若宮八幡宮 末社編 その2 隠された本殿がここで見られる?
2021年10月04日
拝殿に至るまでの参道に8つの末社がズラリと並ぶ若宮八幡宮。
この末社ひとつひとつがね、い~んですよ♪
それぞれに個性があって、色んな見所があって。
前回はその内の4社を見てきました。
今回は残り4社を見て行きます。
まずは諏訪社。
ご存知長野県にある諏訪大社の分社で、祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)です。
この神さま、妙な経歴を持ってまして、武勇の神であるにも関わらずあっさり負けてます。
出雲にいた頃、建甕槌神(たけみかづちのかみ)という天の神に完膚なきまでやられて、信濃まで逃げたとされているのです。
ところがその後どうなったかというと、土着の有力神やガマの悪神を次々と打ち倒し、この地の支配神&武勇の神として崇められる事になったのです。
強いの?弱いの?ドッチ?って感じなのですが、まあ強いんですね、結論としては。
わたしの個人的な見解としては、「負けた」神話と「強い」神話は元は別々の話で、それが後世に強引にドッキングされてしまったのではないかと考えているのですが、まあその辺の考察は専門の学者さんにお任せします。
社殿は梁間二間・桁行三間の平入り、黒瓦を乗せた切妻屋根となっています。
オーソドックスかつコンパクトな造り。
建物が細身なせいか、全体の印象がシャープですね。
屋根もふわんと見た目にライトで、近寄りやすい、どこかフレンドリーな外観。
内部は奥に窪みがあって、そこに神棚が祀られています。
ご神体は丸鏡。
上部に掛けられている扁額は何ですかね?
色が完全に落ちてて、文字が書かれていたのか絵が描かれていたのかさえ不明。
多分赤外線でも当てたら浮き出てくると思うんだけど。
誰か機械持ってない?
そのお隣にあるのがこちら、春日社。
あの有名な奈良県にある春日大社の分社ですね。
祭神は建甕槌神、経津主神(ふつぬしのかみ)、天児屋根神(あめのこやねのかみ)、比咩神(ひめのかみ)の四柱。
建甕槌神は先述の通り、建御名方神をぶん投げた武勇の神ですね。
経津主神も同じく武勇の神で、建甕槌神と双璧を成す強さを持っています。
天児屋根神は言霊の神で、あの天岩戸伝説で天照大御神(あまてらすおおみかみ)を穴倉から引っ張り出したメンバーのひとりです。
比咩神は女性神を指す時の漠然とした呼び名で、ここの場合は天児屋根神の后神を指しています。
こちらの社殿も先に見た諏訪社同様、オーソドックスな造り。
黒瓦を葺いた切妻屋根に軒下は真壁作りの白漆喰、腰回りは平板張り。
奇抜さのない落ち着いた外観となっています。
何気に組み物(柱の継ぎ目)が見事ですね。
カッチリと美しく仕上げられてて、雲様の彫刻が施されてて。
軒下にさり気なく連続する支輪のカーブが実に優美。
内部の様子はこんな感じ。
部屋の奥の一角がへこんでいて、そこに木製の厨子が収められています。
扉がガッチリ閉じられているので、中の様子は不明。
春日大社なんかだと、4棟の本殿がずらずらーっと横一直線に並んでるので、ひょっとしたらここもそんな感じになっているのかもしれません。
厨子の中にはご神体が4つずらずらー、あるいは神棚が4つずらずらー。
横広の厨子がなんとなーくそんな光景を想像させます。
ま、開けてもらわんと分からんけどね。
社殿の横には神具庫が接続。
中に何が収められているのかはやっぱり不明。
何気に壁面にたすき桟が施されているのにお気づきでしょうか?
たすき桟とは以前静明寺の記事で取り上げた通り、進入禁止を意味する装飾です。
神具庫なんでね、中に入っちゃダメよって事ですね。
ダメって言われるとねえ、余計に入りたくなるわね(笑)。
続いて高良社(こうらしゃ)。
祭神は蛭子命(ひるこのみこと)、竹内宿禰公(たけうちすくねこう)、源頼義公(みなもとのよりよしこう)、藤原鎌足公(ふじはらかまたりこう)の4柱。
蛭子命は七福神でお馴染みの、えべっさんですね。
竹内宿禰は景行・成務・仲哀・応神・仁徳の5代の天皇に使えた人物で、約300年生きた(!)と言われています。
源頼義は鎮守府将軍などを歴任した武勇の人で、若宮八幡宮の創始の発起人です。
藤原鎌足は中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)と共に乙巳の変(大化の改新)を起こした人物です。
社殿は黒瓦の切妻屋根。
全体のサイズはやや小振り。
やけに高い基壇が特徴的ですね。
おかげで一番手前にある向拝柱が妙ににょっきり長くなっちゃってます。
そしてもうひとつ特徴的なのが、屋根上両端にあるシャチホコ。
よく見ると大棟には青海波模様のデコレーションもされています。
これらは共に水の加護を意味し、火事除けのまじないとされています。
そんな社殿の前に謎の石。
いかにも何か意味ありげに置いてあるので、何か意味があるんだろうけど、その説明が一切なく、謎。
なんやろね?
ひょっとしたらですが、竹内宿禰が鬼に積ませたと伝わる神籠石(こうごいし)のつもりかもしれません。
あるいは真ん中がくぼんでいるので、かつては手水鉢だったとか。
ん~~~・・分からん・・・・(悩)。
そして最後、稲荷社。
祭神は豊受比咩神(とようけびめのかみ)と大田神(おおたのかみ)。
通常稲荷神社の祭神は宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)とされることが多いのですが、ここで祀られている豊受比咩神はこの宇迦之御魂神と同体だそうです。
大田神は天孫降臨の際、天の神を地上へと道案内した神です。
こちらの社殿、超ミニマム。
社殿というより神棚と呼んだ方がしっくり来るくらい。
ただそれでもひとつひとつの意匠は手を抜かずに作られており、細部まで精巧に仕上げられています。
デアゴスティーニも真っ青!(←?)
このミニ社殿、縁起書きによると『本殿落成を祝して十分の一の縮尺にて制作したのがこの稲荷社神殿です』となっています。
ここで書かれている本殿と言うのは恐らく若宮八幡宮の本殿の事を指していると思われます。
ところが実際見比べてみると、この稲荷社の社殿と若宮八幡宮の社殿、全然造りが違います。
え?どこが縮小版?って感じ。
これ、非常に紛らわしくて分かりにくいのですが、境内から見える建物は拝殿と呼ばれるもので、本殿ではありません。
本殿があるのはこの拝殿の向こうです。
つまり稲荷社社殿のモデルは、参拝者からは見えない場所にある建物なんですね。
って事で若宮八幡宮の本殿が見たい~って人、この稲荷社社殿をじーっと見て、これのでっかいの~~~と妄想して、ガマンしてください。
以上、若宮八幡宮の参道に並ぶ末社の様子を2回に渡って見てきました。
どれもが単独で神社にできるくらいしっかりした社殿を持つ末社群。
やっつけ的に同じ造りの物を横一列に並べるんじゃなくて、ひとつひとつ個性が際立っててキラッキラ。
いいですよ~、ここの末社は。
若宮八幡宮に参拝の際には、どうかこれら末社のお参りも忘れずにしていって下さい!
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