松任ふるさと館 その2 遊び心満点の贅沢さに惚れ惚れ
2022年01月10日
松任駅前にある松任ふるさと館。
前回は門から御上の間までを見てきました。
今回はそのさらに奥を見て行きます。
まず最初に目にするのが、この屋敷の最上級の部屋である「朝顔の間」。
派手なんですわ、これが。
壁はビビッドな弁柄色、中央上部には透かし欄間、最奥には大振りな床の間。
贅沢感ハンパない!
特にこの欄間がエグイほどいいですわ。
松と梅の木の間を悠々と飛翔する鶴。
この構図、「商売」(松梅=しょうばい)を暗示しています。
鶴はもちろん長寿と永い繁栄の象徴。
つまりこの欄間には、「商売が長く成功し続けるように」との願いが込められているのです。
ついでに隣の部屋の欄間も見て下さい。
こちらは竹と亀。
亀はよく見ると親子亀もいます。
竹は「生命力と成長」を表し、亀はご存知の通り長寿の証。
子亀は「銭亀」と呼ばれ、「富」を象徴しています。
つまりここでも「末長い家の繁栄と富の継続」を願っているんですね。
さすがはお金持ち!
ゼニへの執着心、ハンパありません!
この床の間も見事じゃないですか。
一見フォーマルだけど、よく見ると所々に「崩し」を入れた不定形なしつらえ。
一番目を引くのは中央の床柱ですかね。
美しい白木の表面をつらつらとした光沢が覆い、下部はわざと木目を出して色味にさりげないアクセントが付けられてて。
床の間という空間が持つどこか厳しい緊張感をさり気な~く和らげてくれる、そんなデコレーションが施されています。
ちょっと下も見てみて下さい。
畳の一角に不自然に欠けた場所があります。
これは炉畳(ろだたみ)と呼ばれるもので、この畳をめくると炉が現れます。
炉とはお茶を点てるための設備。
つまりこの部屋は茶室としても使えるようになっているんですね。
いや~風流だ!
こちらは朝顔の間の横にある廊下。
今は引き戸が入れられててクローズされていますが、本来ここは開け放しの縁側だったと思われます。
下に敷かれている畳も、恐らく元々は板床だったはず。
ここもね、遊び心があるのですわ。
何が遊び心って、天井ね。
垂木の色をご覧ください。
明・暗を交互に繰り返しています。
この2色が生み出すリズムがなんとも軽快!
そして軒先にずばっと伸びる一本杉。
現場で見れば分かりますが、メチャメチャ長いんですわ、この杉。
ゆえにダイナミックさが凄まじく、実寸以上の尺が感じられます。
お金がなきゃできない装飾ですね。
その奥にあるのが広縁。
その名の通り奥行きがたっぷり広く取られています。
ここも元は縁側ですね。
この先にいい庭があるのでね、その庭を鑑賞するためのスペースとしてこの空間が造られたのでしょう。
恐らく昔は今のように畳敷きではなく板張りだったはず。
この庭については次回詳細にレポートします。
マジいい庭ですよ!
その広縁を右奥に進むと、「福寿草の間」という部屋が現れます。
2部屋で構成されていて、左が床の間を備えた座敷。
こちらは先に見た床の間と比べてさらにラフですね。
床の間と床脇の間の床柱はナシ、床脇は床面を高く上げた琵琶床、左側には開口部をたっぷりと取った付け書院。
正式な形式を大きく崩した、独創的な構成です。
その横にあるのがこちらの部屋。
一見隣の床の間に付随する控えの間みたいにも見えるのですが、一点おかしな点があります。
それは奥の押し入れ。
よーく見ると、押し入れの床面が一段高くなっているのが分かります。
明らかに不自然。
ここ、元々は仏間ですね。
今は押し入れになっちゃってますが、ここには本来仏壇が収められていたのでしょう。
一段高くなっているのはそのため。
その仏壇がなくなり、そのままぽかっと開けとくのもみっともないので、こうして襖で閉じて押し入れに仕立て直したのでしょう。
この部屋から眺める庭がまたイカスのですわ。
生き生きと萌える植栽、豊富に配された自然石、人工的な灯籠。
そしてスカッと抜けのいい青空。
贅沢ですわな、庭のある生活。
うちの庭なんて見えるのは隣の家の壁だけ、奥行感ゼロですらかね。
こんな庭を眺めながらの生活に憧れるわ~♪
以上、松任ふるさと館の後半部分の様子について見てきました。
いいですよ~。
本当にいいですよ~この屋敷。
古建築好きにはまず間違いなくハートズキュン!な場所。
松任駅まで来る機会があればぜひ訪問してみてください。
次回は既にチラッと書いた通り、庭園を見て行きます。
様々な面白さが散らされた、池泉回遊式の名庭園。
どうぞ思いっ切りご鑑賞ください。
関連タグ >> 古民家 古建築 松任ふるさと館
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