加賀藩十村役 喜多家 エントランス編◆無駄な身分格差制度になんじゃコリャ?
2021年10月16日
十村役(とむらやく)ってご存知ですかね?
江戸時代に加賀藩が置いていた役職で、分かりやすく言えば庄屋さんです。
10ほどの村を統括し、村民の管理や田畑の維持・開発、税の徴収などを行いました。
イメージ的にはその土地の大元締めみたいな役割です。
そのお偉いさんの屋敷が今も残されています。
それが今回紹介する喜多家の屋敷。
地味~な村落の中にぽこっとあります。
入口となるのがこの門。
黒瓦の切妻屋根を乗せた棟門です。
十村役と言っても身分は農民ですのでね。
本来はこんな立派な門を持つことは許されないはずなのですが、そこは役得。
この屋敷は民家であると同時に役所でもあったので、このような門を構えることができたのでしょう。
その門をくぐると庭。
両脇に植栽を見ながら、奥の屋敷へと進みます。
で、どう?
なんか変じゃありません?
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、この道、よく見ると下っています。
普通はわざわざ低地に屋敷を建てません。
だって水はけ悪くなるしね。
でもなぜか、この屋敷はくぼ地の底にあるのです。
これにはもちろん理由がありまして、当時の加賀藩が置かれていた状況が大きく関係しています。
まずこの屋敷、役所であると同時に出城の役目も担っていました。
つまり有事の際の防衛拠点ですね。
ただそんな軍事施設が堂々とあるってのは体裁上ちょっとマズイ。
なんたって百万石もの国力を有する大藩なので、幕府からは常に強い警戒の目にさらされているのです。
そんな中で下手にこんな施設があることを知れてしまったら、どんな因縁を付けられるか分かったモンじゃない。
そこでこうしてくぼ地にこ~っそりと建てて、存在を隠したのです。
その下り坂な通路を進むと再び門。
今度は大振りな長屋門っぽい造りになっています。
これ、シッブイですわな~♪
入母屋屋根に分厚い茅葺がばっさりとかぶさってて、緑の苔がびっしり生えてて。
壁は上部を土壁、下部を下見板張り。
門口は左に寄せて、分厚い重厚感で訪問者をずっしりと包み込む。
貫禄と風格にあふれたえ~え門です。
そしてその先にいよいよ母屋が現れます。
出城機能を備えてるだけあってなかなかのサイズ。
仕立ては伝統的な吾妻建ち(あづまだち)。
吾妻建ちとは切妻の大屋根に、妻側を東面させて玄関を設けるスタイルです。(東=アズマ=吾妻)
屋根下は白漆喰で塗り、束と梁を埋め込まない真壁造り。
現代建築ではほとんど見られなくなりましたが、昔の家屋が残る村落では今でもポツポツ見られるオールドスタイル。
さて、ここで見て欲しいのが玄関。
画的にいい角度が確保できないのでこの画像じゃイマイチ良く分かりませんが、横に4つ並んでいます。
そして右に行くに従い、どんどん奥へと引っ込んでいます。
なぜか?
これ、4つそれぞれに用途が決まっていたのです。
向かって一番左が殿さま、つまり藩主である前田さん専用の入口。
その右隣りが家老クラスの入口。
その右隣りがお侍さん用の入口。
そして一番右端が平民用の入口、となっているのです。
こちらは殿さま用の入口。
ご覧の通り柵で囲われています。
この柵は江戸時代からあったものだそうで、柵で囲ってしまうくらい滅多に使わないって事だったそうです。
どのくらい使ってなかったかと言うと、なんとたったの2回。
そのたった2回のために、この入口は存在したのです。
殿さまの権威、恐るべしですな。
内側から見るとこんな感じ。
これまた画像じゃイマイチよー分からんのですが、かなりゆったりめに造られています。
この「ゆったり」、ちゃんと理由があります。
ここまで来た前田の殿さま、どんな状態だと思いますか?
なんたって殿さまですからね、歩いては来ません。
そう、カゴに乗ってるんですね。
なのでカゴごとがさっと入れるよう、広~いスペースが確保されているのです。
何様よ、一体?(←殿さまです)
ちなみにここは一般武士用の入口。
先に見た画像の左から3番目のヤツですね。
ご覧の通り、普通のウォークスルー形式。
カーストですな。
これが江戸時代の身分格差社会の実態。
なん~とも息苦しい、堅苦しい世の中だったんですね。
そして一番右側、平民用の入口。
現代人(?)もここが入場口となります。
はい、今回はここまで。
次回はいよいよ屋敷内部のレポートに進みます。
中もね、い~んですよ♪
やっぱ古民家ってのはそこにいるだけで楽しいですな。
ではまた次回!
関連タグ >> 古民家 古建築 加賀藩十村役 喜多家
コメントをする
北川尻の最新記事一覧

