店主たみこの観光案内ブログ

石動山城跡 道のりはシンプルだけどその工程には恐怖の仕掛けがいっぱい

2021年09月11日

 

中世の信仰の聖地であった石動山。

その奥地に今もひっそりと眠っている山城があります。

石動山城です。

 

こちら典型的な山城でして、アクセスは激悪です。
モロ山の中。
直前までは車で行けるけど、ガードレールもないかなりきわどい山の細道を進まなければなりません。
ガケから転げ落ちないよう、慎重ぉ~~~に運転してください。

 

石動山城跡入口

 

入口は大宮坊跡の脇と伊須流岐比古神社(いするぎひこじんじゃ)の脇の2ヵ所にあります。
どちらから入城してもかまいませんが、今回は大宮坊脇のルートから入ります。

 

もう一度念押ししますが、山城です。
登城はイコール山登りとなります。
マジひでーので、そのあたり覚悟の上でお越しください。

 

石動山城のマップ

 

まずは全体マップ。
既に説明した通り、入口は2ヵ所。
ゴールは山の頂上にある本丸です。

 

実際行ってみると分かるんですけど、結構シンプルなのですわ、構造的に。
え?こんなあっさり本丸まで行けちゃうの?みたいな。

 

でもね、そこは山城。
よく観察すると、何気~に色々な仕掛けが施されています。
その辺り、ひとつひとつ見て行きましょう。

 

窪んだ通路

 

まずはこの窪み。
ひと目で分かる人口の窪み。
上に登りたきゃ、ここを通れって訳です。

 

でもね、潜んでんですね、この窪みの上に守備兵が。
程よく敵が侵入してきたタイミングで一斉に迎撃、それも両サイドから。

 

やられる方、タマランですな。
窪地だから逃げ場なんてなく、それこそやられ放題!
そして上の様子なんて分からないから反撃もできない。
まさに地獄の通路ですわ。

 

本丸と通路

 

その先に進むともう本丸なんですけどね。
ここがまたキツイ!

 

イメージとしては「T」の字ね。
攻め手側が「縦線」で登って来るのに対し、守り側は「横線」で迎撃できるのですよ。
突破無理!無理!

 

通路片側の断崖

 

しかも見ての通り、通路の片側は急斜面になってんですね。
前方の本丸からビュンビュン矢が飛んできて、パニックになってる所にこの斜面。
落ちますわな。
ゴロゴロ落ちますわな。
矢に当たったら重症、ここから転落しても重症。
もうどーもならんですわ!

 

石動山城の空堀

 

力づくで本丸への斜面を登っちゃえばイイじゃん、と思われるかもしれませんが、そうもいきません。
この斜面、切岸(きりぎし)という防御工事が施してあってメッチャ角度が付けられてるので、とても自力では登れません。

 

その上根元には空堀も掘られています。
今はかなり埋まって浅くなってますが、当時は深~い溝になっていたはず。
下手に突っ込むと転落して這い上がれなくなり、そこを弓矢で狙い撃ちにされます。
わざわざ死にに行くようなもんです。

 

本丸直前の枡形

 

恐怖の仕掛けはまだ続きます。
こちらは本丸への入口。
通路が突然カクンと折れ曲がってます。

 

これは枡形(ますがた)という防御構造。
こうして通路を曲げることで敵の勢いを削ぎ、さらに前・横の2方向から攻撃するんですね。
やられる側にしたらキツイですよ~。

 

本丸の入口

 

本丸への入口階段。
ここさえ突破してしまえば落城なんですけど、ここには間違いなく頑強な門があったはず。
最後の防御網です。

 

攻め手側としては本丸からの雨のような攻撃に耐えつつ、この門を破壊しないと前に進めません。
間違いなくヤられまくり。。
後はどれだけ被害を最小限に食い止めるか、もうそれだけです。
勢いに任せて一気に突破するしかないでしょうね。

 

石動山城の本丸

 

艱難辛苦の末、ようやくゴぉ~~~~ル!!
本丸に到着。
ここまで来れば落城です。

 

広さ的にはテニスコート1.5面分くらいですかね。
まあまあの広さです。

 

ここにももちろん、防御のための仕掛けがあります。
ちょっと見てみましょう。

 

本丸の櫓跡

 

一番のキモはこの突端ですな。

 

ここ、間違いなく櫓が建っていたはず。
見晴らしいいですからね、ここに高い足場を組めば周囲の状況は丸見え。
ここから敵兵の進軍状況を確認して指揮すれば、思いっ切り守備側のペースで戦いが進められます。
攻め手側にすれば、こんな鬱陶しいものはないでしょう。

 

本丸の土塁

 

さらにヘリの部分、よく見るとほんの~り盛り上がっているのが確認できます。
土塁ですね。
ここに柵をズバッと巡らせれば、強力なバリケードが完成。
まず突破は不可能です。

 

もうひとつの枡形

 

本丸には2つの入口がある事は既に書いた通りですが、今度はもう片方の入口を見てみます。

 

