石動山 伊須流岐比古神社ルート編 ナニひとつ建物残ってないけど頑張って想像してねー!
2022年01月22日
山全体が信仰と修験の場だった石動山(せきどうざん)。
栄えたのは江戸時代までで、明治期に入って早々、廃仏毀釈によってあえなく姿を消してしまいました。
現在残るのは当時お寺があった跡地だけ。
なんとも寂しい状況です。
そんな諸行無常観(←?)を楽しむのが今回の旅。
前回のふもと編に続き、今回は伊須流岐比古神社(いするぎひこじんじゃ)の脇から入る登山道のルートを見て行きます。
まずは大師堂跡。
大師とは宗派の開祖の事で、ここの場合は空海を指します。
つまり空海を祀ったお堂ですね。
低い石垣で覆った基壇の上には、12メートル四方の建物の痕跡が今もはっきり残っています。
ぽつぽつ並んでいる石は礎石と呼ばれるもので、柱を建てる際の土台です。
そしてこの石の配列、よーく見ると入れ子状になって四角形が二重になっているのが分かります。
これは内側に四角い建物があり、その外側に廻縁がぐるりと張られていた事を物語っています。
このように建物が失われても礎石さえ残っていれば、当時の姿をある程度は想像する事ができます。
こちらはこの大師堂に祀られていたと言われている木造弘法大師座像。(弘法大師=空海)
すぐふもとの石動山資料館に展示されています。
ボロッボロですな。
着色の痕跡が見られるけど、その塗料が剥げまくっててベラベラ。
なんでも1704年に奉納されたものなのだそうなので、300年以上経っている計算になります。
そりゃ痛みますわな。
そしてちょっと注意して見て欲しいのが、このお堂の前にある広場に置かれている3体の石仏。
どうです?何か変じゃありません?
そう、3体とも首が折られているんですね。
1体なら分かります、ああ、何かの拍子に折れちゃったんだなって。
でも3体全部ってのは不自然。
明らかに何者かが故意に折ったとしか考えられません。
これは多分廃仏毀釈の痕跡でしょうね。
仏像の首を折るなんてちょっと考えられませんけど、当時は文字通り仏さんがぽいぽい捨てられ廃棄されまくった時代でした。
これらの仏像も、そんな狂気の時代の残骸なのかもしれません。
そのすぐ近くにあるのが五重塔跡。
五重塔が建ってただけあって、スペース的にはかなり大きな広場となっています。
あったんですね、昔は。
ここに高い塔がずどーんと。
どんな姿だったんですかね?
きっと勇壮だったんだろうなー!!
角度を変えて見るとこんな感じ。
コンクリで覆われているのが塔があった場所です。
外側の一段低い部分が縁、内側の一段高い部分が建物本体の部分になります。
礎石の並びは先に見たお堂と同じ感じですが、よく見るとド真ん中にもひとつ礎石があります。
って事はこの上にも当然柱が立っていたのですが、この柱だけは「心柱(しんばしら)」と呼ばれる特別な柱でした。
その名の通り、塔の心臓としての柱ですね。
この柱の頂部、あるいは根部に釈迦の骨(多くは水晶を代用するらしい)を収め、それを守るモニュメントとして、こういった三重や五重の塔が建てられたのです。
そこからサクサクっと登ると、次に見えてくるのが多宝塔跡。
多宝塔跡ってのも仏塔のひとつで、三重や五重塔と違い、通常は二層建てとなっています。
面白いのはその形で、1階は正方形・2階は円形という、変則的な形状をしています。
これは「天円地方(てんえんちほう)」という考えに基づくもので、大地は四角形、天は円形を成しているという、古代中国の思想から来ています。
で、それが何でここにあるのかと言うと、これも空海由来なんですね。
実はこの四角+円の建物を最初にデザインしたのは空海なんです。
今も高野山に残る根本大塔が、まさにその建物です。
金沢で言えば、卯辰山寺院群の中にある心蓮社(しんれんしゃ)ってお寺に行けば同様の物が見られます。
どう、1階が四角で2階が円でしょ?
細かな仕様はどうあれ、大体これと同じような形をした建物がこの場所にも建っていました。
当時の姿を描いた絵図を見ても、ほぼこんなようなものがあったようです。
そのすぐ斜め前くらいにもお堂の跡がひとつ。
開山堂跡です。
開山堂ってのは山を開いた人を祀ったお堂です。
この石動山の場合は方道仙人(ほうどうせんにん)・智徳上人(ちとくしょうにん)・泰澄(たいちょう)の3人が候補として挙げられるのですが、この内の誰を指しているのかは不明。
わたし的には泰澄じゃないかな~と思ってんですが、記録が残っていないので確定できません。
ちなみにここにあったお堂、移築されて今でも残っています。
それが以前に紹介した道神社の拝殿。
オンボロチックでスゲーかっこいいですから、機会があればぜひそちらも合わせて見学してみてください。
そのちょっと脇にもお堂跡がもうひとつ。
籠堂跡(こもりどうあと)です。
籠堂ってのは、その名の通り、こもるためのお堂です。
石動山は修験の山だったのですが、その入山前の一定期間、このお堂にこもって心身を清めたんだそうです。
祓いの場と言い換えてもいいかもしれませんね。
これは井戸の跡。
ここに穴を掘って湧き水を汲み上げていました。
過去行われた調査では、この付近から茶碗や急須などの日用品が出てきたそうです。
まだ何か残ってるかな?
興味のある人、掘ってみたらどうですか?
い~いもの出るかもしれませんよ!(※冗談でも掘ってはいけません)
最後に梅の宮跡。
五社権現の一柱で、鎮定大権現(ちんていだいごんげん)を祀った神社です。
五社権現とは、大宮大権現(おおみやだいごんげん)・客人大権現(きゃくじんだいごんげん)・蔵王大権現(ざおうだいごんげん)・降魔大権現(ごうまだいごんげん)、そしてこの鎮定大権現を合わせた五柱の神さまの事を指します。
石動山の守り神とも言える存在で、ふもとの伊須流岐比古神社の祭神として祀られています。
なお大宮・客人・蔵王・降魔の四柱の神についても、それぞれに個別の社殿が設けられています。
それらについては次回。
現場は石垣の高い基壇と建物の痕跡を表す礎石のみ。
なんとな~く威厳あふれる空間だったような雰囲気はありますが、今じゃかなり寒々しい感じ。
ここにあった社殿も、移築されて残っています。
ここからほど近い七尾市三島町にある金刀比羅神社の本殿がそれです。
興味のある人はちょっと足を延ばして行ってみて下さい。
こっちもオンボロチック全開でい~い味ありますよ!
ここで道は二手に分かれ、右に行けば石動山城跡、左に進めば石動山山頂の大御前(おおごぜん)へと繋がります。
どちらを選ぶか??ん~~~悩ましい!!
どっちも行って下さい。(←?)
次回は仁王門跡から石動山最後のクライマックス、大御前へのルートを見て行きます。
大御前は石動山信仰最高の聖地。
心トキメキますゼ~~♪♪
関連タグ >> 遺跡 石動山
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