加賀藩十村役 喜多家 喜多蔵編◆まばゆいお宝の数々に身をよじれ
2021年10月23日
3回に渡ってレポートしてきた加賀藩十村役(とむらやく)喜多家。今回はいよいよ最終回、喜多蔵についてレポートします。喜多家・・・
カテゴリー:観光名所

加賀藩十村役 喜多家 室内編2◆最強の喰い付き所は「ココ」だ!
2021年10月20日
前回に引き続き喜多家邸内の様子を見て行きます。今回は家主が生活用に使っていたスペースです。まずは「溜りの間」。これは前回・・・
カテゴリー:観光名所

加賀藩十村役 喜多家 室内編1◆武士、ナンボのもんよ!?
2021年10月18日
前回は喜多家の門から母屋の入口までを見てきました。今回はいよいよ屋敷内部へと潜入します。まず最初に目にするのが「溜りの間・・・
カテゴリー:観光名所

加賀藩十村役 喜多家 エントランス編◆無駄な身分格差制度になんじゃコリャ?
2021年10月16日
十村役(とむらやく)ってご存知ですかね?江戸時代に加賀藩が置いていた役職で、分かりやすく言えば庄屋さんです。10ほどの村・・・
カテゴリー:観光名所
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 part2 等伯の神画が見られるゼ~♪
- グリル&ハンバーグNINO ハンバーグ&ソーセージ&から揚げ コスパ高すぎ!腹いっぱい食えます
- 旧橋本家住宅 ここに人間が住んでたのが信じられない
- 富山市ガラス美術館 展示編 難しいゾ~、ガラスアート
- 富山市ガラス美術館 建築編 富山という土地を表現した建築アート
- 白山町遺跡現地説明会 永遠に答えが分からないのが考古学
- 薬王院 温泉寺 「あいうえお」はここから始まりました
- 餃子のあひる 餃子定食 この餃子、エンドレスに食えるわ~♪
- 栄谷丸山横穴群 コウモリに注意してご鑑賞ください
- 富山市郷土博物館 復元模型のテクノな仕掛けがイカスのよ!
- 富山城跡 千歳御門~日本庭園周辺 庭園の読み解き、楽しいわ~♪
- 富山城跡 水堀~西の丸 石垣の詳細がよー分からん、謎多きお城
- 羽咋市歴史民俗資料館 渚の正倉院 氣多大神宮展 今しか見られない貴重なお宝がいっぱい
- 香満居 豚トロ黒胡椒炒め定食+担々麺 ボリュームも美味さも文句ナシの街中華
- 一乗谷朝倉氏遺跡 中の御殿跡・諏訪館跡庭園 こんなカッコエエ庭に憧れるわ~
- 一乗谷朝倉氏遺跡 南陽寺跡庭園・湯殿跡庭園 ちょっともったいないなココは
- 一乗谷朝倉氏遺跡 朝倉館跡 ここにはロマンが眠っています
- 一乗谷朝倉氏遺跡 雲正寺地区・平面復原地区 今も残る生々しい生活の痕跡
- 一乗谷朝倉氏遺跡 下城戸跡・上城戸跡 ここがディフェンスラインの最前線
- とんかつ勝亭 立山ロース定食 この肉、味もボリュームも極上だわ~♪