小坂神社 「四間社流造」「向拝は三間」の謎を解く
2021年07月17日
創建717年(奈良時代)の小坂神社。
金沢五社のひとつに数えられる、格式高い神社です。
金沢五社とは小坂神社を始め、宇多須(うたす)神社、神明宮、椿原(つばきはら)天満宮、安江八幡宮の事で、これら全てを制覇すると願いが叶うと信じられてきました。
そのくらい知名度が高かったって事なんでしょうね。
場所は卯辰山のふもと、通りをちょっと脇に入った所にあります。
やや地味~なエントランスですので、ぼーっとしてると通り過ぎてしまいます。
見逃さないよう、頑張って探してください。
大きな石鳥居が目印です。
いきなりズバッと続くのがこの石階段。
傾斜はなだらかながら、まあまあ長さがあります。
こんな形の神社って多いですよね。
なんやら謎に階段を登らせる神社。
階段を下りた先にある神社なんて、(たま~にあるけど)ほぼ皆無。
「神は高い場所にいる」ってのが神社思想の大原則なのです。
その階段の中ほどに、ふたつの末社があります。
左がお稲荷さん、右が天神さん。
こちらはそのお稲荷さん。
正面にはトレードマークの赤鳥居がズバッ!
その先にある社(やしろ)は入母屋造りの三間社で、比較的よく見かける造りになっています。
足元には狛犬ならぬ、狛キツネ一対が2セット。
手前はボロボロ、奥はピカピカ。
多分手前の方が初代で、奥のものは新しくしつらえた二代目なのでしょう。
じゃあ手前のは引退させて建物の中に入れてやれよって感じですが(笑)。
こちらは右側の天神さん。
菅原道真を祀った神社ですね。
見た目控え目な白鳥居の奥に、小振りな社がちょこん。
ちょっと画像じゃ分かり辛いですが、社の基壇にはいくつも石の山があります。
これは「積み石」と呼ばれるもので、崩れないように積むと願いが叶うと信じられています。
いわゆる願掛けですね。
今ある石を崩さず、自分の石も落ちないように積むってのがルールです。
興味がある人は挑戦してみてください。
その先を進むとようやく拝殿。
の、前にアレがあるのです、アレ。
わたしの大ぁ~い好きなアレ。
逆立ち狛犬!!
見事ですね~。
口をぐっと結び、目線をやや上方に向け、前脚を岩座に踏ん張って後ろの両足をけーん!と蹴り上げる。
ああ素敵♪♪(うっとり)
逆立ち狛犬は。
金沢神社界のスーパースターです!!!
そして拝殿・・なんだけど。
境内が狭い上に周りの木立が邪魔してアングルが取り辛く、写真の枠に建物が全然入らん・・・(汗)。
外観は頑張って頭の中でイメージしてください!(※無理)
建物自体の創建年は不明、江戸時代なのは間違いないと思うけど。
これがまたものすご~く細部までしっかり作り込まれてましてね。
特に向拝下の彫り物が見とれるほど見事!
まず手前中央に鳳凰の彫刻。
両翼を大きく広げ、とがったくちばしをキッと横に伸ばす。
その奥に龍。
雲間に長い体をうねらせる姿は躍動感にあふれ、あふれるような霊力がむんむんと湧き立っています。
そしてその下に鹿。
え?なんでここで突然鹿?と違和感を感じるかもしれませんが、この小坂神社は奈良の春日大社の末社なのです。
春日大社と言えば鹿。
なのでここで鹿が神使として登場するのです。
拝殿の中はこんな感じ。
天井は格式高い格天井とし、中央に大きな提灯がどべーん!と吊り下げられています。
奥には祭壇。
そしてこの祭壇を照らすように、上から太陽光が降り注いでいます。
多分こうなるように角度を考えて、採光してあるのでしょう。
何気ない演出ですな。
神さまの神々しさを光で表現する。
このワンポイントで、神聖な霊気が室内をさーっと満たしているような不思議な緊張感が湧いてきます。
その拝殿の背後にある本殿。
これまた角度が厳しく、スンマセン、こんな写真しか撮れません。
この本殿は創建年が明示されており、1688年、江戸時代前期の建立です。
外観は見ての通り真っ赤っか。
この赤も春日大社の社殿の色にあやかっています。
そして造りがかなり独特になってまして、神社の説明によると「四間社流造(よんげんしゃながれづくり)」「向拝は三間」となっています。
コレ意味分かりますかね?
まず「流造」とは屋根の形。
本を上からばさっと被せたような切妻屋根になっており、後ろに対して前の方が長くびろーんと張り出している形式のことを言います。
前だけ長く伸ばしてあるのは、参拝者の雨除けのためです。
次に「間」。
通常神社の建物は、本殿にせよ拝殿にせよ、間数が奇数になるように設計されます。
じゃないと入口のど真ん中に柱が来ちゃいますからね。
でもこの建物は珍しい偶数間となっています。
じゃあ入口どこに置くの?って事ですが、四間全てに観音開きの扉が取り付けられているので、全部入口って事になります。
そして建物本体が四間なのに対し、前面にある向拝(ひさし部分)は三間。
これは当然向拝の中央に柱が来るのを避けるためです。
これが「四間社流造」「向拝は三間」の意味です。
コレ、試験に出るのでちゃんと覚えといてくださいね!(←何の試験?)
奈良時代から続く古~い神社、小坂神社。
山裾にある落ち着いた神社です。
訪問の際にはそこに潜む歴史の匂いを感じながら、ひとつひとつじっくりと堪能していってください。
なおこちらは加賀藩三代目藩主の前田利常(まえだ としつね)の正室珠姫(たまひめ)の病気祈願所だったそうです。
ゆえに病気平癒に高い霊験がある事で有名。
なんか体調がイマイチ冴えないんだよな~なんて人は、ぜひ一度お参りしてみてください。
わたしの様に人生が病んでる人はどうにもなりませんが。
関連タグ >> 神社 卯辰山寺院群 逆立ち狛犬
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