店主たみこの観光案内ブログ

松風閣と庭園

2019年11月30日

松風閣庭園 正面から

 

金沢の三大庭園は?と問われれば、まずは兼六園、続いて金沢城内にある玉泉院丸庭園、そして加賀藩士だった脇田家が築いた玉泉園、このビッグスリーにまず異論はないと思いますが。
じゃあ4つ目は?と聞かれると多分意見が分かれるでしょう。
長町武家屋敷跡にある野村家庭園、尾山神社の庭園、成巽閣の双庭園、枯山水がシブイ寺島蔵人邸の庭園、などなど
色々候補が上がって来そうですが、もうひとつ絶対に忘れてはならない庭園があります。
松風閣(しょうふうかく)庭園です。

 

場所は兼六園のすぐ近く、MRO北陸放送の裏手。
正面からは入れないので、裏に回って鈴木大拙館の裏手にある入口から入ります。
ちょっと分かり辛いですが、どうぞ探検家気分で探してみてください。

 

松風閣庭園 裏面から

 

庭は中央に大池がどーん!
たくさんの錦鯉がゆ~らゆら泳いでいます。

 

その周囲には鬱蒼と繁茂する植生。
生い茂る木々の生命感がなんとも躍動的で。
同時に枝葉の作り出す陰影が不思議な心地良さを生み。
日本庭園の精神性みたいなものが思いっ切り楽しめる空間になっています。

 

さてこの松風閣庭園、なんでテレビ局の裏側にあるの?って事ですが。
どうもこの庭の所有がMROみたいなんですよ。
要は私庭なんです。
なので進入禁止シャットアウト!ってのもアリなんですが、そこはMRO様のご好意(多分)で見学自由となっています。

 

松風閣庭園の説明書き

 

この庭の起源は江戸時代。
加賀藩には八家と呼ばれる重臣がいて、その筆頭が本多家でした。
かつてこの付近はその本多家の中屋敷と下屋敷があった場所で、この庭もその一部だったのです。

 

ちなみに本多家の家禄は5万石。
基本、1万石あれば大名と呼ばれますからね。
前田家の「家臣」であったにも関わらず、収入だけなら中大名クラスだった訳です。
そんな人の所有した庭。
そりゃでっかいですわな!

 

松風閣外観

 

そしてこの庭の北側に、ひと棟の平屋があります。
この建物が庭園名の由来ともなっている松風閣です。
元々は藩主である前田家の姫(寿々姫・すずひめ)の輿入れに際して建てられたもので、創建当初はもっと大規模なものだったそうです。
それが4度の移築と縮小を重ね、今ある場所に落ち着いたのです。

 

ただその松風閣、残念ながら非公開となっており、普段は立ち入ることができません。
垣根越しに、あ~なんか江戸時代っぽいのがアソコにあるな~、と眺めるだけ。
ちょっと寂しい。
でも先日、金沢市のイベントで特別公開をやっていて、幸運にも潜入することができました。
内部は撮影禁止とか言われたので残念ながら画像は残っていませんが、なんとか無理矢理(←?)記憶だけを頼りに内部の説明をしてみます。

 

まずこの建物、先に書いた通り最初の状態よりサイズカットされてしまっており、現在残っているのは御対面所、およびその周辺のみとなっています。
図にするとこんな感じです。

 

松風閣内部

 

「御対面所」とは、要は謁見の間。
屋敷の主である寿々姫が、客と対面するための場所ですね。
なんともまーエラそうですな(笑)。

 

上座が寿々姫のための「御対面所」、下座が客がはは~!とかしこまる「二ノ御間」。
間はふすまで仕切られ、その上には透かし欄間が据えられています。
この欄間は武田夕月の作で、成巽閣(せいそんかく)の謁見の間を飾る欄間もこの人の手によるものです。
ただ極彩色で彩られた成巽閣の欄間と違って、ここのものには彩色は施されていません。
成巽閣は前田家の建物ですからね、家臣の立場である本多家がこれと同等のものを作る訳にはいかない、多分そんな配慮があったのでしょう。
今で言う「ソンタク」ってヤツですな。

 

松風閣のふたつのルート

 

御対面所奥の右手は床の間、左手は違い棚、いわゆる書院造の構成。
部屋の右側は縁側になっていて庭に通じ、左側には帳台構え(ちょうだいがまえ)が配されています。
帳台構えとはホスト、つまり寿々姫の入口です。
この向こうが通路(武者隠)になっていて、客に見られないようにこっそりと通り(ふすまで閉じられてて客間からは見えない)、突然横から室内にストーン!と現れるのです。

 

成巽閣の謁見の間

 

ちなみに成巽閣の帳台構えは右側にあります。
本来は右側にあるのが正式な形とされており、そういう意味では松風閣の配置はちょっとイレギュラー。(※床の間と違い棚の位置も逆)
理由は恐らく縁側が右にある都合上、採光の関係で帳台構えを右に置けなかったためと思われます。
行く機会があれば、その辺にも注意して見てみてください。

 

室内の印象は全体に地味で、装飾にも乏しく。
まあその辺も「ソンタク」ってヤツなんでしょうが。
だけど何気に格式と言うか威厳みたいなものはちゃんとあって。
前田家の姫としてのプライドが見え隠れする、そんなしつらえとなっています。

 

松風閣 側面から

 

藩政期の気風を今に残す松風閣。
建物が次に公開されるのはいつになるのか、それは神のみぞ知るですが。
機会があればぜひ一度ご覧ください。

 

もちろん常時公開の庭園も見応え十分!
江戸時代の風情と空気感、どうぞ思いっ切りご堪能ください。

 

 

松風閣庭園

住所:金沢市本多町 3-2-1

TEL:076-220-2469

 




エリア >> 石川県 > 金沢市 > 本多町

 

関連タグ >> 古建築 庭園 

 


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