金沢湯涌江戸村 旧永井家・旧平尾家◆同じ武家屋敷でもこんなに違う
2022年05月02日
江戸時代のホンモノ屋敷が見られる金沢湯涌江戸村。
県内外に残っていた江戸期建築を移築公開している施設です。
その金沢湯涌江戸村に展示されている建物の内、前々回は商家を2棟、前回は宿場問屋を1棟見てきました。
今回は武家屋敷を見ていきます。
現在公開されている武家屋敷は2棟、旧永井家と旧平尾家です。
スタートは旧永井家から。
間取りはこんな感じ。
まず入口となる玄関土間があり、左手がパブリックスペースである小間&座敷。
その他が茶の間を中心とするプライベートスペースとなります。
パブリックスペースとは接客空間、プライベートスペースとは生活空間ですね。
この公私の空間分けは武家屋敷のお決まりで、以前に紹介した金沢市足軽資料館の屋敷なんかでも同じ構成が見られます。
こちらは玄関土間の上にある収納戸。
金沢市足軽資料館にもこれと同じものがありましたね。
そう、薪を収納するための場所です。
夏の間にここにせっせと薪を溜め込んで、冬になったらチマチマと引っ張り出しては燃やすのです。
この黒い戸は多分後付けでしょうね。
こんなんあったら出し入れの邪魔だし。
恐らく昭和くらいになって囲炉裏を使わなくなり、それに合わせて戸をはめてふさいじゃったのでしょう。
小間。
なんかえっれー気合の入った額が置かれています。
書かれている文字は『一身温飽愧于天』。
これは大塩平八郎の詠んだ漢詩の一節で、「自分だけが温かい服を着てお腹いっぱい食べられることは天に対して恥ずかしい」という意味です。
大塩平八郎と言えば、江戸末期に貧窮にあえぐ庶民のために反乱を起こした義人として知られています。
そんな彼の詩がなんでここに飾られているのかと言うと、この屋敷、大正から昭和初期にかけて代議士を務めた永井柳太郎(ながい りゅうたろう)の生家だったからです。
この言葉には政治を担う者はかくあるべし、という柳太郎の心意気が込められているんですね。
その奥の座敷。
ちょっと後ろがつかえてこんな窮屈な写真しか撮れなかったのですが、実際窮屈です。
この座敷だけに限らず、家全体がコンパクトと言うか窮屈です。
お世辞にも「豪邸」と呼べるシロモノではありません。
と言うのもこの屋敷、元々は足軽屋敷でした。
足軽と言えば武士身分の中でも最下層。
どこか貧祖な感じがするのはそのためなんですね。
さて、この部屋に入ったら一つ確認して欲しい事があります。
それは畳の踏み心地。
ここだけ妙に足裏に馴染むと言うか、ソフトな感触が実感できます。
分かりにくかったら隣の部屋の畳と踏み比べてみてください、はっきりと違いが分かるはずです。
理由は畳にあり、この部屋の畳、なんと職人さんが手縫いしたものが使われています。
手縫いなんて今でこそ高級品ですが、江戸時代は当然これが普通。
つまりこの踏み心地は江戸時代のものに限りなく近い、リアルな踏み心地なのです。
ここを訪れた時はそんな足裏の感触にも注意を向けてみて下さい。
次は旧平尾家を見ていきます。
外観からして先に見た旧永井家より大振り。
ガッチリとした土塀に囲まれて、エントランスにも余裕があり、明らかに格上の造り。
恐らくこの平尾家は永井家(足軽)より高い身分だったのでしょう。
現場の案内板には身分についての明確な説明はありませんが「知行70石程度」と記載されているので、恐らくは平士階級だったのではないかと。
その格の違いがこうして家の造りに現れているのでしょう。
(※加賀藩の武士身分は上から順に「人持組頭」→「人持組」→「平士」→「与力」→「御歩」→「足軽」の6階級)
旧平尾家の間取りは上図の通り。
玄関を入って左手にパブリックスペースとなる次の間→座敷。
その他の部屋が生活のためのプライベートスペースとなります。
一見して旧永井家とは部屋の数が段違いですね。
やはり両者の間に大きな身分格差があったのは間違いないでしょう。
ガツーン!と鎧が飾られている座敷。
この家のフラッグシップルームですね。
金箔貼りの天袋が光りますなー。
ステキですわ♪
そして面白いのが床柱(画像中央の柱)。
中央が黒く、左右は茶色くなっています。
これは中央部分のみ木の皮を残し、後ははぎ取ってあるからです。
何気にオシャレ感ギンギンの柱となっています。
そしてちょっと見て欲しいのが、隣の仏間との天井の高さの違い。
画像じゃイマイチ実感できませんが、座敷の方が一段高く作られています。
これはこの部屋の方が格が高いんだよ~って事を表しています。
日本家屋ってね、天井で部屋の格の違いを表現するケースが多いのですよ。
高さ以外にも格天井にしたりだとか、あるいは装飾を施したりだとか。
部屋を見る時はそんな頭の上の様子にも注意して見ていくと、色々な発見ができて面白いですよ!
居間。
室内は見ての通り質素。
特にデコレーションらしいデコレーションは何もない端正な部屋となっています。
かつてはここにタンスとか調度品とか、もっと生活臭いものが沢山あったんでしょうね。
そしてかーちゃんがいて、とーちゃんがいて、子供達がドタバタ走り回ってて。
そんなどこの家にでもある日常の風景が繰り広げられていたのでしょう。
部屋の外は広縁となっていて、そのまま背戸(せど)と呼ばれる裏庭へと繋がります。
こちらがその背戸の眺め。
これね、何気に江戸時代の武士の生活を物語っています。
四角く区切られている場所は畑。
え?武士が裏庭に畑作って作物を育ててたの?って思われるかもしれませんが、育ててたんです。
意外とね、ビンボーだったのですよ、江戸時代の武士ってのは。
だからこうやって「食う」ために自力で食糧生産をしてたのです。
決して趣味の園芸じゃないんですよ!
同じ武家屋敷でもかなりの違いが実感できる旧永井家&旧平尾家。
訪問の際にはドコがドウ違うのか?そんなテーマを持って見比べてください。
他にも色んな発見があって面白いですよ!
次回は農家を見ていきます。
田舎の農家だけに屋根はオンボロ茅葺、壁はガタガタ土壁。
旧時代の息吹が生々しくて、めっちゃめちゃノスタルジックですよ~♪
関連タグ >> 古民家 古建築 金沢湯涌江戸村
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