神宮徴古館 丘の上に突如現れる伊勢のベルサイユ宮殿
2021年05月19日
伊勢のベルサイユ宮殿、それが神宮徴古館(じんぐうちょうこかん)です。
何の予備知識もなしにここへ来ると、マジびびりますよ!
小山の森の中にすっと入り、木立の続く坂道をぐいーんと上ると、いきなりズバッと現れるんです、コレが。
ほぼ不意打ち。
うわ!なんじゃコリャ?みたいな。
そのくらいに強烈なインパクトです。
ここ何かと言うと、伊勢神宮の式年遷宮(しきねんせんぐう・20年に1回社殿を新設して入れ替える儀式)用に作られた御装束神宝(おんしょうそくしんぽう)の展示館なんですね。
御装束神宝とは神さまに捧げる衣服や服飾品・調度品等の事で、これらは式年遷宮の際、つまり20年に1度、ごっそりと作り替えられます。
という事は見方を変えると、前回作られた御装束神宝は全て役目を終えて下げられるという事です。
それらのいわば「お下がり品」を展示しているのが、この神宮徴古館なのです。
お下がり品と言っても元々は伊勢神宮の神さまに奉納された品々ですからね。
そのクオリティは最高水準。
見ているだけでため息が出てきます。
が、これらのレポートはスルー。
だって館内は写真撮れんし。
ってコトで、今回も建物「のみ」見ていきます。
まずこの前庭ですわね。
左右対称、芝生をビシッと植えたガッチガチの西洋式整形庭園。
中央に丸い植木がありますが、これは明らかに噴水のイメージですね。
この建物が作られたのは明治36年、ひょっとしたら当時はインフラ的に噴水用の水を引っ張ることができなかったのかもしれません。
なので植木で代用した、とそんな事情が想像されます。
そしてこのエントランスですわ。
二柱式の入口がばっと口を開け、内部は奥に向かって半円形のゆるやか~なカーブ。
そして柱。
よーく見ると根元と上とで太さが違います。
エンタシスです。
ギリシア神殿なんかで見られる形状ですね。
破風(はふ)の部分はブロークンペディメント。
破風とは屋根下の三角形の部分で、西洋建築ではペディメントと呼びます。
ただこの三角形、見ての通り底辺部分が切れて(ブロークン broken)ます。
これがブロークンペディメント。
ちょーっと定型を崩したオシャレな形です。
窓の装飾もイケてますわね~♪
形状は西洋建築ではスタンダードなアーチ窓。
教会なんかだともっと縦長のものが多いのですが、ここは宮殿がモチーフなのでずんぐりと短め。
上部にしつらえられた半円形の装飾は菊の紋章ですね。
伊勢神宮は皇室との縁が深いので、そんな繋がりを暗示させているのでしょう。
窓の両脇にはピラスター(疑似柱)。
ピラスターとはギリシア神殿の建築を起源とする装飾で、これによって窓の存在感がグッと強調されています。
一方でピラスター自体の装飾はシンプルで、石のタイルを素っ気なくぺたぺたっと貼り付けただけ。
本家のギリシア神殿だとここにはフルーティング(縦の溝)が入るんですけどね。
こちらは翼廊のファサード(正面)。
ここもガッチリ西洋建築してますね。
壁は白のタイルをびっしり連続させた、疑似レンガ壁。
中央にはアーチ形の入口を配し、その上部にはコーニス(でっぱり)をカクカクと走らせて変化を付け、さらにその上にはチェスの駒ような形をしたバラストレード(欄干)をずらり。
いーやーカッコイイわ!
できれば上部に彫刻とかレリーフなんかがあると、さらにすごみが増したんですけどね。
多分明治時代当時、まだそれを作れるような職人さんがいなかったのでしょう。
でもそれでも十分カッコイイ!!
ちょっとだけ中も覗いてみます。
こちらは館内で唯一撮影が許可されている、中央2階の広間。
どうですか、この空間美!
高く取られた天井がすかっとした抜けの良さを生み、折れ線を描く変則的なアーチが力強さを生み。
窓から差し込む光が作り出す陰影はしっとりと柔らかく、でも全体には凛とした緊張感があって。
格調高さと神秘性が重なり合った独特の異世界感。
素敵だ~♪
館内ずっとこんな雰囲気なのですよ。
そしてこの異国情緒あふれる空間の中に、日本の伝統美の結晶である御装束神宝がずらーっと並んでいるのです。
和と洋の不思議な共存。
なんか頭がクラクラしてきますよ!
和製ベルサイユ宮殿の面白さが思いっ切り堪能できる神宮徴古館。
このクオリティの高さはもう絶品!
伊勢まで来たら絶対に観て欲しい、素晴らしい建築です。
どうか何が何でも意地でも時間を作って、しっかりと見てってください。
楽しくて楽しくてタマランですよ~♪
関連タグ >> 美術館・博物館 古建築 倭姫文化の森 伊勢神宮
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