高橋家住宅 江戸時代の武家屋敷の様子を見る
2021年07月28日
高橋家住宅は、松本市に現存する数少ない武家屋敷のひとつです。
元々は松本藩が藩士の住まいとして管理していた官舎で、今で言えば社宅みたいな使い方をされていました。
場所は松本城のほど近く、普通の住宅街の中に突然ぽこんとあります。
案内によると「平成16年に故高橋桂三氏から松本市へ寄附」とあるので、恐らくそれまでは人が生活していた模様。
ただ一般公開するに当たって市が多少建物をいじってますので、寄付当時そのまんまの姿ではないようです。
屋根なんか石置きの板葺きになってますが、これはまず作り替えてますね。
では間取りから見ていきましょう。
通り沿いに面して玄関があり、その先が「取り次ぎの間」。
そこから繋がる形で「次の間」「座敷」と続き、このスペースが接客空間となっています。
その隣のふた部屋、「居間」と「奥の間」は生活空間、つまりプライベートスペースです。
この辺りの間取りは金沢の武家屋敷とも共通していますね。
ちょっと格下になりますが、以前レポートした足軽屋敷もこれと全く同じ構成を取っています。
ご覧になりたい方は下記のリンクからどうぞ。
>> 足軽屋敷 清水家の記事
>> 足軽屋敷 高西家の記事
では邸内の様子を見て行きます。
まずは「次の間」。
ここは訪問してきた客が、主人が現れるまで待機する場所です。
狭い家なんでね、呼べばすぐ現れるので本来そんなもったいぶった部屋は必要ないのですが、まーこの辺は武家屋敷の「オキマリ」ってヤツでして。
必要あってもなくても一応用意されているのです。
で、こちらが客と主人が対面する「座敷」。
ここも書院造の流れをくむ、ガチガチの武家屋敷構成になっています。
部屋奥には床の間。
主人はこの床の間を背にして客と対面することになります。
もうちょっと気取った屋敷だとこの床の間の隣に違い棚があったりするのですが、ここでは押し入れになっています。
いかにも中級武士っぽい簡素な仕立て。
その座敷の側面には縁側を挟んで庭があります。
ここは客に見せるための「表庭」と呼ばれる庭です。
少々窮屈に見えますが、中級武士レベルの庭ならまあこんなモンですかね。
でも江戸時代は屋敷の前の道幅がもっと狭かったはずなので、ひょっとしたらもう少し広く取られていたのかもしれません。
こちらは座敷の隣の「奥の間」。
家の人間が日中過ごしたり、夜寝たりしていた場所ですね。
広さとしては座敷と同じ6畳間。
部屋奥には中床という簡易な床の間もあります。
どう見ても物置きにしか使い道ないけど。
その奥の間の側面には庭。
先に見た庭が客に見せる「表庭」だったのに対し、こちらは家人が生活のために利用した「裏庭」になります。
なので実にドロ臭い使い方がされています。
具体的に言うと畑ですね。
ここで野菜を作っていたんです、食べるために。
あと果樹なんかもあります、やっぱり食べるために。
こうでもしないと食っていけなかったんですね、江戸時代の中級武士ってのは。
このレベルの武士の生活は相当厳しかったと言われています。
最後に台所。
一応それっぽくかまどが置かれてますが、これは復元です。
江戸時代は大体こんな感じだったかな~って感じで再現されています。
かつてはお風呂なんかもここにあったそうで。
つまり火元は全部ここに集中させていたんですね。
ここは土間を通してそのまま裏庭に抜けられる構造になっています。
かまどで火を炊いた時に出る煙なんかは、全部そっちに逃がしていたのでしょう。
以上、バタバタっと見てきた高橋家住宅。
リフォームによって若干生々しい生活感が飛んでしまってますが、それでも江戸期から残る遺構。
足りない部分はイマジネーションを働かせて補ってください。
しつこくなるので触れませんでしたが、柱や梁なんかもい~い味出てますよ。
てらてらと飴色に光って、ぐんにりと伸びて。
土間から見える屋根裏の荒っぽい造りなんかも江戸時代感満点!
訪問時にはそんな細かい所もぜひ見ていってください。
関連タグ >> 古民家 古建築
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