安土城 大手道編 仏罰を恐れぬ信長の鋼鉄ハートに戦慄
2021年01月09日
戦国の世を治めた天下人、織田信長の最後の居城安土城。
前回はそのエントランス部分を見てきました。
今回からいよいよ城内部へと話は進みます。
受付を通りお城に入ると、まず目にするのがこの大階段。
幅約6メートル、直線部分約80メートル、結構な勾配角で上に向かってざっと続きます。
・・・あまりの長さと角度にちょっと引きます(笑)。
ここで少しお城に詳しい人なら、この階段の構造に大きな違和感を覚えるでしょう。
こんな大人数で登りやすい通路作っちゃったら、攻められた時にメチャメチャ不利でねえの?みたいな。
もちろんそれはそうなのですが、前回記事でも書いた通り、このお城は天皇の行幸を前提として設計されたものでした。
そのため天皇の通り道としてそれ相応のサイズと威厳が必要とされたんですね。
なのでご覧のような防衛に不利な、でも華々しい行進を行える空間として、こんな階段が設けられたのです。
階段の途中で、左手に大きな平地が現れます。
こちらは「伝羽柴秀吉邸跡」と呼ばれるエリア。
なんで「伝」なのかと言うと、どうも100%確定って訳じゃないからだそうで。
ここになんらかの屋敷があった事は間違いないのですが、これが秀吉の屋敷だったと決定付ける明確な根拠はまだないそうです。
入口の足元にボコボコと残っている石は、建物の礎石(柱の根元に置かれる土台石)。
かつてこの場所に門が建てられていた跡です。
調査結果から検証すると、恐らく櫓門があったであろうと言われています。
見たかったな~、当時の櫓門。
大階段の序盤にいきなりそびえ立つ櫓門。
さぞかし壮観だったでしょうね!
奥へ進むと上下2段の広場になっていて、下が厩(うまや・馬小屋)、上が秀吉が住まったと言われる屋敷地となっています。
こちらはその下段の広場。
現在は木が数本生えて、建物の礎石がぽつぽつと残されています。
400年くらいほっぽらかされてた場所なんでね、当時の面影は見るべくもないですが。
昔はもっときれいに整備されてて、キリッと締まりのある場所だったんでしょうね。
秀吉の愛馬なんかもここで飼われてたのかな?
上段へは大手道から回ることもできますが、直接つながる通路もあります。
どうせならここを通った方が近道です。
やや足場は悪いですが、せっかくなのでこっちのマイナーな道をぜひ通ってみてください。
ひょっとしたらね、通ったかもしれないんですよ、秀吉もこの細い道を。
よたよたと登ったり降りたり。
馬の様子を見に行ったり。
そのまさに同じ道を今歩いてんだ~なんて思うと、ちょっと不思議な気分になります。
こちらが上段の広場。
秀吉の屋敷があったとされる場所です。
面積的には下より一回り大きく、礎石の数もやたらとたくさんあります。
この場所には屋敷・台所・隅櫓の3棟の建物があったとされています。
さらに屋敷自体の規模がかなり大きく、それゆえにやたらいっぱい礎石が残っているのです。
そんな礎石をひとつひとつ辿りながら、当時の屋敷の様子をぜひ思い描いてみてください。
伝羽柴秀吉邸跡の向かいも屋敷地となっていて、「伝前田利家邸跡」と呼ばれています。
あの加賀百万石の礎を築いた利家が住まったと言われている場所です。
ただここは残念ながらほとんど整備が行われておらず、入口部分をチョロっと見られるだけです。
今は失われて何もありませんが、入口には秀吉邸と同じ立派な櫓門、右手には櫓が建っていたと考えられています。
広場の左手は三段石垣。
万が一敵が邸内に侵入してきた場合、右手の櫓と挟み撃ちにして迎撃できる体制になっています。
キツイですな。
上からの攻撃ってのは圧倒的に有利ですからね。
しかも壁や塀の影からの攻撃。
攻め手は一方的にやられるしかないですわな。
ちょっと奥へ進むと、ご覧の細い階段があります。
そしてその左側には石垣。
これは「蔀(しとみ)の石塁」と呼ばれるもので、目隠しのために設置されています。
この画像の左側が門口になっていて、万が一敵が攻めて来た時、この石塁が階段の存在を隠すんですね。
これにより進撃の勢いがワンテンポ遅れるのです。
地味ですが、なかなかに優れた仕掛けです。
で、この細い階段の先に多門櫓が建っていた石垣があって、その先に屋敷地のあった平地があるのですが、そこまでは進めません。
現在はただの林となっています。
秀吉邸跡はあんだけきちんと整備してあるのに、利家邸跡は一転手の平を返したかのようなこの雑な扱い。
なんでや?
多分予算上、ここまでやり切れんかっただけだろうけど。
いつかきれいに整備して公開してや。
わたしが生きてるうちにー!(←?)
その上にあるのが「伝徳川家康邸跡」。
秀吉・利家・家康、信長配下ビッグ3勢揃いですな。
ただこの場所、現在は摠見寺(そうけんじ)というお寺の敷地になってて入れません。
お寺好きとしては、こちらはこちらでお邪魔したいんですけどね。
でも鐘楼だけは自由に見られて、つくこともできます。
安土城に着くとやたらゴ~~~ンゴ~~~ンと鐘の音が聞こえるんですが、その正体はこの鐘だったんですね。
みんな鳴らさな損みたいにして鳴らしていきます。
わたしも鳴らしましたよ。
バッコーーーンッッッッと思いっ切り!
その鐘楼の前に摠見寺へとつながる通路があるのですが、ご覧の通り立入禁止。
これでもかってくらい遮蔽物を置いてバリケードを築いています。
さらになぜかカエルの置物。
「カエル」→「帰る」→「お帰り下さい」って事みたいです。
ダジャレかよ!?(笑)
改めて大手道に戻って再び登り始めると、このちょっと先辺りから急にグネグネ道に変化します。
階段の段差や踏み幅もマチマチ。
これ、正しい(?)お城の道の在り方なんですね。
登りにくいという事は、攻めて来た敵も前に進みにくいという事になり、そうやってモタモタやってる間に迎撃できるのです。
中にはコケたり側面の崖から落ちたるする人もいるでしょうしね。
そんな使用感最悪の階段、よーく注意して見ると所々に面白いものが見られます。
石仏です。
なんと階段の踏み石に仏さまを使っているのです。
当時の信仰心ってのは結構アバウトだったようで。
時々見ますよね、こういうの。
例えばこんなの。
こちらは姫路城の備前門の石垣に使われている石。
この右側にあるでっかい四角形の石、何か分かります?
これなんと古墳に埋葬されていた石棺です。
石仏とはまたちょっと違うかもしれませんが、でもお墓にあった埋葬品ですよ。
そんなの建材に使うか?って感じ。
バチが当たるというより呪われそう。
でも容赦なく使ってんですよね~。
さすが血で血を洗う戦国期を生きた武士、メンタル強ぇーわー!(笑)
ってコトで今回は以上。
次回はこの先にある黒金門跡を中心に見て行きます。
ここから一気に要塞感を増す安土城。
道はさらに曲がりくねり、障害物も増えて、お城としての密度がぎゅっと増します。
その辺の空気も交えてお伝えできればと思います。
関連タグ >> お城 安土城
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