ここにもやっぱり枡形。
敵は前方・側面の2方向からの攻撃にさらされます。

つまりどちらから攻めても硬い防御網に守られてるって事ですね。
まさに鉄壁の構造。

 

石動山城の堀切

 

さらに先に進むともうひとつ面白いものが見られます。
堀切(ほりきり)です。
画像じゃイマイチ実感できませんが、現場に立つと露骨に窪んでいるのがはっきり確認できます。

 

この窪みは人の手で作られています。
これによって敵の侵入経路を遮断するんですね。
敵にすれば、前に進むにはこの窪みを一旦ヨッコラショと降りて、そしてまたヨイショとはい登らなきゃなりません。
そこを狙ってバンバーンと攻撃。
まさに死の窪みですね。

 

梅の宮跡

 

その先に進むと梅の宮跡というお寺の跡地に出ます。
ここを降りるともうひとつの入口、伊須流岐比古神社の脇に出ます。

 

さて、ここまで見てきて、お城慣れした人ならひとつの違和感を感じると思います。
アレ?曲輪(くるわ)が全然なくね?という疑問。
曲輪とは兵を駐屯させるためのちょっとした広場です。

 

大丈夫、曲輪、ちゃんとありますよ。

 

東林院跡

 

こちらは東林院跡と呼ばれる場所。
他にもこんな平地が山のあちこちにあります。

 

ここは山全体がお寺の集合体になっているんですね。
だから戦時にはこれらのお寺を曲輪としてそのまんま転用できるのです。
なのでわざわざ新規に土木工事して造成しなくても、もうあるのです、山のそこら中に曲輪が。
従って本丸のみ造ればそれで山城完成。
なんとも手間のかからないお城です。

 

石動山城跡の案内標識

 

仕掛けの塊となっている石動山城跡。
今もその痕跡はハッキリと残っています。
訪城の際には、それらひとつひとつをしっかり観察しながら見て行ってください。
思わず恐怖で震えますよ!

 

なお現場はモロに山です。
運が悪いと熊が出ます、マジで。
熊が怖いーって人は、鈴をぶら下げて登城してください。

 

 

石動山城跡

住所:石川県鹿島郡中能登町石動山子 1

 




エリア >> 石川県 > 鹿島郡 > 中能登町 > 石動山

 

関連タグ >> お城 石動山 

 


コメントをする

 

 

 

石動山の最新記事一覧

石動山 仁王門ルート編 ついに到着!大御前!

2022年01月24日

ふもと・伊須流岐比古神社(いするぎひこじんじゃ)横ルートと2回に渡ってお届けしてきた石動山(せきどうざん)レポート。最終・・・

カテゴリー:観光名所

石動山 伊須流岐比古神社ルート編 ナニひとつ建物残ってないけど頑張って想像してねー!

2022年01月22日

山全体が信仰と修験の場だった石動山(せきどうざん)。栄えたのは江戸時代までで、明治期に入って早々、廃仏毀釈によってあえな・・・

カテゴリー:観光名所

石動山 ふもと編 廃仏毀釈なんてやった明治政府のバカ!

2022年01月19日

古代から近世にかけて、人々の信仰の拠点だったお山、それが石動山(せきどうざん)です。ここね、スゴイとこだったんですわ、昔・・・

カテゴリー:観光名所

石動山城跡 道のりはシンプルだけどその工程には恐怖の仕掛けがいっぱい

2021年09月11日

中世の信仰の聖地であった石動山。その奥地に今もひっそりと眠っている山城があります。石動山城です。こちら典型的な山城でして・・・

カテゴリー:観光名所

大宮坊跡 書院台所棟 ん?ココおかしいんでね?

2021年07月12日

石動山(せきどうざん)の山中にひっそりとある大宮坊跡。明治初頭頃に廃寺となったものを、2002年に復元したものです。前々・・・

カテゴリー:観光名所

大宮坊跡 後半部◆証誠殿って一体ナンじゃ??

2021年07月10日

山ひとつが巨大な宗教都市だったと言われる石動山(せきどうざん)。そのほとんどは明治期の廃仏毀釈によって失われてしまいまし・・・

カテゴリー:観光名所

大宮坊跡 前半部◆恐るべきトイレの解析方法にドン引き

2021年07月07日

古代~近世にかけて、信仰の聖地として栄えた石動山(せきどうざん)。全盛期には数多くの坊舎が立ち並び、山ひとつが巨大な宗教・・・

カテゴリー:観光名所

伊須流岐比古神社 今はガッタガタだけど昔はスゲー神社でした

2021年05月22日

伊須流岐比古神社(いするぎひこじんじゃ)。このえっらい名前の読みにくい神社の創建は717年(奈良時代)。平城京が築かれ、・・・

カテゴリー:観光名所

石動山資料館 珠玉の仏像コレクションに惚れ惚れ♪

2021年03月24日

中能登町の山間にある石動山(せきどうざん)。かつてこの地は信仰の聖地でした。記録によると平安時代には既にその名が知れ渡っ・・・

カテゴリー:観光名所


 

新着記事

>> 記事一覧