兼六園 梅林 名園の梅景色の中に日本庭園の楽しさの秘密を探る
2021年03月13日
さくら名所100選にも選出されている兼六園。
でもここ、桜だけじゃなく梅も楽しめるんです。
それが園内にある梅林。
その名の通り梅の木が一面に植えられています。
場所は金沢神社のすぐ近く、随身坂口を入った所です。
開花期に訪れると、ここだけ梅の花が咲き乱れているのですぐに分かります。
このエリアが梅林として整備されたのは比較的最近の昭和43年で、「明治百年記念事業」として北野天満宮や大宰府・偕楽園といった全国の名所から梅木を集めて造られました。
その結果約200本(白梅130本・紅梅70本)の木が植樹され、現在の形ができあがったのです。
なので白加賀を中心に青軸、摩耶紅梅など様々な品種が混栽されており、まさに百花繚乱。
ソメイヨシノが大部分を占めて一色に染まる桜園とは、全く違った趣きが楽しめます。
では個別にいくつか見てみましょう。
まずこちらは園内で一番多く植えられている白加賀。
枝ぶりが独特ですね。
指を曲げて広げてわきわきっと伸ばしたような、力強いうねり具合。
その先端に小さな花が控え目にぽつぽつ。
男性的な樹勢と女性的なつつましい花との落差が楽しい品種です。
道知辺(みちしるべ)。
名前がいきなり素敵ですわね。
特徴的なのはその花の色で、ピンクの強い花弁を付けます。
枝ぶりは逆円錐形。
空に向かって広がるように枝を伸ばし、花の数は多めです。
摩耶紅梅(まやこうばい)。
枝ぶりは半球状、全体にバランス良く広がり、その先に赤い小さな花をぽつぽつ咲かせます。
花の色は道知辺よりさらに赤味が強く、燃えるような色合い。
園内でもひときわ目立つ、力強い生命感にあふれる木です。
豊臣秀吉が愛し命名した梅としても知られています。
青軸(あおじく)。
名前は青だけど花は白です。
枝ぶりは半球状、非常に密度が高く、びっしりと入り組んでいます。
それに対して花の咲き具合は粗で、見た目に野暮ったくややうるさい印象。
でもその田舎臭さが逆に味になってて、不思議な親しみやすさのある木です。
豊後(ぶんご)。
大分県の県花として有名な梅です。
園内の梅の中で恐らく一番大きく、そこにあるだけで存在感が強烈。
幹の伸び方は縦・横・斜めと不規則で、かなりわがままな(?)樹姿。
この日はまだ開花しておらず、花が見られなかったのが残念。
ちょっと庭の造りも見てみましょうか。
こちらは遣り水。
明らかに川の瀬を模しており、カーブの内側には河原が、外側には断崖が表現されています。
何気に石の色を散らしてあるのにお気付きでしょうか?
砂岩・安山岩・花崗岩と数種類の石を使うことで視覚的に変化を付け、見た目を華やかにしています。
庭園鑑賞を楽しくするための工夫です。
地面の起伏にも注目。
のっぺり平たんな場所はなく、うねうねと盛り上がったり下がったり。
苑路もぐにゃぐにゃ曲げてアッチ歩かせてコッチ歩かせて、とにかく変化変化。
徹底的に「単調」を排し、次々と新しい景色が現れるように造られています。
これらは大自然の再現ですね。
山の中を歩いていて、コピー機のように同じ景色が連続するって事はありえないでしょ?
「自然の中にいる自分」を実感することに重きを置くという、日本庭園の精神性が表されています。
そして最後に見て欲しいのがこちら、舟之御亭(ふなのおちん)。
御亭とは庭園内に設けられる休憩所みたいなものです。
しかもこの御亭、ご覧の通り舟の形をしています。
かなり珍しいケース。
遊び心ですね。
全ては遊び心。
庭という空間を心から愛で楽しむための粋な仕掛けです。
兼六園の梅林。
今が見頃です。
年に一度の美しい景色、どうぞこの期を見逃さずご鑑賞ください。
なおこの梅林、一斉に咲いて散ってしまうソメイヨシノばかりの桜園と違って、色んな品種が時期をズラして咲いてくれるので、訪れるタイミングによって様々な表情が見られるのも楽しみのひとつです。
1度と言わず2度でも3度でも通って、変わりゆく梅の眺めを楽しむってのもいいですよ!
関連タグ >> 兼六園 庭園
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