倭姫宮 参道に秘められた古代の旅の軌跡をたどる
2021年02月08日
倭姫(やまとひめ)ってご存知でしょうか?
伊勢神宮の創建に関わった人物で、垂仁(すいにん)天皇の皇女と言われています。
伊勢神宮ができたのが今から約2000年前なので、生きていれば約2000歳って事になります。
生きていればね。(←無理)
そんな彼女が歴史の舞台に登場したのは、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を遷座しようという話が出た時でした。
元々皇居内に祀られていたのですが、それじゃ恐れ多いと一旦外に移され、そこからさらにもっとふさわしい地へ移そうとなったのです。
その選地の役目を仰せつかったのが倭姫であり、こうして誕生したのが伊勢神宮でした。
以上の経緯により、伊勢神宮と倭姫の間には切っても切れない深~い繋がりがあります。
でもその倭姫が信仰の表舞台に立つことはなく、長い間ずーっと脇役の地位に甘んじていました。
そこで立ち上がったのが地元有志。
これじゃーイカン!倭姫は手厚く祀られるべきだと、ついには神社を作ったのです。
それがこの倭姫宮(やまとひめのみや)です。
創建はごく最近の大正12年。
なのでこの神社、何気に新しいんですね。
伊勢神宮グループと言えば古~い神社の集合体のイメージがありますが、この神社の歴史はまだほんの100年足らず。
人間で言えばたったの4歳程度です。(※2000年を人生80年で計算すると)
入口にはお約束の鳥居。
柱は丸柱で笠木(天頂の横木)は五角形の、ザ・伊勢鳥居。
結構汚れてますな。
上に覆いかぶさった木立のせいで、笠木に緑色のシミがこってり染み付いちゃって。
色もムラムラ。
この鳥居は20年に一度取り替えられるので、そろそろ交換時期なのかもしんないですね。
これで何年くらい経ってんのかな?
そのワイルドな鳥居をくぐると参道。
玉砂利の道が結構しつこーく続きます。
コレちょっと無駄に長いんじゃないの?と若干違和感を感じるくらい。
でもね違うんですよ。
この長さには意味があり、実はあるストーリーが隠されているのです。
そのストーリーとは「倭姫の旅路」。
この長く続く参道は、倭姫の長く険しかった旅路の再現なのです。
実は倭姫、伊勢を神宮創設の地と定めるに当たり、もんのスゲェ~~~長旅をしているのです。
そんなローーーング長旅のひとつの道標となるのが、この池。
途中でいきなり水の枯れた、正直こんなんならなくていいんでないの?的な池が現れます。
でもこれすごく重要な意味がありまして、琵琶湖を表現しています。
え?琵琶湖っスか???って感じかもしれませんが、琵琶湖なんです。
倭姫の旅路を辿ると、奈良の桜井からスタートして北上し、琵琶湖付近を経由した後、南下して伊勢にたどり着いています。
つまりこの池は、倭姫はこうして琵琶湖を眺めながら旅をしたんだよ、という当時の再現なのです。
なのでこの池を通る時には、おおーー琵琶湖だー、と感動しながら通ってください。
すげーーーーイマジネーション必要だけど。(←!)
そして参道の最後には、旅の終わりの地もちゃんと用意されています。
それがこの四角い広場。
この広場は伊勢の地を表しているんですね。
長い長い旅路の果て、途中琵琶湖も通って、ついにゴールにたどり着いたーって場面が、この広場なのです。
でもストーリーはまだ終わりではありません。
右側を見てください。
階段です。
上に向かってすっと伸びています。
上には何があります?
この場合の上とは、はるか空の上の事です。
そこにあるものと言えば、そう、太陽ですね。
太陽は天照大御神そのものであり、そこに続く階段、それはすなわち天の世界へと繋がる入口となるのです。
以上をまとめるとこんな感じ。
長く険しい旅路の末ついに伊勢の地にたどり着いた→目の前に神の住まいである天界へとつながる階段が現れた→この先を登れば神さまに会える!
