安土城考古学博物館 第2展示室編 ここはお城ジオラマのワンダーランド
2021年07月26日
安土城考古学博物館、前回は古代をテーマにした第1展示室を見てきました。
今回は中世の戦国の城をテーマにした第2展示室を見ていきます。
ここ滋賀県は常に戦略上の要所でした。
北と東との交通の結節点であり、西の京とは琵琶湖を利用した水運の動脈で繋がっています。
ゆえにここを押さえることは、天下を取る上で必須の条件だったのです。
そんな環境の中、防衛のために多くの城が築かれたのは必然の流れであり、全国的にも稀有なお城銀座が生まれたのです。
まず入口に現れるのがこちらの安土城ジオラマ。
サイズがサイズなのでスッゲー迫力です。
これがもー感動なのですわ。
安土城に行った事がある人なら知ってると思うのですが、意外と立入禁止のエリアってのが多いのですよ。
その場では、あーこの先どーなってんのかなー?ってウズウズするしかないのですが、このジオラマを見れば一目瞭然。
へー、ここでこうなって、こう繋がってたんだー、ってのがリアルに理解できます。
しかも現場はもっさり樹木で覆われててメチャメチャ見通しが悪いのですが、このジオラマは輪郭がくっきり浮き出てて明快。
城歩きで吐き出せなかった消化不良感を、スカッと吹き飛ばしてくれます。
その斜め前にもジオラマ。
背後に山を構えて敵の侵入を前方だけに限定させる梯郭式(ていかくしき)山城のモデルです。
ここではお城の用語を解説しています。
「壁土塁」「連続竪堀」「堀切」「畝堀」「障子堀」「枡形虎口」「平虎口」「馬だし」「土橋・木橋」「矢倉台」といった、お城の構造を見る上でのキーワードが模型の配置の中で見られる仕組みになっています。
手前のボタンを押すと該当箇所がピカッと光って、ほーほーなるほどコレがそうなのね、みたいな感じ。
お城初心者には勉強になり、お城の達人にはふん知ってるわ!という優越感に浸れる(←?)、そんな素敵な展示です。
その横にはまたもやジオラマ。
しかも今度のは実物大です。
このジオラマは越前の朝倉氏に伝わる資料「築城記」という、お城づくりの教科書を元に再現したものです。
ご覧の通りかなり大雑把で、え?これでお城??って感じ。
でも元々お城ってのはこんな姿をしていたんですね。
石垣や天守閣なんかが組み込まれるようになったのは戦国期のそれも後期になってからの事で、それまではこんな感じの簡易でラフな駐屯基地に過ぎませんでした。
そんなお城原初の姿を再現したのがこのジオラマなのです。
まだまだ続きますゼ、ジオラマ。
こちらは観音寺城のジオラマ。
かつて守護大名としてこの近江の地を治めた、佐々木六角氏が築いた城です。
注目なのは規模。
なんと山ひとつを丸々城塞化してあるのです。
あんまりデカいと防衛線が伸び過ぎて守るの大変だろって気がしないでもないですが、それはそれとしてこの規模のお城は当時としては破格のサイズでした。
そしてこのお城、信長が安土城を築く際にモデルにしたと言われています。
確かに安土城も山を丸ごとお城にしてありますしね。
その隣にもジオラマ。
浅井氏の小谷城です。
梯郭式と連郭式(曲輪を並列させるスタイル)をミックスさせたような構造。
このお城、クソ真面目に真正面から攻めた日にはどうやったって落とせません。
でも実際には落とされています。
やったのは秀吉。
まさかの正面無視の側面攻撃を仕掛け、あっさり落城させました。
これによって浅井氏側は総崩れとなり、あえなく滅亡の運命をたどったのです。
戦国の世に消えたお城の中でも、最もドラマチックな物語を持つお城のひとつです。
血なまぐさいお城から一転、今度は中世の村の様子のジオラマ。
平和~な光景です。
すぐ近くに琵琶湖を持つ近江周辺の村々は、こんな形で水路網を整備して生活を送っていたようです。
田んぼの開発もしやすかったでしょうね、水を引っ張るという意味では。
ただ平地はそんなに多くないので、広域展開は難しかったでしょうけど。
そんな村の遺跡から出てきたものがこちら。
皿や硯、壺など、昔の生活の様子を伺わせる品々です。
おお~昔の人、こんなモノ使ってたのかー、みたいな。
でもこれ、実は全部ゴミです。
いらなくなったから捨てられ、そのまま土の中に埋もれたのです。
それが今になってゴロゴロ出てきて、時代考証のための貴重な資料として展示されているのです。
ゴミを捨てる時は注意してくださいね。
うっかり変なモノを捨てると数百年後に掘り出されてさらしものにされますよ!
「信長研究室」なんてスペースもあります。
そんなに多くはないけど、信長について書かれた資料がイロイロ。
結構人気あって、絶えず誰かが座って何か読んでます。
右側に見える3本の棒は長槍。
左から順番に織田・武田・北条のもの(の復元)。
画像じゃ途中で切れちゃってて分かりませんが、かなりの長さ。
一番長いのは織田の槍で、4メートルくらいはあります。
横に向けるとメッチャ重そう!
当然振り回しては使えないので、最前線専用の突撃用の槍として使われました。
最後にもう1回安土城のジオラマ。
ご覧の通り4つ並んでいます。
このジオラマ、趣向が面白くて、城の正面の大手道の復元の様子を再現しています。
今見られる大手道は実は平成になって調査・整備・復元されたもので、以前の姿は全く違ったものでした。
その変遷を4段階に分けてジオラマ化してあるのです。
右から順に「発掘前」→「発掘中」→「整備後」→「築城時」の姿。
ビフォー・アフターでどんな感じで様子が変わっていったのかが分かります。
これ見てもう一度安土城へ行くと、きっと最初見た時と全然印象が変わりますよ!
実は他にも何点かジオラマとか模型があるのですが、撮影不可なのでスキップ。
興味のある人は現地に行って直接自分の目でご覧ください。
精巧に造り込まれたお城ジオラマのクオリティの高さに思わず息を飲みますよ!
お城ファンなら喰いつき所満載の安土城考古学博物館。
い~いトコです。
本当にいいトコです。
お城に興味ないって人もぜひ一度ここに来て、その面白さを体験してみてください。
関連タグ >> 美術館・博物館 安土城考古学博物館
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