
敦賀市立博物館 前編 この建築、超絶過ぎー!
2022年06月22日

敦賀の街中に唐突に現れるレトロチックな洋風建築、敦賀市立博物館。
元は旧大和田銀行本店本館として建てられ、現在は歴史民俗資料館として使われています。
建造は昭和2年との事なので、約100年前。
日本が西洋文明に追いつけ追い越せとガムシャラに頑張ってた頃。
アッチにもコッチにも洋風建築をガンガン建てまくってた時代。
そんな当時の熱量が今も残るかのような、力のこもった建築です。

いきなり入口がギンギンにイケてますな。
ゴーン!と重々しい石のエントランス。
各パーツをきっちり左右対称に置いたデザインがいかにも西洋的ですね。
自然との調和を旨とする日本文化に対して、あっちは自然を支配するという思考が強い地域。
だから建物もこうしてガッチガチに人工的に固めて、「人間の叡智の塊」みたいな雰囲気にしちゃうんですね。

飾り柱はギリシア神殿風。
足元にペデスタル(台座)を置いて、その上に円柱を2本、装飾には垂直性を強調するフルーティング(縦溝)。
重さと軽快さをミックスさせた、実にリズム感のある造形です。
昭和初期という時代、恐らくこのデザインは目が覚めるほど斬新に見えた事でしょう。
今風な感覚で言えば「超イケてるーーー!」みたいな感じですかね。

軒下の飾りにも注目。
何気に葡萄があしらわれています。
西洋→ワイン→葡萄、ああ、だから葡萄か、と思われるかもしれませんが、多分違います。
これは豊産・繁栄への願い。
葡萄は房にたくさんの実が付くことから、豊穣や子孫繁栄の象徴とされています。
そしてこの建物は元は銀行。
つまりここにこうして葡萄を飾る事で、事業の繁栄と発展を祈ったのです。
おカネ集まれ~!って事ですね。

窓は縦長。
これも西洋石材建築のセオリーですね。
石ってのは垂直の荷重には強いけど、横からの荷重にはものすごく弱く、ちょっと力をかけるとあっさり折れます。
だから石材を横に渡す、いわゆる梁の部分はできるだけ短く納めて、加わる負荷を小さくするのです。
開口部が縦長になっているのはそのためなんですね。
もっともこの建物は鉄筋で支えられているので、強度的な問題はないんですけどね。

ついでに石材にも注目。
白味の強い石基の中に黒雲母の粒がキラキラ。
花崗岩ですね。
コンクリートみたいに汚いシミが付かないので、100年近く経った今でも美しい風合いを保っています。
やっぱ石ってのはいいですわな。
しっとりした深みがあって、温かみがあって。
いやー美しいわ!

中に入ると、いかにも銀行のカウンター的な内装。
黒大理石の台の上に鉄の格子がガッシーン!
ここもガチガチの西洋風ですね。
しかも眩しいほどのクオリティ、ゴージャス感。
設計者の高い知識と技量が感じられます。

こちらの柱もギリシアスタイルですが、表のものとは仕様を変えてあります。
胴回りをほんのり膨らませたエンタシスにし、柱頭はボリュート(グルグル模様)を施したイオニア式。
その上には横のラインをシャープに走らせたエンタブレチュア(梁)。
抜群に洗練されてますな。
今の時代に出しても十分通用するレベル。
こんなのを昭和初期に造っちゃったってんですから、驚きです。

天井の装飾も見事。
エッジをビッシビシに立たせた幾何学模様で仕上げてあります。
これ多分、左官屋さんのコテ作業でしょうね。
足場組んで、ひたすら手作業で塗り上げていったのです。
キツかったろうな~、姿勢的に!
職人さんの技量と仕事魂に敬服ですわ。

さらにこの大理石の階段!
王侯貴族専用かよ!?みたいな威厳。
石+木+漆喰のコントラストが見事ですわな。
石が重さを、木が深みを、漆喰が高貴さを演出し、ラグジュアリーな空気を醸成。
途中で導線を90度折り曲げることで、その先に待つ神秘感と永遠性を想起させる。
ん~見事!

元銀行なんでね、金庫室なんてのもあります。
中を覗くとさらに金庫。
つまり金庫 in 金庫。
あったんでしょうね、ここにお金や貴重品がザックザク。
部屋中がお宝の山!
どんな光景だったのかな~??

今回はここまで。
次回も引き続きこの敦賀市立博物館をレポートしていきます。
残りは2階と3階、そして地下室。
ややインパクトは落ちますが、それでもここでしか見られない面白いものが沢山あります。
スーパーハイテク高級トイレなんかも!
データベースの接続に失敗しました。