっています。
これで雪の重さを支えちゃうんだから驚き。
何気~に頑丈な強度を実現している、ストロング工法です。

板戸。
黒漆仕上げの枠にはめ込まれた、艶やかで木目の美しい板。
てらてらと輝く鈍い色彩がなん~とも言えずクラシック。
板戸、好きなんですよ~♪
襖や障子もいいんですけどね、重厚感を求めるなら何と言っても板戸。
板の深く沈むような色調がもーー刺さるぅ!!

縁側に回るとボロボロの雨戸。
朽ちて隙間だらけ。
ボロいって素敵だー♪
こういう疲労感・使用感を探すのが、古建築探訪の楽しさ。
古い建物ってそれだけで魅力的ですわ!

この柱の使用感もスゴイですわな。
擦り傷だらけ。
何世代にも渡って使い続けられてきた証ですね。
いや~美しい♪

こちらは座敷。
意味不明に米俵が置いてあるだけで、やけに殺風景。
この部屋はこの家のファーストルームなので、本来はこんなモンじゃなかったはず。
床の間にはちゃんと掛け軸が飾られてて、花なんかも生けられてて、文机なんかもあって。
もっとビシッと整えられた堂々たる体裁になっていた事でしょう。

以上、金沢湯涌江戸村の様子を5回に渡って見てきました。
商家の旧松下家・旧山川家。
宿場問屋の旧石倉家。
武家屋敷の旧永井家・旧平尾家。
農家の旧平家・旧高田家・旧園田家・旧野本家。
どの家もそれぞれに味わいがあって楽しさがあって。
そして江戸時代の息遣いがむんむん感じられて。
いくら見ても飽きない臨場感でいっぱい!
作り物ではない「生」の江戸時代の空気、どうぞ思う存分ご堪能ください。
すぐ目の前は湯涌温泉。
江戸建築巡りをした帰りにひとっ風呂ってのも乙ですよ!
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