切山城跡 しつこいわ~この城・・・
2022年06月04日
今から400年以上前、加賀(石川)の前田利家(まえだ としいえ)と越中(富山)の佐々成正(さっさ なりまさ)が激しく火花を散らした境界線上にあった城、それが切山城(きりやまじょう)です。
場所は石川・富山の県境くらい、小原越(おはらごえ)と呼ばれる峠道上にあります。
確定資料はないものの、おそらく前田方の城であったと考えられています。
これがね、素晴らしいのですわ。
近年調査の手が入ったおかげできれ~に整備されてまして、誰も来ない(←?)山城らしからぬ分かりやすさ。
シロウトでもはっきり輪郭がつかめるくらい、お城の様子が浮き出ています。
その入口がこちら。
造林作業専用道という事で思いっ切りロープが張られてて、一般車両は進入禁止になっていますが、入っちゃいけないって事でもないらしく、徒歩ならオーケー。
車はこのすぐ手前の路肩がちょっと広くなってるので、そこに置いておけます。
この時点では全然お城感ないですけど大丈夫。
ちゃーんとこの先にありますので、安心して進んでください。
はい出ました、案内板。
入口から3分くらい、意外とすぐ近くにあります。
ただこれ、今だからこんなにあっさり来られる訳で、ふもとから徒歩で来るとなるととんでもない難所です。
なんたって山城ですから。
この城はそんな場所にあるんだという事を念頭に置いておいてください。
お城の全体図。
城域は山の尾根に沿った形で展開され、全体的に細長く、ゆるやかなカーブを描いたような形状になっています。
主郭はほぼ中央にあり、そこを守るように複数の曲輪や空堀、堀切などの防御構造が施されています。
ちょっと専門的な話になりますが、このように曲輪が連続して並べられている構造を「連郭式(れんかくしき)」と呼びます。
一方で見方を変えると、主郭の周囲にぐるりと曲輪を配置する構造にもなっています。
これは「輪郭式(りんかくしき)」と呼ばれる形になります。
つまりこのお城は「連郭式」と「輪郭式」を融合させた、ハイブリッド構造になっているのです。
ここがね、しつこーいのですわ、空堀が。
入っていきなり空堀!空堀!空堀!
空堀の横もさらに空堀!しかも深っ!
みたいな。
これ、なんでこんなにしつこいかと言うと、理由があります。
それはこの先にあるもの。
松根城(まつねじょう)です。
こちらは敵対する佐々成正の城であったと考えられています。
つまりもし佐々方が攻めてきた場合、恐らくはこの城が戦場となるのです。
なので幾重にも堀を巡らし、敵の攻撃に備えてあるのです。
実際現場に立つと分かりますけど、すごいですよ~、緊張感。
うわ!ヤル気満々だ!みたいな。
しつこいけど、再び空堀。
いやね、実際メッチャクチャしつこいのですわ。
お前ら前世モグラかよ!とツッコミを入れずにはおられないくらいのしつこさ。
とにかく空堀だらけ。
でもそんだけ脅威だったって事なんでしょうね、佐々方が。
死ぬか生きるかですからね、一旦戦が始まったら。
こちらは主郭の様子。
主郭とは大将が陣取る場所、つまりお城の心臓部ですね。
ここがきれ~に整備されてましてね、地形がすごく見やすくなっています。
実はこの切山城、平成27年に国の史跡に指定されており、それに先立って詳細な調査が行われています。
その過程で整地が行われたんですね。
なのでご覧の通り曲輪の様子がものすごくリアルに生き返っているのです。
例えばここなんかもそう。
形がはっきりと浮き出ています。
ちょっとあり得ないくらい輪郭がきれい。
恐らく整備前はもっとガッタガタに自然化してたはず。
ただこの先もこの状態が保たれるかはどうか不透明。
と言うか多分再び自然化していく事でしょう。
つまりきれいに整えられている今は、まさに「見頃」。
この時期を逃したら、後で後悔しますよ~!
曲輪と曲輪と繋ぐ土橋。
ここもカッチリ輪郭が浮き出ています。
別にわざわざ橋で繋げなくても曲輪同士をべったり接続させた方が使い勝手いいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、それは違うんですね。
そうすると敵にとっても進みやすくなるのです。
そうなると守るのがキツイ。
でもこうして土橋で足場を限定すれば、敵はここを通ってしか前に進めなくなります。
そこを一網打尽にするのです。
曲輪のヘリにはごぼっと盛り上がりがあります。
土塁ですね。
これが敵の侵入を防ぐための防壁となります。
かつてはこの上に柵も設けられていたはずなので、高さにすれば合計3~4メートルくらいにはなりますかね?
まず突破不可能です。
さらにその先には狭い曲輪が連続してバン!バン!バーン!
これも防御のための仕掛けですね。
この曲輪にも各々防御柵が設けられていたでしょう。
そして敵はこれらをひとつひとつ突破しなければ前に進めません。
しんどいですよ~。
突破したと思ったらまた次の曲輪。
それを突破したと思ったらまた次の曲輪。
これじゃ前に進む気すらも失せますわ。
その曲輪群の先にもこんな仕掛けが。
堀切(ほりきり)です。
ご覧の通り通路をバシッと切り落として、侵入経路を遮断してあります。
これくらい這い上がりゃいいんじゃないの?と思うでしょうが、そんなの無理!
当たり前ですけど守城側は攻撃してきますからね。
こんな所でモタモタやってたら即餌食ですわ。
攻め手にすれば、このわずかな窪みが命取りとなるのです。
こんなスゲーのもあります。
超深っか~~~い堀!
ぱっと見、高低差3メートル近くはありますかね?
と言うか左側の土塁、明らかに経年劣化で低くなっているので、昔はもっと高かったはず。
恐らく本来の高低差は3メートルを越えるものだった事でしょう。
そんな鬼深い堀を真上から見下ろした眺めがこちら。
やっぱ高ぇー!!
堀に並行する形で車道が通ってますが、戦国期にこんなのはありませんでした。
つまり攻めてきた敵は、この堀の底を通る以外に前進するルートがなかったのです。
でもここを通るとどうなるか?
上から落石の雨あられですわ。
しかも堀の底だから狭くて逃げ場がなく、当てられ放題。
『死亡フラグ確定』の地獄ロードです。
この堀を突破してもまだ地獄は続きます。
見て下さいこの急斜面。
これは切岸(きりぎし)と呼ばれる人工の斜面です。
こんだけ角度を付けられると、当然敵は登って来られません。
一方で上にいる守城側は石を落とし放題。
もーどーーーーーにもなりません!
まだまだ紹介したい仕掛けはいっぱいありますが、キリがないのでこの辺で。
いいですよ~ココ。
マジでいいですよ~。
中世の山城の恐怖が生々しく体感できるスーパーホラーワールドです。
どうぞ鳥肌立てて、死ぬ気でご観覧ください。
なお整備されているとは言ってもここは山です。
夏は草ぼーぼー、冬は雪どっさり。
なので季節は春か秋がオススメ。
アップダウンが結構激しいので、できるだけ動きやすい格好でお越しください。
切山城跡
住所:石川県金沢市宮野町
関連タグ >> お城
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