能美ふるさとミュージアム 建築に隠された仕掛けを解読する
2021年05月29日
昨年10月にオープンした能美市の歴史・自然・民俗を学ぶことができる博物館『能美ふるさとミュージアム』。
田んぼと小山と民家の中に唐突にぽこっとある謎な施設です。
ここ、すげーいいのですよ。
ザ・スタイリッシュな建物、そして充実した展示内容。
建築好きや古代ロマンが好きな人には間違いなく直球ド真ん中な、ワンダフル・ファンタスティック・スーパースぺクタル・悶絶失神・ワールドです。(←しつこい)
そんな能美ふるさとミュージアムの様子を今回から3回に渡ってレポート。
1回目は建物を見て行きます。
まず最初に見て欲しいのが、この入口手前にある六角形の建物。
なんで六角形?と一見意味不明なのですが、実は隠された意味があります。
この能美ふるさとミュージアムの前身施設に能美市立歴史民俗資料館ってのがありまして、そこの展示施設が六角形の形をしていたのです。
その形を受け継いだんですね。
ちなみになんで六角形だったのかと言うと、古墳から出土した「六鈴鏡(ろくれいきょう)」をモチーフとしたからだそうです。
この建物は今もまだミュージアムの裏に残っています。
興味があったら見てみてください。
なお肝心の六鈴鏡、六角形じゃなくて円形の形をしています。
一応、ツッコんどきます。(←?)
そしてもうひとつ目に付くのが、外周沿いに巡らされたこのウッドパネル。
一見庇を支える柱にも見えますが、それにしては不自然に数が多い。
これ、きっと森の表現ですね。
このウッドパネルひとつひとつが森に生えている木であり、その奥の黒い壁は木立の間の陰を表しているのでしょう。
こうする事で背景の景色に建物を溶け込ませているんですね。
ここで改めて引いた場所から建物を見てみると、バックに小山があります。
山なので木もたくさん生えています。
ここにガラスやコンクリートでバッシバシに固めた建物を置いてしまうと、思いっ切り景観と建物が対立しちゃうんですね。
そんな人工感を吸収させるべく仕込まれたのが、先に見た連続するウッドパネルであり、黒い壁なのです。
建物もよく見ると何気に平屋建てになっていますが、これも同様な思想に基づいています。
ここに2階建てを越えるような高い建物を置くと、主張が強くなり過ぎて背景と喧嘩してしまいます。
だからこのようなフラットで形状的にもシンプルな平屋の形式を取ってあるのです。
こちらは逆側からの眺め。
先に見た側とは全然違う造りになっていて、ちょっと素っ気ない印象。
でもこれ、裏側だから手を抜いている訳ではありません。
これはこれでちゃんと狙いがあります。
ポイントは大きく開いたガラス面。
この大きな開口部によって室内にいても中と外とが視覚的に繋がり、空間が切れ目なく連続して感じられるようになっているのです。
要は内側からの視線を意識して設計されているんですね。
ついでに雨水受けを見てみて下さい。
お気づきでしょうか?
古墳です。
前方後円墳ですね。
その向こうには、この画像だと小さくてちょっと分かり辛いですけど前方後方墳も。
遊んでますな。
めちゃめちゃ遊んでますな(笑)。
そしていよいよ内部へ。
こちらはロビーの様子です。
面積的にも高さ的にも、そして明るさ的にも、伸びやかで大きな白い箱。
この「明るい」「伸びやか」「白」ってのが次に繋がるキーワードになります。
これを頭に入れた上で次に進んでください。
その先にある展示スペースへの入口。
ご覧の通りいきなりの黒。
そして狭く、閉塞的。
直前のロビーとは真逆の環境。
これは別世界へと誘う、ワープトンネルを表しているんですね。
この黒いトンネルをくぐることで、現実世界からミュージアムの描くアナザーワールドへと飛んで行くのです。
これと同じ仕掛け、鈴木大拙館なんかにもあります。
あそこ、入口入っていきなり薄暗い直線廊下を歩かされるのですが、意図は同じです。
現実世界から鈴木大拙の深淵な異世界へとトリップさせるためのトンネル、それがあの廊下の狙いなのです。
その先にあるのがこの展示室。
暗いトンネルを抜けた先に降り注ぐいきなりの大光量。
先に見た大きなガラス面で外と繋がっている事が実感できる、あの場所ですね。
ここで改めて今いる場所が「明るい」という事を意識してください。
そしてここでは能美の「今」が展示されています。
今度は一転の「暗」。
こちらは古墳時代の展示がされている部屋です。
他にも縄文・弥生時代や江戸時代などを紹介した展示室があるのですが、それらも全て窓のない「暗」の部屋で統一されています。
共通するのは「過去」。
これはタイムスリップのイメージですね。
「今」の展示室では太陽から降り注ぐ生の光を感じて「今」を実感し、「過去」の展示室では暗い空間をさまよわせる事で時空を越えた「過去」を体験させているのです。
過去の部屋を歩いていると感じる、漠然とした幻想感。
それらは全ては仕組まれたトリックなのです!
人間の深層心理にさり気なく切り込んでいる能美ふるさとミュージアム。
素晴らしいですわ!
もーヤられっ放しですわ!
建築が生み出す異次元世界。
どうぞそんな部分にも注目しながら回ってみて下さい。
次回は展示について紹介します。
なんたってわたしの大好きな縄文式土器や古墳関連がゴロゴロですからね。
ドキドキが止まりませんよ!
関連タグ >> 美術館・博物館 近代建築 能美ふるさとミュージアム
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