今石動城跡 削って削って作り上げた土の城を見よ
2022年05月21日
中世の戦国時代、加賀の前田利家(まえだ としいえ)と越中の佐々成正(さっさ なりまさ)がバチバチやり合ってた最前線にあったお城、それが今石動城(いまいするぎじょう)です。
築城したのは前田側で、利家の弟の秀継(ひでつぐ)と子の利秀(としひで)親子が管理に当たりました。
お城として使われた期間は10年程度と言われています。
現場はバリバリ山の上。
車で入るのを思わずためらうようなギリギリ1車線の細道の先にあります。
勇気を持ってどうぞ!
全体マップ。
山の尾根伝いにヒトデ状に曲輪(くるわ・広場)が広がる、連郭式(れんかくしき)山城。
堀切(ほりきり)・竪堀(たてぼり)といったトラップは比較的少なく、印象としてはややユルイ感じ。
防御拠点と言うより、駐屯・出撃基地といった色合いを強く感じる造りになっています。
見て回れるエリアはごく一部。
整備されている所以外には突っ込まない方が無難です。
こちらが入口の目印となる看板3枚。
左から順に今石動城の簡単な成り立ち、城山公園全体の案内、今石動城の歴史と構造が書かれています。
特に構造は重要な情報なので、事前にバッシバシ頭に詰め込んでから突撃してください。
で、早速スタートと行きたいところですが、ちょっとストップ。
まず先に入口逆側、看板の左手を見て欲しいのです。
そこにあるのがこの窪み。
これ、堀切(ほりきり)です。
堀切とは曲輪(くるわ・広場)と曲輪の繋がりを切るための溝です。
曲輪同士を独立させることで敵の進路を奪い、足を止めるんですね。
山城には定番のトラップです。
改めて入口に戻り、中に入るとこんな感じ。
山の尾根に貼りつくように通路が通されています。
ここで先に見た堀切を思い出して欲しいのですが、あれはこの通路をちょうど横にバスっと切断する形で掘り込まれています。
深さは2メートル強くらい、それも両側は急勾配。
どう?鬱陶しいでしょ?
この溝を越えなきゃ前に進めないけど、落ちたら身動きが取れなくなってそのまま狙い撃ち。
シンプルなトラップですけど、堀切って意外に防御力高いのです。
通路の脇は転落必至の急勾配。
山の尾根なんだから当たり前じゃね?なんて思わないでください。
この角度、明らかに造成されています。
切岸(きりぎし)というヤツですね。
これも敵を迎撃するための仕掛け。
そんなの落ちないように気を付けりゃいいんでないの?と思われるかもしれませんが、そうはいきません。
上空から弓矢がビュンビュン飛んで来るという状況の中、当然いちいち足元まで気にしてられない。
あ、と思った時にはズルっと落ちて、サヨナラです。
そこからちょっと登ると早くも本丸。
ゴールです。
あまりにもスタートからゴールまで近すぎて、やや拍子抜け。
もちろん戦国期はこんなあっさり本丸までたどり着けませんよ。
今だから本丸のすぐ近くまで車で行けるから早いだけで、当時はもっとふもとの方から罠だらけの細道を死ぬような思いで突破していかないとここまでたどり着けませんでした。
そこに待つのは想像を絶する死の恐怖と緊張感。
まさに決死の進軍でした。
例えばこの眺め。
これは下からの眺めで、旗の立っている場所が本丸です。
敵とすればなんとしてもあそこまで行かないといけません。
でも途中には城側の兵があちこちに潜んでいて、先に見た堀切や切岸なんかのトラップもあって、しかも山登りだから体力もどんどん削られて。
そんないつ襲われるかもしれない恐怖に耐えながら突き進んでいくのです。
そう思ってこの眺めを見るとどうです?
なんかもう、生きた心地しなくありません?
本丸から見下ろす眺めは爽快。
小矢部の平野と、さらにその向こうにある立山連峰の稜線がはっきりと見えます。
山の上なので吹く風も気持ちいい~♪
なんて、今だから言えるんですけどね。
戦国時代、明日をも知れぬ思いで眺めるこの景色は一体どんな風に見えたんですかね?
本丸の一段下にももう1枚、曲輪があります。
面積的には本丸の半分程度。
大きなお城で言えば二の丸的なポジションになるんですかね?
見ての通りガッチリ削平されてて、明らかに土木工事による整地の跡が見られます。
戦に備えて木を伐り、土を削り、大量の蚊に襲われながら(←?)、全部手作業でこの広場を作ったのです。
いやーキツそうだわ!
この曲輪から本丸を見上げるとこんな感じ。
見て欲しいのは斜面。
自然界には絶対にありえないメリハリのある地形になっています。
これも切岸ですね。
この角度になるまでガリガリ削ってこの形を作ったのです。
ここだけじゃないからね。
山のあちこちでこんな工事やってんだからね。
山城って大変だわ!
この鬱蒼とした場所、これも曲輪です。
先に見た本丸も曲輪も見学用に整備されているので分かりやすいですが、何も手を入れられていないとこんな感じです。
戦国期に作られたものなんでね。
破棄されてから400年も500年も経ってますんでね。
そりゃ草木も生えますわな。
それでも地形には人工的な面影が今でもちゃんと残ってて、見る人が見れば曲輪だってのが一発で分かります。
戦国期の緊張感を今に伝える今石動城跡。
そんなに広くないです、見られるスペースは。
なので山歩きツライ~って人でも多分楽勝。
逆に山城歩きコッテコテに楽しみたい~って人には正直ボリューム不足。
その辺り、頭に入れて訪城してください。
ふもとは公園になってて、春は桜がきれいです。
桜シーズンに合わせて訪れれば二重に楽しめますよ!
今石動城跡
住所:富山県小矢部市城山町 10
関連タグ >> お城
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