店主たみこの観光案内ブログ

和田山城 小さなお城に隠された恐怖の仕掛けを暴く

2022年04月20日

和田山城の案内板

 

古墳で有名な能美市の和田山。
でもここ、古墳だけじゃありません。
中世の山城跡も残っているんです。
それが今回ご紹介する和田山城です。

 

詳しいデータがないので不明な点が多いのですが、築城は和田坊超勝寺によるものとされています。
要するに宗教勢力による一揆の拠点がそもそものスタートという事ですね。
その後、柴田勝家(しばた かついえ)配下の安井左近(やすい さこん)が入城し、今度は逆に一揆勢への攻撃拠点としてリユースされます。
今ある遺構はこの左近時代に整備されたものと考えられています。

 

和田山城の全体図

 

では全体図を。

 

南側に本丸を置き、そこから北側に向けて細長く伸びるような形となっています。
標高は30メートル強。
高さも広さもそれほど大きくはない、極めてコンパクトな平山城です。
ただ内部の密度はかなり濃く、空堀や枡形・櫓台等、極めて高い防御性能が詰め込まれています。

 

大きな空堀

 

いきなり度肝を抜かれるのがこの空堀。
深いのですよ!大きいのですよ!
うわ、ここモロにヤバイわ!みたいな。

 

ちなみにこの空堀、古墳の墳丘を利用して作られています。
つまり元々こんもり盛られていた古墳の周囲を掘って削ってあるのね。

 

ん~さすが生き馬の目を抜く戦国期。
古墳へのリスペクトなんざ微塵もねー!(笑)

 

恐怖の枡形虎口

 

で、見て欲しいのがその先。
分かりますかね、通路がほっそ~くなってるのが?

 

これね片側が急斜面、片側が空堀の斜面になっているので、その頂点にある通路は必然的に細くなるのですよ。
当然攻め手はこの細い通路に沿って縦1列になって進むしかない。
それに対して守備側は横一線の形で迎え撃てます。
するとどうなるか?
一網打尽です。
100%突破不可能。
なすすべなくバッタバッタやられるしかありません。
攻城戦はいつだって圧倒的に城側が有利なのです。

 

櫓台

 

こちらは先に見た空堀の上にある高台。
古墳の墳丘頂部です。
ここには櫓が設置されていたそうで、戦闘時には高い足場から周囲一帯の状況をざっと見渡すことができました。

 

これも恐怖ですわな。
攻め手にすれば、どこから攻めても丸見えで即対応される訳ですから。
しかも上からビュンビュン弓矢を射掛けられたら、もう尻尾を巻いて逃げるしかない。

 

腰曲輪

 

山の斜面にはこのような腰曲輪というスペースも設けられています。
腰曲輪とは細長く作られた平地ですね。
ここに守備兵を配置して、登って来る敵を迎撃するのです。

 

これも鬱陶しいですよ。
実際はほんの小さなスペースしかなくても、攻め手にしたらどのくらい平地があって、どのくらい守備兵が潜んでいるのか分からないのですから。
一気に力押しできるのか、無理に突っ込んだらドエライ被害を被るのか、非常に判断に迷います。
一歩間違えりゃ死ぬのは自分ですからね。

 

つづら折りの道

 

道もエゲつないですわな。
ご覧の通りのつづら折り。
攻撃側はここをわざわざ列になって折れ曲がりながら登って来るのです、それも横腹を見せながら。

 

圧倒的に不利ですね。
まともに進んだらやられ放題でしょう。
いやー城攻め怖い!

 

本丸前の枡形

 

そして本丸直前。
画像の右側が本丸、左の細い道がそこに繋がる道。

 

ここもやられ放題ですね。
見りゃ分かりますが、敵はこの道を1列になって側面を見せながら進む形になります。
そこを弓矢や長槍で横からザクザクザクー!
わざわざやられに突っ込むようなもんです。

 

本丸

 

ゴールの本丸。
ここまで来れば攻城完了。
おめでとう!(←?)

 

広いですよーココ。
本丸なんでね、兵や武器をどっさり収容できるよう、城内で一番大きなスペースが確保されています。
高台のせいか吹く風が実に心地良くて爽快♪

 

本丸の櫓台

 

そんな本丸の中央にぽこっと盛り上がった丘があります。
櫓台の跡なのですが、これも元々は古墳でした。

 

今でこそ古墳と言えば、かけがえのない文化遺産なんですけどね。
当時はそんな意識は皆無だったのでしょう。
お、ここ盛り上がってるから便利、くらいの感覚で利用したんでしょうね。

 

本丸の脇の断崖

 

本丸の片側は切り立った斜面になっています。
地形的にここから攻め登るのはまず不可能。
なのでこちら側には特に防御施設はありません。

 

これはお城用語で言うところの「梯郭式(ていかくしき)」と呼ばれるスタイル。
こうして自然地形を利用することで片面の安全を確保し、守備をもう片面だけに集中させることができるのです。
以前に紹介した上田城なんかもその典型で、この仕組みを利用して少ない兵で徳川の大軍を2度も退けています。

 

本丸と犬走

 

小さくても恐怖の仕掛けがぎっちり詰め込まれている和田山城。
やべーですよーココ。
歩いているだけで生きた心地がしませんよ。
どうか見学の際には心臓バクバクさせながら攻め登ってください。

 

同じ山に続く形で古墳群もあります。
きちーんと整備されてて案内板もあるので、散歩気分で見学できます。
お城とはまた違った歴史ロマンが楽しめますよ!

 

 

和田山城跡

住所:石川県能美市和田町

 




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