三室まどがけ古墳群 古墳内石室への侵入成功!
2022年09月17日
過日実施された石川考古学研究会の8月例会。
その際に『七尾南湾の古墳を巡る』と題した古墳巡りが企画されたのですが、なんか会員じゃなくても参加できるみたいなので、しれ~っと合流してきました。
だって古墳大好きなのでーー!!!!
この日巡ったのは三室まどがけ古墳群、佐味今田谷内古墳群(さみいまだやちこふんぐん)、矢田高木森古墳、プラス矢田遺跡の4ヵ所。
これら4ヵ所の古墳+遺跡を今回より4回に渡ってレポートします(あと万行遺跡も行ったけどサラッと見ただけなのでレポートはパス)。
第1回目は三室まどがけ古墳群から。
現場の見取り図はこんな感じ。
下に2・3号墳があって、丘の上に1号墳。
ぶっちゃけ廃墟感強めです。
忘れられた遺跡的雰囲気。
ただそれがマニア心をくすぐるんですけどね。
もうグリグリ♪です。
まずは2号墳から。
この古墳、移設復元です。
元々は丘の上、1号墳の脇にありました。
それが道路の開削に当たって取り壊され、もったいないので下に移設、となったそうです。
墳丘のラインが妙にきれいなのはそのため。
注目なのが石室の石材。
見ての通り小さな穴でボコボコ。
いわゆる「虫食い岩」ってヤツです。
これらは全て海辺に生息する貝がコツコツと掘り開けたもので、それを海からここまでエンヤコラと運び込んで来たのです。
すぐそこが海っちゃ海なんですけどね。
それでもこのサイズの岩をここまで運び上げるのは相当な重労働だったはず。
そもそもどうやって運んだのかな?
石室内部の様子。
ふっふっふ・・・扉を開けてもらったのだよ、特別に。
しかも中にも入れたし!(喜)
見た感じで何となく分かると思いますが、壁面と床面とで石質が違います。
壁面は石灰質砂岩、床面は安山岩。
石灰質砂岩はこの辺の石ですが、安山岩は対岸の能登島からわざわざ運んで来たものだそうです。
なんで2種類の石を使ったのかは謎。
安山岩の方が平らに加工しやすかったんですかね?
続いて3号墳。
こちらも移設復元古墳。
この古墳、実は2号墳の移設中に偶然発見されたものなんだとか。
って事は、ぱっと見、古墳らしくなかったって事で、その雰囲気が墳丘の形になんとな~く残されています。
上面は平ら、高さも低め。
ここに木や雑草がバサバサ生えてたら、確かに古墳だと認識し辛いでしょうな。
石室は長さ6メートル。
見ての通り屋根がありませんが、発見時点で既になかったのかどうかは不明。
内部からは須恵器(すえき・登り窯で焼いた陶器)、土師器(はじき・野焼きで焼いた陶器)、金環、人骨が発見されたそうです。
真ん中辺りに石材が横に渡されていますが、これは玄室(埋葬部屋)と羨道(せんどう・通路)との境界を表す石。
今は石がチョロっと置かれているだけですが、この感じだとひょっとしたら玄室に侵入できないようガッチリ封印されていたのかもしれません。
墳丘の裏側に回るとなんやら意味ありげな加工が施されています。
これは移設前、この古墳の後ろに実際にあった空堀の再現。
こんな感じで部分的に堀が掘ってあったそうです。
なんで裏側だけやったんかね?
普通は周囲にぐるりと掘るもんなんだけど。
なんか特別な意味や事情でもあったのかな?
移設復元された2・3号墳と違い、1号墳だけはオリジナルのままの場所・姿で残されています。
その入口となるのがこちら。
この急坂をトコトコと登った先にあります。
見ての通り足元は結構悪め。
この日は晴れてたから良かったけど、雨上がりなんかだと多分かなりぬかるみます。
足元には十分注意して登ってください。
じゃじゃーんと登場、1号墳。
思いっ切り廃墟感全開です。
崩落しまくりのボロッボロ。
この崩落は現在も続いており、市としては移設?保全?の選択を待ったナシで迫られているそう。
現在はそのための調査・検討を進めている段階で、まだ結論は出ていないものの、埋め戻しも視野に入れているそうです。
つまり成り行き次第では、この古墳の姿を直で見られるのは今だけ。
見るなら『今』です!
使われている石は先に見た2・3号墳と同じく、壁面に石灰質砂岩、床面に安山岩。
まるでテトリスのようにきれーに組み上げられています。
大変だったろうな、これ作るの。
だって丘の上ですよ、ここ。
そんな所までわざわざこんな大きな石を何百個も運んで積んでその上に土を盛って。
当然機械一切ナシのオール肉体労働。
考えただけで地獄ですわ!
壁面には謎の落書き。
意味は不明。
何らかのメッセージなんですかね?
あるいは建造プロセス上の目印?
特に意味なんかなくて、単なる傷?
ミステリーじゃ~~~~(悩)(悩)(悩)。
門柱なんてのもあります。
玄室の入口を飾る権威のデコレーション。
カッコイイね。
これ1発あるだけで、なんかワンランク上の凄みみたいなのを感じますわ。
ここに葬られたのはきっとそれなりの富と権力を持つ人物だったのでしょう。
当時はまだ文字がないから、その人物像や経歴を追えるような記録が残ってないのが残念!
3基の古墳(2基は復元だけど)が見られる三室まどがけ古墳群。
神秘的ですゼ。
心アガりますゼ。
古代ロマンむんむんですゼ。
かつてここにどんな光景が広がっていたのか、そんな想像に夢を膨らませながら鑑賞してみてください。
次回は佐味今田谷内古墳群。
ボロッボロの前方後円墳にマニア心メロメロです♪
三室まどがけ古墳群
住所:石川県七尾市三室町
関連タグ >> 遺跡 古墳
コメントをする
七尾市の最新記事一覧

