
時国家(本家上時国家) 後編 古民家だから出せる時間の味に酔いしれよ
2023年04月22日

平安時代末期、オレ様根性全開で栄華の極を謳歌した平家。
やがて壇ノ浦の戦いで滅びるも、中心人物のひとりだった平時忠(たいら の ときただ)はここ能登に落ち延び、連綿とその血筋を繋げました。
都落ちしたとは言えそこは名門中の名門、ちゃっかりと土地のボスに収まり、江戸時代には庄屋の役目を勤めるほどに栄えました。
その時に建てられた豪邸が、現在まで残る時国家屋敷です。
前回はそんな屋敷の前半分を見てきました。
今回は残り半分を見ていきます。

まずは庭。
平面+石+木という、ぶっちゃけ殺風景な庭。
あまりにも不自然だわな、この庭。
明らかに「鑑賞」を前提に設計されていない。
特に平面の部分、ここが完全に意味不明。
この平面部分、ひょっとしたら昔は建物でも建ってたんじゃないですかね?
あるいは畑になってたか。
いずれにしても庭以外の用途に使われていた臭いがぷんぷんします。

そのまま左に目を移すと、ガラリと様相が変化。
ご覧の眺めになります。
こっちはバリバリに庭園ですな。
心の字池に植栽、配石、石橋。
傾斜を巧みに利用して奥行き・幽玄性を見事に表現し、味わい深い景観を創り出しています。
こんだけの技量・センスがあるのを見ると、やっぱ先の庭のテキトーな造りは絶対不自然だな。
あそこは一体なんのスペースだったんだろう?

ズバッと伸びる板張りの縁側。
いいわな~、この雰囲気。
黒く沈む古木の色合いがメチャメチャ風流。
このシブイ空気感は古民家じゃなきゃ出せんわな。
こんな家で生活してみたい~。

その縁側から覗く室内。
なんやら骨董がズラリと展示されています。
鎧兜カッコエ~♪
レプリカじゃないしね、本物だしね。
説得力と言うかリアル感が違うわ。
後ろの屏風もいいな~。
うちの和室にもこんなの飾りたいーーーーー!!!!

その縁側の突き当りに囲炉裏の部屋。
室内は壁も天井も一面のブラック!
こんな景色好きやわ~♪
囲炉裏のススで真っ黒けっけになった空間。
長年に渡って煙でいぶし続けないと出せない漆黒の美。
時間の積み重ねだけが作り出せる、情緒満点の暗黒世界です。

上を見上げると煙出しの穴。
屋根裏に囲炉裏の煙を送るためのものです。
イメージとしては煙突。
これ、すごく大事なんです。
茅葺屋根には必須の構造。
こうして絶えず煙を送って屋根全体をいぶしてやらないと、速攻で虫が湧いたり腐ったりするのです。
それこそ数年で痛み始めるんだとか。
家を長ーく持たせるための先人の知恵です。

隣は土間になった台所。
まだ電気の通っていなかった時代の雰囲気をそのままに残しています。
一応蛇口が付いてますが、昔は当然こんなのはありません。
井戸から手作業で水を汲み上げて、料理をしたり洗い物をしたり。
暖房なんてもちろんないから、冬場は凍えるほど寒かったはず。
んーーー厳しいーー!!

さらに進むと歴史資料が陳列された部屋。
ノンジャンルの骨董品がズラリ。
カッコええな~。
昔のモンってのは、それだけでカッコええですわ。
古さボロさが醸し出す孤高の風合い。
インテリアに欲しい~!

そしてその部屋に飾られている欄間。
これもまたシビれるほどカッコええのですわ♪
1枚板に彫り込まれたアート性ギンギンの透かし欄間!
欄間のある家、憧れるわ~。
こんなレベルの欄間、今買ったら1枚100万以上はするよ。
そんなのが何枚もバンバンバーン!
もう見てるだけでクラクラしてきますわ。

その横には大きな土間の部屋。
なんとなーく土臭いと言うか、生活感漂う雰囲気。
多分ここ、かつては農作業のためのスペースだったんでしょうね。
日々使う農具の手入れをしたり、脱穀や精米をしたり。
いわば田んぼのバックヤード。
きっと活気あふれる場所だったのでしょう。

天井には篭が3つぶら~り。
これ、実際に使われていた本物です。
昭和初期まで当主の乗り物として使用されていたんだとか。
今で言えばベンツのCクラスに乗ってるみたいな感じですかね?
人間、歩かんとダメよ~。
歩行は人体活動の基本だからね。
ナンボ金持ちだからって、横着して体動かさんとデブになるぞ。
自分の足で歩けー!(←金持ちに対する卑屈)

高札なんてのもあります。
高札ってのは江戸時代のお触書ですね。
アレせーコレせーと御上から一方的に押しつけられる、うるさい命令書です。
何て書いてあるのかは不明。
恐らく、「はあ??」みたいなことが書いてあるのでしょう。
多分わたしならガチガチのスルー。
命令されるの嫌いだし。

江戸時代の栄華と庶民生活の空気を今に残す上時国家屋敷。
ここはね、絶対一見の価値ありますよ。
何百年も経ってるのに良好に保たれている建物。
役所の公式空間と私人の生活スペースが混在しているカオスな内部構造。
それでいて凛とした格式高さを感じさせるワンランク上の雰囲気。
とにかく全てが異世界です。
能登に来る機会があればぜひ訪問してみて下さい。
なおここから徒歩圏内にある下時国家屋敷は令和2年をもって公開終了になったとの事。
なんでやーーー!!!
ソッチも見たいんやーー!!!
公開再開してくれーーーー!!!
切に願う。
関連タグ >> 古民家 古建築 上時国家
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