店主たみこの観光案内ブログ

八日市地方遺跡発掘調査現地説明会 土の形に弥生時代の生活痕を探る

2022年07月23日

八日市地方遺跡の全景

 

小松駅東側に展開する八日市地方遺跡(ようかいちじかたいせき)。
その発掘調査説明会が開催されるというので行ってきました。

 

あいにく前日の夜は雨。
当日も朝方は曇りだったけど、直前になって雨。
車で現場に向かいながらありゃ~!と思ってたけど、幸いにも開始30前くらいには止んで、なんとか実施できそう。
一応傘を持って長靴も履いてパーフェクト装備(?)で、会場入りしました。

 

八日市地方遺跡の全体図

 

まず八日市地方遺跡とはなんぞや?という事ですが。
弥生時代中期頃と推定される、大規模環濠集落の跡です。
その全貌がこの図(一部推定含む)。

 

かつてこの場所を流れていた川筋を中心に円状の溝(環濠・かんごう)がぐるり。
その環濠を挟んで内側に住居が、外側に墓地が点在していました。
当時のムラとしてはかなりの規模で、恐らく生産・物流の一大拠点として機能していたと考えられています。

 

今回の公開エリア

 

そして今回公開されたエリアの詳細図がこちら。

 

サイズは62メートル×46メートルの長方形。
その中を2本の環濠が斜めに横断し、内側が住居域、外側が墓域。
広大な遺跡の中のごく一部だけなので、やや消化不良感があるのは否めませんが、それでも興味深いエッセンスがぎゅっと詰まった高密度な空間となっています。

 

では細かな部分をひとつずつ見ていきましょう。

 

八日市地方遺跡の環濠A

 

いきなりメインの環濠A。
二重環濠の外側の方です。

 

環濠Bと比べてやや細めで、ぐにゃぐにゃカーブした不規則なラインを描いています。
周りには墓坑の跡が点在しており、ちょっと不気味な雰囲気。
恐らくここがムラだった当時も特異な空気を含む場所だったでしょう。

 

八日市地方遺跡の墓坑

 

こちらは墓坑の跡。
この窪みの中に木製の棺が埋葬されていたと思われますが、棺や骨・副葬品といったものは出なかったそうです。

 

長い年月の間に多分腐ってなくなったんでしょうね。
副葬品は元々なくて、結果的にこうして穴だけがボコっと残ったと。
何かしら見つかったら面白かったんだけどね。
ちょっと残念!!

 

連結土坑

 

連結土坑(れんけつどこう)なんてのもあります。
土坑ってのは大きな窪みの事ですが、それが列をなしてボコボコボコー。

 

これ、何の意味があったんですかね?
線上にいくつもの窪みを繋げるんなら、最初から長い溝を掘ればいいんじゃね?と思うんだけど、わざわざこうしてあるからには何かこうしなければならない理由があった訳で。
一体なぜ?
謎じゃ~・・・(悩)。

 

八日市地方遺跡の環濠B

 

環濠B。

 

深さは大体60~80センチ、幅は1~2メートル。
結構なサイズです。
筋が何本か並走しているのは、幾度も掘り直しをしているため。
恐らく川が氾濫するたびに流れてきた土砂で埋めたてられ、その都度掘り直した結果、こうして幾筋もの溝跡が残ったと推測されています。

 

石製指輪の出土地点

 

その環濠Bから面白いものが出ています。
なんと石製の指輪。

 

これ、ものすごく珍しいもので、全国でも11しか例がないんだとか。
しかもこれが最も古いと考えられており、まさに珍品中の珍品。
考古学的にも非常に価値の高い研究資料として注目されています。

 

緑色凝灰岩製指輪

 

その指輪がこちら。
内径約16ミリ、現在の指輪の号数で言えば10号サイズ。
素材は管玉なんかにも使われた緑色凝灰岩(火山灰が固まってできた柔らかい岩(が緑色に変質したもの))が使われています。

 

残念ながら半分以上が欠損していますが、これはどうも弥生時代の時点でもう壊れていたようです。
それを示すのが端に空けられている穴で、恐らくこの穴に紐を通し、ネックレス的な二次利用をしていたのではないかと考えられています。
ただあくまで想像ですので、確定的な意味は分かりません。
詳しい事情は弥生人に聞いてください。

 

生きてればね。(※生きてません)

 

八日市地方遺跡の住居跡

 

住居エリア跡には柱穴がボコボコ。
明らかに建物が繰り返し建てられた痕跡が残っています。

 

これを見るとかなりの数の住居が建っていたように見受けられますが、結構賑やかだったんですかね?
建物の規模はどのくらいだったんですかね?
ここでどんな生活が営まれていたんですかね?

 

考えれば考えるほど・・・ん~ミステリー!

 

弥生時代の管玉

 

その住居エリアから大量の管玉が出ています。
そのサンプルがこちら。

 

注目なのは『大量の』という事実。
どうもこの遺跡、管玉の一大生産工場だったようで、それを匂わせる管玉や製造道具、作りかけの残骸などが沢山出ています。
これはつまり交易品として作られていたという可能性を示唆しており、もしそうであれば他地域と活発な商業交流が行われていたことになります。
そして恐らく実際行われており、それを裏付ける土器や石器が何点も出土しています。(新潟のヒスイや長野の黒曜石など)
意外に活動範囲が広かったんですね、弥生人。

 

八日市地方遺跡の方形周溝墓

 

様々な謎を投げかけてくる八日市地方遺跡。
現在の現場の調査は7月までで終了するそうです。
その後は埋め戻し→整地→建物建設(商業ビルかなんかが建つらしい)の予定。
つまり遺跡が見られるのは「今」だけ。
このタイミングを逃したらもう二度と見られませんよ~!

 

なお、ここからの出土品は小松市埋蔵文化財センターが管理しているようです。
出土品だけでも見たい~って方はそちらにお問い合わせを。
特に激レア石指輪は絶対必見ですゼ!

 

 

八日市地方遺跡

住所:〒923-0868 石川県小松市日の出町

ホームページ:石川県埋蔵文化財センター公式サイト

 




エリア >> 石川県 > 小松市 > 日の出町

 

関連タグ >> 遺跡 

 


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