黒壁山 薬王寺 金沢城の魔を封じ込めた呪いのお寺
2022年06月15日
ザ・呪いのお寺、それが薬王寺(やくおうじ)です。
何が呪いってね、怨念が封じられてんですよ、このお寺の奥に。
時は戦国、真宗王国と呼ばれていた加賀。
その勢力は強大で、一揆によって自治国家を打ち立てたほどでした。
しかし100年続いたその王国も最後は織田信長によって打ち滅ぼされ、信長配下だった前田利家が入ってきます。
問題はここから。
利家はその後金沢城を築くのですが、その場所は元々尾山御坊(おやまごぼう)と呼ばれる真宗教徒の信仰拠点だったのです。
城内には滅ぼされた教徒達の怨念がむらむら~。
「出た」そうです。
そこで利家はその怨念を天狗の面に封じ、金沢のはるか山奥へと移しました。
その場所こそが今回紹介する薬王寺の奥の院なのです。
本堂前にはいきなり心トキメク素敵なモノ。
不動明王像~~♪♪
いやカッコえ~わコレ!
背後にはメラメラと湧き立つ火炎光。
目を天地眼(右目は上、左目は下、つまりこの世の全てをくまなく見る目)でギラつかせ、口は牙上下出(がじょうげしゅつ・右の牙を上、左の牙を下に出す、怒りの表現)の形に結んでグリグリと周囲を威圧。
右手には仏敵を討ち払う宝剣、左手には衆生を残らず救い上げる羂索(けんさく)を握り締め、上体をやや前にかがませて今にも飛び掛からんばかりの臨戦態勢をキープ。
そして極めつけが台座。
通常不動明王の台座は岩座になっている事が多いのですが、なんとこの像の台座は龍。
それもただの龍ではありません。
よーく見ると爪の数が5本、そう、龍の中でも最高ランクである皇帝を象徴する龍なのです!
タマランなコレわ♪♪
そしてどどーん!と登場、本堂。
重いですわな、全体のビジュアルが。
ばっさり被さる大屋根、ずしりと沈む黒瓦、そして深い枯色を放つ木材。
さらに「お寺」という宗教空間が放つ深淵な空気。
思わず背筋がピーンと伸びるような、独特の緊張感です。
本堂内部はゴッチャゴチャ。
正面のデカい燭台が邪魔して、一番見たい奥の方が全然見えんという・・(悲)。
須弥壇には何が祀られているんですかね?
多分何かの仏さまだと思うんですが、んーーー分からん!
燭台どけてくれーー!!!
壁はえれー真っ黒。
これ、多分護摩を焚いた跡でしょうね。
ここで改めて外に置いてあった不動明王を思い出してください。
不動明王と言えば密教、密教儀式と言えば護摩。
多分このお堂の中で護符なんかをバチバチーっと燃やしながら祈祷を行っているのでしょう。
だとすると須弥壇の上に祀られている本尊も不動明王かもしれませんね。
その本堂の左側、庫裡(くり・お坊さんの住む場所)との間に奥へと続く通路があります。
これが先の話に出た奥の院への入口。
勝手に入っていいの?的な雰囲気ですが、大丈夫、自由に通行してオーケーです。
通路はそのまま裏庭へと通じ、スマートな朱塗りの鳥居が現れます。
サイズ的な小ささもあり、ちょっと地味な印象。
これは恐らく結界でしょうね。
例の天狗の面に封じられた怨霊を閉じ込めるためのもの。
つまりこの先は異界に繋がっており、この世にあらざるものの住む世界となります。
どうぞ十分注意して進んでください。
・・っひっひっひ・・(謎)
鳥居のすぐ脇にはお地蔵さん。
横の案内板にはその由来が記されています。
内容を要約すると、このお地蔵さん、崖崩れの中からジャンジャジャーンと現れ、交通事故に遭った子供を救い、以来ここに祀られている、との事。
えっらい荒唐無稽な話ですが、ややリアルっぽさも感じられるので、多分「交通事故に遭った子供を救い」の部分は事実なのでしょう。
そこに後から脚色が盛られ、こんな感じで伝えられているのではないかと。
取り合えずありがた~いお地蔵さんであることは間違いないようなので、しーっかりとお参りしておいてください。
で、その先がこんな感じですわ。
滑りやすい石段の狭路が延々と続くのですよ。
一旦沢まで降りてしまえばあとは平らな道になるんですけどね、でもそこから先が今度はやたら長い。
おおーーードコまで歩かされるんじゃ~コレ?と段々不安になってくるくらいの距離です。
まあ急がずゆっくりと。
トレッキング気分で進んでください。
そしてゴールに現れるのがこの石段。
え?と一瞬引くくらいの急傾斜。
ここまでで結構体力削られてるのに、まるでトドメを刺されるような一撃。
ただね、この石段が意外に楽しくてね。
足元の石をよーく観察してると、お、砂岩、コッチは凝灰岩、コッチは結晶片岩、礫岩もあるナ・・みたいな感じで、石ひとつひとつがわくわくの連続。
もー面白くてしゃーない♪
・・・ソコに喰い付くのわたしだけ??(汗)
その石段を登り切ると、ついに到着、奥の院!
ぽこっと空いた穴の奥にお社が安置されています。
なんでこんな場所をわざわざ選んだんですかね?
もっと楽な所なんていくらでもあるのに、敢えて山肌の急斜面の中腹という面倒臭~い場所。
なぜ??
理由が全然分からん・・・(悩)。
中はこんな感じ。
神秘的と言えば神秘的、不気味と言えば不気味。
とにかく独特です。
最奥には小さな宮殿(くうでん)。
多分中には冒頭で話した「怨霊を封じ込めた天狗の面」が祀られていると思われます。
そしてここでは今でも毎朝、怨霊鎮護のための読経があげられているそうです。
怖ぇーな。
文字通り魔所ですわ、魔所。
この洞穴は明らかに人工的に掘られたものですね。
壁面にはノミの跡がびっしり。
石質は凝灰岩。
凝灰岩とは火山灰が降り積もって固まった岩です。
もろく簡単に成形できるので、石材なんかによく使われます。
多分この山丸々凝灰岩質でできているのでしょう。
ちなみにこの凝灰岩、先に通った沢の河原にもゴロゴロ転がってます。
凝灰岩の特徴はボコボコした表面。
ソレっぽいのを見付けたら他の石にカチーンとぶつけてみて下さい。
ボロッと砕けたら当たり、凝灰岩です。
このように非常に壊れやすいので、奥の院の洞窟も人の手で簡単に掘れたんですね。
ただ逆に言えば崩落の危険性もありますんでね。
穴が妙に浅くてさっぱりしてるのは、多分そのためでしょう。
デビルエネルギーギンギンの薬王寺。
怖いですよ~。
出そうですよ~。
振り向いたら後ろにいそうですよ~。
怨霊なんか怖くねーー!って勇気のある方のみ、お越しください。
なおこの辺りは春はタケノコ掘りで賑わいます。
家族で楽しめるイベントなんかも行われますので、タケノコ大好きー!な人は春を狙って来てみて下さい。
黒壁山 薬王寺
住所:石川県金沢市三小牛町 1-5
TEL:076-242-0653
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