と、こんなシナリオになっているのです。
どう?ニクイ演出でしょ?
この天への階段を登った先が、ようやく境内です。
そこでまず目にするのがこの祓所(はらえど)。
雨天の際に祭祀を行う場所です。
柱は当然丸柱、梁間2間・桁行3間、ハッキリした入口はありませんが、まあこの場合は平入でしょうね。
この建物も入口で見た鳥居同様、かなり変色しています。
屋根なんかモロに緑色染み染みの、ザ・葉緑素カラー。
屋根下の柱や梁は比較的元の色を維持してますけどね。
これも式年遷宮(しきねんせんぐう・20年に1回社殿を新設して入れ替える儀式)のタイミングで建て替えられるはずなので、もうちょっとの辛抱です。
頑張れー!祓所ー!(←何を?)
その先に登場するのが倭姫が祀られている社殿。
鬱蒼と茂った木立のトンネルの向こうに現れます。
この演出もいいですよね。
樹木という生命感、清廉な空気、そして暗いトンネルの向こうに覗く美しい社殿。
今まさに神さまのそばに近づいているんだーって実感がぐんぐん高まっていきます。
そして神社の最奥、ついに社殿へと到達します。
この神社最大のクライマックス!
正面には入口でも見た白木で作られた伊勢鳥居。
その先には二重の玉垣で囲まれた社殿が控え、参拝者が訪れるのをじっと待っています。
この質素な感じがいいですよね。
金具や彩色でごてごて飾り立てず、木や藁の自然な茶色のみで覆い、形状はシンプルな純和風古代建築の様式をそのままに残した、ノスタルジックスタイル。
伊勢神宮グループにふさわしい、堂々たる風格です。
ひさしの下から見えるこの眺めも独特ですね。
下には聖域としての緊張感をきりっと引き締める白の玉砂利。
建材は全て木目の美しい白木で統一し、装飾は一切ナシ。
その潔さが聖域としての清浄さをより強調し、と同時に木の温もりが柔らかに周囲を包み。
奥に見える扉が、今ここに立つ自分と神との繋がりをイメージさせる。
ここにいると本当に、ああーーなんか神さまに会えそー!みたいな。
そんな気持ちを掻き立てられます。
隣にはお馴染みの古殿地(こでんち)。
次回の式年遷宮の殿地となる場所ですね。
奥にはお決まりの心御柱(しんのみはしら)が収められてる(という噂の)小さな社がぽつん。
今はこうしてお役目を外れてゆっくりと休んでいます。
それにしても贅沢ですよね、20年ごとに社殿を建て替えるなんて。
なんでも式年遷宮1回やるのに200億以上かかるんだとか。
それを20年ごとですからね。
どんだけお金持ちなのよ、伊勢神宮。
以上、倭姫宮の鳥居から社殿までのレポートでした。
伊勢神宮グループの中ではまだまだ若い4歳の神社。
でも貫禄は十分です。
古代に倭姫が歩いた旅の足跡を辿りながら、その雄大な神域感を思いっ切り楽しんでいってください。
なおここで紹介した参道トラベルは正面から入った場合のルートです。
この神社は脇にももう1本入口があって、そっちの方が駐車場からは近いのですが、そこには倭姫の旅路ストーリーは用意されていません。
できればちょっと遠回りして、正面の方からお入りください。
関連タグ >> 神社 伊勢神宮 倭姫文化の森
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コメント
1.通過
こんばんは、ふくもっちゃんです。
倭姫さんの近くの学校に4年も通ったのに、1度もお参りに行ってません。
昨日、倭姫さんを初めてお参りしようと思ったんですけど、急に強風が吹いてきて寒くなったので諦めました。
ふくもっちゃん 2021-02-08 22:21:44
>> このコメントに返信
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