熊木城跡 突っ込め!その全然整備されてない所に突っ込めー!
2022年11月08日
七尾の山奥に今も残る熊木城跡。入口は現地人じゃなきゃたどり着けないような、ややこしー道沿いにあります。google ma・・・
カテゴリー:観光名所

宇賀山 西光寺 境内にあるドスコーーーイ!!!の意味
2022年10月22日
小丸山城址公園のすぐ足元、背中に曲輪を担ぐような場所に小さなお寺があります。浄土宗のお寺、西光寺(さいこうじ)です。この・・・
カテゴリー:観光名所

矢田高木森古墳 小遣い稼ぎに古墳を掘っちゃイケマセン!
2022年09月27日
普通の、普通ぅーーの住宅街の中を歩いていると唐突に草ぼーぼーの丘。上へ登る通路の入口には丘の由来を示した案内板。『矢田高・・・
カテゴリー:観光名所

矢田遺跡 手間暇かけて遺跡発掘しても最後はシュールに終わるのです
2022年09月24日
現在進行中の七尾外環状線の整備事業。矢田遺跡はそんな工事予定区域の一角にある遺跡です。時代は弥生~中世頃。注目なのは「工・・・
カテゴリー:観光名所

佐味今田谷内古墳群 このボロボロな姿こそ現代まで生きた証
2022年09月20日
哀愁漂う古墳が見られる佐味今田谷内古墳群(さみいまだやちこふんぐん)。昔は「藤平谷内古墳群(とうべいやちこふんぐん)」と・・・
カテゴリー:観光名所

三室まどがけ古墳群 古墳内石室への侵入成功!
2022年09月17日
過日実施された石川考古学研究会の8月例会。その際に『七尾南湾の古墳を巡る』と題した古墳巡りが企画されたのですが、なんか会・・・
カテゴリー:観光名所

明治の館室木家 母屋内後編 この庭が面白ぇ~♪♪
2022年08月13日
江戸時代から続く名家の豪邸、室木家。前回は母屋の半分を見てきました。今回は残り半分を見ていきます。まずは庭。簡素でコンパ・・・
カテゴリー:観光名所

明治の館室木家 母屋内前編 仏間ストリートの荘厳さに恍惚
2022年08月09日
江戸時代からこの辺り一帯の大元締めみたいな家系だった室木家。現在公開されている建物は、そんな室木家が明治期に入って建てた・・・
カテゴリー:観光名所

明治の館 室木家 敷地編 ザ・金持ちはお城に住んでます
2022年08月06日
古建築好きの大好物、茅葺屋根。一度は住んでみたい茅葺屋根。そんな茅葺屋根を今に残す古~い建物が明治の館室木家です。なんで・・・
カテゴリー:観光名所

木越山 光徳寺 このお寺の山門は動物園かよ!?
2022年07月27日
小丸山城址公園の駐車場に降り立つと、すぐ隣に大きなお寺の本堂が見えます。光徳寺です。創立は1226年との事なので鎌倉時代・・・
カテゴリー:観光名所
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 part2 等伯の神画が見られるゼ~♪
- グリル&ハンバーグNINO ハンバーグ&ソーセージ&から揚げ コスパ高すぎ!腹いっぱい食えます
- 旧橋本家住宅 ここに人間が住んでたのが信じられない
- 富山市ガラス美術館 展示編 難しいゾ~、ガラスアート
- 富山市ガラス美術館 建築編 富山という土地を表現した建築アート
- 白山町遺跡現地説明会 永遠に答えが分からないのが考古学
- 薬王院 温泉寺 「あいうえお」はここから始まりました
- 餃子のあひる 餃子定食 この餃子、エンドレスに食えるわ~♪
- 栄谷丸山横穴群 コウモリに注意してご鑑賞ください
- 富山市郷土博物館 復元模型のテクノな仕掛けがイカスのよ!
- 富山城跡 千歳御門~日本庭園周辺 庭園の読み解き、楽しいわ~♪
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