
呉竹文庫
2018年10月30日

手取川河口。
ほぼ海の見える位置。
その河川敷のちょっと入った所に呉竹文庫(くれたけぶんこ)はあります。
呉竹文庫?
何?
と思う方も多いでしょう。
ざっくり言えば、旧私営図書館。(※図書の貸し出しは、現在は行われておりません)
「私営」と書きましたが、実際私営で、ここの図書は全部いち個人が集めたもの。
収集者は熊田源太郎(くまだげんたろう)。
明治19年に生まれた実業家です。
17歳にして実父の急逝により家業を継承。
元々家は回漕業や鉱山業で財を成した家系だったそうです。
その後事業は順調に発展し、倉庫業・運送業・銀行業など、多方面において活躍。
さらに県下有数の大地主でもあった彼は、小作民と協力し合いながら農業分野においても多大な功績を残しました。
その一方で、向学心が人一倍強いという一面も持っており。
学問への意欲は並々ならぬものがあったそうです。
とは言え17歳の若さで家業に身を投じた彼には、学校へ通うような時間的余裕はなく。
その情熱はもっぱら読書に注がれました。
片っぱしから本を買い集めては読書!読書!の読書三昧。
旺盛な知識欲を、膨大な読書量で満たしたのです。
ただ彼、やり過ぎグセがあるんですかね?
買って買って買いまくった結果。
気が付けば本の山がどどーーん!!
あまりの量に流石に持て余してしまい、使い道を友人に相談ところ、図書館にでもしたらどう?と言われ。
よし、それで行こうと、一般公開を開始。
こうして呉竹文庫が生まれました。
蔵書数は実に1万4千冊。
当時の一般的な公営図書館でも7~9千冊程度だったそうなので、この数がいかに尋常ならざるものかお分かりでしょう。
これが全部個人の持ち物なんですからね。
もうほとんど狂気の沙汰ですわ。
って言うか、これだけあると単純計算1日1冊のペースで読み進めても、全部終わるまでには38年以上もの時間が必要。
源太郎は48歳で亡くなってるので、絶対全部読み切れてない。
集め過ぎでしょ(笑)。
すごいのは数だけじゃありません。
内容の充実度もものすごく、その多くは初版本、中には非売品のものも少なからずあり。
レアものだらけ!
さらに百科事典のような全集ものも豊富にあり、厚い革表紙でくるまれた本は重厚感満点。
これ一冊いくらすんの?みたいな豪華な本がシリーズでどどーん!
クラクラする程に圧巻です。
蔵書だけでなく、建物も立派。
土蔵を改装した書庫は、重く力強く。
柱はどっしり頑強。
建材はてらてらと深い飴色に輝き。
壁の白と金具の黒とのコントラストが実に見事。
さらに二階に上がると、今度は洋風装飾の超ゴージャスな書斎が出現。
ゆるやかなカーブを描いた天井の中央には瀟洒なシャンデリアがつり下がり。
調度品はどれも風格たっぷりのレトロモダン。
観音開きの扉にはアーティスティックなコテ絵。
もひたすらため息。
ため息。
ため息。
・・・・・って言うか。
金持ち過ぎーーー!!!(←ひがんでます)
そんな熊田源太郎の貴族ぶりとコレクションが存分に味わえる呉竹文庫。
ちょっと場所分かりにくいですが。
行く価値アリ、です。
美術品とも言える古書の数々、どうぞ思う存分ご堪能ください。
なお本は鑑賞オンリー。
お触り厳禁です。
本棚に隠れてこっそりいぢっちゃえ、なんて考えたらダメですよ!
呉竹文庫
住所:石川県白山市湊町ヨ146
TEL:076-278-6252
関連タグ >> 古建築 古民家
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