店主たみこの観光案内ブログ

国立工芸館 建築編 ◆左右の派手さの違いを比べてみる

2020年11月16日

国立工芸館入口

 

ついにオープンした国立工芸館。
本当は東京オリンピック前にオープンって言ってたんだけど、その東京オリンピックがコロナで延期され、それに引きずられるようにここの開館も延び延びになり。
気が付けば早や10月。
さすがにこれ以上は引っ張れんとなったのか、10月25日によーーーやくオープンとなりました。

 

遅せーよ(笑)。

 

国立工芸館外観

 

以前にも紹介した通り、建物は旧第九師団司令部庁舎(きゅうだいきゅうしだんしれいぶちょうしゃ)と旧金沢偕行社(きゅうかなざわかいこうしゃ)という明治期の2つの建物をドッキングした形となっています。
なので左右で全然違うテイスト。
これらの建物の経緯については過去記事を参照してください。

 

>> まだ工事中の国立工芸館の記事

 

今回はふたつの建物の仕様を見て行きます。

 

旧第九師団司令部庁舎外観

 

まずは左側の旧第九師団司令部庁舎。

 

建築形式としてはルネサンス様式。
装飾控えめでさっぱりした外観が特徴です。

 

全体のしつらえは洋館なのに、屋根だけ日本瓦なのがいかにも明治期の建築ですね。
この手の建築を疑洋風建築と呼び、当時日本中で流行りました。

 

縦長の上げ下げ窓とバラストレード

 

窓は縦長の上げ下げ窓。
窓枠の装飾は極めてシンプルで、素っ気ないと言えば素っ気ない。

 

そして建物両端の2階部分のみ、バラストレード(手すり)が備えられています。
ただこれはあくまで飾りで、見た目だけのもの。
本来はもっと前に張り出して、植木鉢程度は置けるようになっているんですけどね。

 

旧第九師団司令部庁舎中央部

 

中央の窓にのみペディメント。
ペディメントとは窓上に取り付けられる装飾です。
日本風に言えば破風。

 

その上にはベザント。
ベザントとは円形を並べたもので、これも西洋式の装飾です。
本来他にも色々装飾があってその中の一部として使われるのですが、ここではご覧の通り他の装飾はまばら。
なのでなーんか浮いた感じ。
ちょっと寂しいですな。

 

屋根上のドーマーウインドウ

 

上を見ると、屋根にはドーマーウインドウもあります。
ドーマーウインドウとは屋根裏部屋用の窓ですね。

 

ただこの下に屋根裏部屋があるのかというと、ないです、多分。
これも飾りですね。
ここにコレがあれば取り合えず洋館っぽく見えるんでねーの?みたいな意味で付けられたのでしょう。
先に見たバラストレードと同じです。

 

中央の入口

 

そして中央入口。
なんか神社の鳥居にも見える、がっしりとした四角形構造となっています。

 

やっぱりここもシンプルですね。
やろうと思えば左右の柱をデコレーションするとか、上部にスタイリッシュなペディメントを備えるとか、色々やりようはあるはずなのですが、ご覧の通りさっぱり。
なん~とも色気のないエントランス。

 

旧金沢偕行社外観

 

続いてお隣の旧金沢偕行社。
こちらは一転華やか。

 

色使いからして違いますわな。
緑・白・茶色のミックス。
壁面の凹凸や装飾も多く、そこから生まれる陰影やあでやかさが実に見事。
心浮き立つような外観になっています。

 

旧金沢偕行社の中央入口

 

入口がいきなり鮮烈。
アーチの開口部がどん!
頂部にはキーストーン(石じゃないけど)なんかもちゃんとあって。

 

その上にはなんちゃってバラストレード。
先に見た旧第九師団司令部庁舎にも同じものがあったけど、こっちの方が明らかに装飾感強め。
めちゃめちゃスタイリッシュです。

 

入口上の窓と装飾

 

その上もこってり飾ってありますね。

 

左右に備えつけられているピラスター(付け柱)は二柱式。
柱頭にはアカンサスとロールリーフの装飾を施し、柱身にはほんのりエンタシス(中央のふくらみ)が付けられてて。

 

窓もイケてます!
左右に縦長の上げ下げ窓を配して、上部には扇形窓。
他の窓が全部四角窓なので、ここだけに使われている曲線がものすごく生きるのですよ。

 

そしてトドメの丸いドーマーウインドウ。
この存在感が強烈!
層状に段を付けた枠組みに、縦横斜めに走るトレーサリー(飾り枠)。
小さな一点に凝縮された装飾が、建物のマスクをぎゅっと引き締めています。

 

脇の窓と装飾

 

左右の窓の装飾も見事ですね。
ペディメントもきっちり付いています。
それも見ての通り、同じ三角形をズルズラ並べるんじゃなくて、交互に変化を付けるという凝ったもの。
なので見た目に独特のリズム感が生まれています。

 

センスありますわ。
いいですわこの建物。
住みたいですわ!(←ダメ)

 

通風孔の蓋の五光星

 

建物を思いっ切り堪能したら、ちょっと基礎部分にも目を向けてください。
何か所か風通口が開けられているのですが、そこにこんな装飾があります。
星マーク。
これなんだかご存知でしょうか?

 

これは旧日本陸軍のトレードマークで五光星と呼ばれるもの。
当時の写真なんかを見てみると、ヘルメットや戦車など色んな場所で使われています。
この建物も軍が所有していたものなので、こうして五光星があしらわれたのでしょう。

 

国立工芸館と前庭のオブジェ

 

以上、国立工芸館の外観の見所をざっと見てきました。
左右で全然性格の違う建物、その違いを拾いながら見て行くと、色んな発見があって面白いですよ。
ある意味、中の工芸の展示よりこっちの建物見てる方が楽しいわって人も結構いるはず。

 

明治期に造られた2つの素晴らしい建築。
どうぞ隅から隅までじ~~っくりとガン見堪能していってください。



次回は館内の様子について見て行きます。
ただ残念ながらね~・・・。

 

詳しくは次回。

 

 

国立工芸館

住所:石川県金沢市出羽町 3-2

TEL:050-5541-8600

ホームページ:国立工芸館公式サイト

 




エリア >> 石川県 > 金沢市 > 出羽町

 

関連タグ >> 美術館・博物館 国立工芸館 古建築 

 


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