店主たみこの観光案内ブログ

平泉寺 三宮◆仏像の首を折るメンタルに恐怖

2021年12月13日

平泉寺の境内

 

とにかく苔が美しい平泉寺。
自然と神は一体であるという日本人独特の宗教観みたいなものが空間で表現された、神秘的な場所です。

 

そんな平泉寺の様子を前回前々回と2回に渡ってお届けしてきました。
今回はいよいよ最終回、三宮までのルートを見ていきます。

 

参道鳥居下にある3つの石

 

最初に目にするのがこの素朴な木の鳥居、なんですが、見て欲しいのは鳥居じゃなくてその足元。
大きな石が左右+中央の3ヵ所に置かれています。
明らかに不自然。
特に中央の石、通行の邪魔。
なんでこんなトコにこんな余計なものがあるのか?

 

これ、恐らく白山三山の表現です。
後で見ますが、この奥に白山禅定道への入口があります。
なのでその白山を想起させるものとして、大きな石を3つゴロゴロっと並べてあるのです。

 

三宮へと続く直線参道

 

そこからざっと続く玉砂利と石段の道。
先に見た参道ほど苔々してないですが、ここもな~んか雰囲気が独特。
多分この眺めは中世の頃からほとんど変わってないでしょうね。

 

道の両側には杉並木がズバー!
この杉は明らかに植林ですね。
杉の木はその樹姿の垂直性から天界と地上とをつなぐ通り道と考えられ、ゆえに神社には好んで杉が植えられました。
こんな感じで杉の木が植えられている神社、多分近くにもあるでしょ?

 

納経所跡

 

その途中に異色の場所があります。
納経所跡と呼ばれる場所。

納経所とはその名の通りお経を収める場所です。


仏教の教えに、「法華経を写経して日本全国66か所にある納経所に収めると仏の功徳が得られる」というものがあります。

その66か所のひとつがまさにここでした。

ゆえに多くの人々が全国からわざわざここまでお経を持ってやって来たのです。

 

納経所跡の祠の内部

 

祠の中には石仏と石塔。
なんやら雑然と置かれています。

何がしたいのか意味不明。

 

これは多分シンボル的なものなのでしょう。
中に入っているものがどうとか言うんじゃなくて、ここがあのありがた~い納経所なんだという事を表すシンボル。
取り合えずお経を持ってきてない人も手を合わせてお参りしてください。

 

首の折られた石仏

 

さてこの納経所、よーく見ると妙なものがゴロゴロあります。
それは石仏。
周囲の石に紛れてて目立たないですが、数えてみると結構な数があります。

 

そしてこれらの石仏群、ある特徴があります。
ないんです、首が。
古くなって破損したってんなら何の違和感もないんですけど、なぜかどれも首だけが共通して欠落してるんです。
どー見ても不自然。

 

廃仏毀釈で壊された石仏

 

これ、恐らく廃仏毀釈の痕跡でしょうね。

 

明治期、政府の発した神仏分離政策によって、多くのお寺が経済的・存在的苦境に陥りました。
その過程で廃寺に追い込まれてしまったケースも多く、結果として膨大な仏教資産が失われる事となりました。
仏像も例外ではなく、まるで家庭ゴミのように大量の仏像が廃棄されるという信じられない事がこの頃は普通に行われました。
これらの石仏の破壊もその過程で行われたものでしょう。
首を折り取る事で、仏教との関わりを絶ったんですね。
この神社が「平泉寺」なんてモロにお寺の名前を持ちながら神社を自称するようになったのもこの頃です。

 

それにしても怖えーな、仏像の首を折るなんて。
末代まで呪われそうだわ(震)。

 

楠木正成の供養塔

 

その先を進むと、左手に石塔が現れます。
楠木正成(くすのき まさしげ)の供養塔です。

 

楠木正成とは鎌倉時代末期の武将で、後醍醐天皇(ごだいごてんのう)をサポートして殉死した高潔のヒーローです。
戦上手として知られていますが、最後は神戸の湊川の戦いで破れ、悲劇の自刃を遂げます。
その正成の甥で恵秀律師(えしゅうりっし)という僧がこのお寺(多分この頃はまだ神社じゃなくてお寺だった)にいて、ある日夢枕に正成が現れたんだそうです。
不審に思った恵秀が正成の消息を調べてみたところ、まさにその日が自刃した日だった事が分かり、供養のためにこうして石塔が建てられたのです。

 

平泉寺の三宮

 

そしてゴールの三宮。
こじんまりとした地味な社殿。
祀られているのは栲幡千々姫尊(たくはたちぢひめのみこと)。
名前からなんとなくイメージできる通り織物の神さまで、安産や子宝の御神徳もあるとされています。

 

ただね、冷静に考えると由来がよー分からんのですわ。
なぜこの場所に織物の神さまなのか?
福井と言えば越前織とか羽二重の織物が有名ですけど、だからと言ってここで栲幡千々姫尊が祀られる必然性は特にない。

 

なんでじゃ?

 

白山禅定道の登山口

 

その裏に回ると白山禅定道の登山口。
かつて多くの修験者がここから登ったんですね、霊峰白山を。

いわゆる山岳信仰ってヤツです。

 

山にはそれ自体に霊力があると信じられ、山に登って修行することは山の持つエネルギーをその身に宿すという事でした。
反面常に危険が付きまとい、大げさでなく命を失う事もありました。
それでも登ったのです、大いなる法力を得るために。
ある意味ロマンだったんでしょうね、修験者にとって。

 

平泉寺の苔と積み石

 

はい、以上で平泉寺レポート終了。
長々と3回に渡ってお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか?

 

ここホントにい~い神社です。
雰囲気最高です。
特に一面の苔ワールドは必見!
苔が作り出す神秘性、ハンパじゃありません。
ぜひ生で見て、幽壮幽玄な苔ワールドを体感してみて下さい!

 

 

平泉寺白山神社

住所:福井県勝山市平泉寺町平泉寺 56

TEL:0779-88-1591

ホームページ:平泉寺白山神社公式サイト

 




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