彦根城博物館 木造棟◆その階段の先にあるものは?
2021年06月14日
彦根城博物館、前回は展示室1~6までを見てきました。
今回はその奥にある木造棟部分を見て行きます。
この博物館、江戸時代にあった表御殿を昭和62年に復元したものなのですが、鉄筋部分と木造部分のふたつのエリアに分かれています。
鉄筋部分が前回見てきた展示スペースで、木造部分は御殿再現スペースです。
つまり建物そのものが展示品なんですね。
まずは全体の構成から。
展示室5の入口の隣にある渡り廊下の先が木造棟。
鉄の扉をくぐった先がいきなり江戸時代ワールドとなっています。
最初に右手に見えてくるのが、天光室(てんこうしつ)と呼ばれる茶室。
その先に御座之御間(ござのおんま)という、藩主の過ごした部屋があります。
そのすぐ横には中央に池を据えた立派な日本庭園。
来た通路を少し戻って奥へと進むと、御客座敷(おきゃくざしき)という藩主のプライベートスペースに入り、最後に御亭(おちん)という数寄屋造りの部屋を見てゴールです。
こちらが最初に見る天光室です。
四畳半のちっちゃな茶室。
茶室と言えば狭くて暗くて陰気臭いってイメージがあるかもしれませんが、こちらの茶室は採光が大きく取られた開放的な造りとなっています。
庭の眺めをゆっくりと愛でながら茶を楽しめる、という趣向。
ストイックな精神性の追及というよりも、遊び心を核とした華やかな空間です。
その奥にあるのが御座之御間。
藩主のパブリックスペースですね。
こちらは床の間をしつらえた座敷となっていて、藩主が日中過ごしていた部屋と言われています。
一般のお客さんなんかの対応も、恐らくここで行われたのでしょう。
この横にある庭が立派でしてね。
真ん中に大池を配した池泉回遊式の日本庭園。
タイミングが悪くこの日は水が抜かれていましたが、本来はちゃんと張られています。
この庭、そんなに広くないんですけど、なぜか実寸以上の広さを感じます。
その理由は構造。
手前を低く奥を高く傾斜させて奥行を出しているんですね。
さり気ない遠近法の利用です。
そして配石の使い方にも注目してください。
手前の石は寝かせて、奥の石はサイズを大きくして立ててあります。
これは手前を平地、奥を山と見立てているのです。
つまり平地を始点に山を望むという構図を取ることで、狭い庭に大自然の眺めをぎゅっと凝縮させてあるのです。
凝ってますな~!
こちらは「御寝之間(ぎょしんのま)」。
藩主の寝室です。
寝てたんですかねここで?
この少し奥にプライベートスペースがあるので、感覚的には寝起きはソッチでするんじゃないのって気がするのですが?
どこで寝ようが本人の勝手ですけどね。
部屋は特に飾りのないフラットな内装。
本来は調度品とかが置いてあって、もっと生活臭があった事でしょう。
その先が「高御廊下(たかおんろうか)」という渡り廊下になっています。
何が「高」なのかと言うと床面で、見ての通りちょっと高くしてあります。
これは視覚的なバリケードですね。
ここから先はプライベートスペース、だから身内以外は入って来んなよって意思表示です。
なんとな~く”妖しい感”が漂う、不思議な廊下です。
その妖しい(?)廊下を渡った先にあるのが「御客座敷」。
こちらも御座之御間同様、客をもてなすための部屋なのですが、より親しい人用の部屋となります。
なんたってあの妖しい廊下を渡らせてもいいくらいの人ですからね、相当気心の許せる人って事になります。
奥には床の間、床脇には違い棚なんかも備えられ、空間としてはフォーマル。
やや殺風景な感がありますが、本来は襖に松林図なんかのカッチョイイ画が描かれ、床の間には山水画の掛け軸なんかが飾られて、もっともっと迫力のある部屋だった事でしょう。
当時の生の姿が見たいな~♪
そこから眺める庭がこちら。
ありゃ?ってくらい素っ気ない庭。
これについては「資料がなくて再現できないのであえて何も手を入れなかった」か「本当にこんな感じだった」かの、二通りの解釈ができます。
どっちなんでしょうね?
わたしは前者だと思うのですが、真相は不明です。
そのちょっと先にある「御座間(ござのま)」。
ここも床の間をしつらえた座敷になっています。
ただ先に見た部屋ほどのフォーマル感はありません。
恐らく本を読んだり子供と遊んだりといった、プライベートな時間を過ごすための場所だったのでしょう。
で、そこから眺める庭の景色がこちらなのですが、またさっきの庭とは全然趣きが違っています。
こっちの方が接客向きなんでね?みたいな。
これについては「この庭については当時の様子を知る資料があった」とか「遊びで創作してみた」とか「予算余ったし適当に木を植えた」とか色んな解釈ができますが。
ま、どうでもいいわ(笑)。
さらに奥にも注目。
ちょっと遮蔽物が多くて分かりにくいですが、渡り廊下があります。
そしてこの廊下の先は「局(つぼね)」という部屋に繋がっています。
局とは女子の部屋。
つまり男子禁制の聖地!
なんかドキドキしますね!!
え?わたしだけ??(汗)
そして一番奥の御亭です。
ここも藩主がプライベートな時間を過ごした部屋と言われています。
この部屋だけなんかね、空気感が異質なのですよ。
どことなしにワビサビの枯れた感じが漂っていると言うか、お寺的な雰囲気があると言うか。
静かに座って瞑想でもしたくなるような空間。
ここまでずっと平屋建てだったのに、なぜかここだけは二階建てになってます。
その二階へと登る階段がこちら。
残念ながら入口に柵が立ててあって、上には登れないんだけどね。
どーなってんだーこの上?
見てみてー。
上に登りてー。
上の部屋も見てー。
上の部屋から庭を眺めてー。
こっそり登ったらダメかな?(※絶対ダメです)
藩政期の表御殿と奥行の様子が見られる彦根城博物館の木造棟。
再現建築とは言え、ずいぶんカネかけてあるらしく、すごーく精巧に造られています。
歴史好きや古建築好きには必見のスポット。
スミからスミまでじ~っくりご堪能下さい。
なお。
毎日15時にはひこにゃんが現れます。
この部分は無料エリア。
館内までは入らないけど、ひこにゃんだけ見たい~って人はこの時間を狙ってお越しください。
ひこにゃんの悩殺ポーズに!
失神必至です!
関連タグ >> 美術館・博物館 彦根城 彦根城博物館
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