
道神社 富山県指定有形文化財の建物がたったの130円?
2021年09月15日

氷見の山間の一角に忘れ去られたような神社がぽつんとあります。
道神社です。
明確に「ココに行こう!」という意思がない限り、まずたどり着く事はないような場所です。
創建年は不明。
江戸時代の記録に名前が出てくるそうなので、少なくともそれ以前からはあったようです。
祭神は猿田彦神(さるたびこのかみ)。
「導き」を司り、航海の安全を守る神です。
恐らく元々のルーツは地元漁師の守護神として祀られたものだったのでしょう。

まずは入口。
ガツンとそびえるのは石造りの大鳥居。
内転び(上に向かってすぼませた形)の丸柱に、笠木(天頂に横に渡された部材)をスラリと逆反りにさせた明神鳥居です。
比較的どこででも見かける地味~なエントランス。
なんだけどね、この先に素敵なものがあるのですよ♪

それがこの拝殿。
ここがいきなりこの神社のクライマックス。
カッコエエー!
形は方形(ほうぎょう・正方形)、屋根は杮葺 (こけらぶき)。
古びた木の色がシックでシックで、ひたすらシックで。
深みのある風合いはただもう見事の一言。
ジャパニーズ・オールド建築の美がビンビンに感じられる建物です。

この軒下の組み物なんかもシビれますわ♪
寸分の狂いもなくガッチリと組み合わさった技巧的な造形。
アートですわ、アート!
そしてこの組み物、よく見ると三段に突き出ています(四段に見えるけど根元はカウントしません)。
いわゆる三手先枓栱(みてさきときょう)と呼ばれるもので、なんで三段にしてあるのかと言うと、上の屋根を支えるため。
ここで改めて前の画像を見返してもらうと分かるのですが、この建物、身に対して屋根がやたらデカく、その結果軒下が異様に長く突き出しています。
これを支えるにはそれ相応の耐負荷力を持った構造が必要なんですね。
それをやってるのがこの三手先枓栱なのです。
力持ちなんですよ~、この構造。

この垂木の列もイケてますわ~♪
垂木ってのは屋根下にずらずら並んでる角材なんですけどね、この規則正しさがタマランじゃないですか!
しかもこれ、よーく見ると放射状に並んでいます。
扇垂木(おうぎたるき)ってヤツです。
これも技術いるんですよ。
角度をきちんと計算して配置していかないといけない上に、長さも1本1本調整しなきゃいけませんからね。
メッチャクチャ面倒臭いです。
でもその分、出来上がった時の美しさは格別!
これができりゃー宮大工として一人前、と言われるほどの超絶技巧です。

杮葺の屋根もい~いですな~♪
杮葺とは木の皮で葺いた屋根です。
材にはヒノキの一種であるサワラが使用されており、30×15cmに成形した樹皮を少しずつずらしながら貼り合わせてあります。
この樹皮が放つ枯れた美しさが独特で、じんわりと心にしみるようなワビサビ感が楽しめます。
やっぱいいな~日本建築♪と心から感じさせてくれる屋根です。

ところでこの拝殿、なんとなーくお寺の建物っぽい気がしませんか?
それもそのはず、この拝殿はかつてお寺のお堂でした。
元々は天平寺(てんぴょうじ)ってお寺の開山堂(かいざんどう・お寺を開いた人を祀るお堂)として、1801年(江戸時代後期)に建てられました。
それが1874年(明治時代初期)に売りに出されて中田村が取得、移築して道神社拝殿として生まれ変わったのです。
その時の売却金額、なんとたったの『130円』!
買ったのにーー!!!
130円ならわたしが買ったのにーー!!!
あと147年待っててくれれば買ったのにーー!!!(※待てません)

画像きちゃなくてゴメンナサイ。
こちらは拝殿内部の様子です。
見ての通りカラッポ。
見事なくらいカラッポ。
普通はもうちょっと神具やらなんやら色々置いてあるもんなんですけどね。
神棚すらありません。
って事で裏に回ります。

本殿はご覧の通り別棟。
しかも建物のテイストがアレ?ってくらいガラリと変わります。
切妻の反り屋根、大棟上には千木(ちぎ・ツノみたいなV字型のヤツ)と鰹木(かつおぎ・大棟上に横に置いてある棒みたいなヤツ)がビシッ。
バリバリの神社形式の建物。
建てられたのも比較的最近の様ですね。
まだ建材がピカピカしてます。

中には神棚と宮殿。
中央に祀られている丸鏡は、祭神である猿田彦神のご神体ですね。
脇には赤と青の狛犬、さらに手前には四神獣を描いた幕を垂らした4本の槍。
神域感出てますな。
拝殿内の素っ気なさとは大違い。
神を祀る場としてのエネルギーに満ちた荘厳な空間です。

境内の脇に回ると、こんな妙なものがあります。
左に長方形の石、右に鉄鍋。
詳しい由来については鉄鍋の上にある案内板に書かれていて、簡単に説明すると以下の通り。
・長方形の石は元々は石橋。でもいらなくなったので、ここに持ってきて飾った。
・鉄鍋は開山堂のすぐ近くにあった伊須流岐比古神社( いするぎひこじんじゃ)の神事で使われていた。これもやっぱりいらなくなったので、譲り受けて飾った。
って事だそうです。
さらに案内板にはあともうひとつ、開山堂の「宝篋印塔(ほうきょういんとう)」ってのもあると書かれています。
でもこれだけないんですわ、なぜか。
あり~?と思って探してみると、ちょっと離れた所でぽこっと見付かります。

それがこれ。
狛犬のすぐ脇です。
ご覧の通り思いっ切り傾いてて、ボロボロの朽ち朽ち。
本当はてっぺんに相輪(そうりん)と呼ばれるアンテナみたいなのが乗っかってるはずなのですが喪失。
とにかく疲労感ハンパない。
コレ、覆屋でも作って囲った方がいいんでね?
このまま置いといても劣化する一方ですわ。

拝殿がビンビンにカッコイイ、道神社。
いいですよー。
マジでシビレますよー。
日本古建築の美、どう心行くまでご堪能を!
それにしても。
130円は安いな~。
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