旧加賀藩士高田家跡 現存する江戸時代の長屋門を満喫
2021年02月10日
長町武家屋敷跡の外れに興味深い施設があります。
旧加賀藩士高田家跡です。
旧加賀藩士高田家とは、その名の通りかつて前田家に仕えた武士の家で、家禄(給料)は550石だったそうです。
敷地面積は270坪、テニスコートの約1.5倍ほど。
正直そんなにびっくりするほど広くはありません。
でもかつては443坪あったんだそうで。
それでもテニスコート2面半ほどですけどね。
邸宅は既になく、残されているのは庭園と門のみです。
だから高田家「跡」なんですね。
ここでちょっと家禄550石について考察します。
考え方は色々ありますが、ここでは当時の階級を基準にしてみます。
まず藩政時代、加賀藩の武家は上図の通り6つの階級に分けられていました。
高田家はこの中の平士に属し、ランクからいくと真ん中よりちょっと上ってことになります。
ただその平士は家禄50~2,000石の武家とされているので、平士の中での550石は比較的低い位置になります。
ここまで見ると、ああ要するに武家としては中流レベルだったんだな~って感じなのですが、各階級の家数を元に計算するとまた違ってきます。
階級ごとの家数を元にグラフ化したのが上図です。
単純に階級だけで見ると真ん中くらいに位置する平士ですが、武家全体の数の中で見ると上位14%に入る計算になります。
つまり家禄550石ってのは、バリバリの上流階級レベルだったわけですね。
ちなみに現代に置き換えると、全世帯別収入において上位14%に入るには年収700万円くらい必要です。
ベンツくらいは乗れますわな。
まず入口にあるのがこの門。
素晴らしいですな♪
門形は両脇を茶色の土塀で固めた、三間一戸の堂々たる大門。
屋根を重々しい黒瓦で包む一方、軒下には格子を入れて見た目を軽やかにし、足元の敷石の方向は縦に揃えて奥行きを強調。
サイズも見た目も、上級武士の格に相応しい、立派なしつらえになっています。
でもこの門、はっきりとは説明されていませんが、江戸時代からのものじゃなさ気な感じ。
多分人目を引くために比較的最近、それっぽい雰囲気で造られたものでしょう。
本来の門はこちらです。
脇にあるので分かり辛く、見た目のインパクトも表の門と比べてちょっと弱め。
でも元々の正面はこっち側だったみたいです。
形式としては長屋門。
長屋門とは門の両脇に長屋(建物)が接続された門です。
以前にこのブログで紹介した新家邸長屋門、あれと同じ形式です。
門前には武者窓。
これも新家邸長屋門にありましたね。
ここから訪問者を見て、門を通すかどうか判断するわけです。
この武者窓、何気に格子が三角形になっているのが分かりますでしょうか?
この形、結構ミソでして、こうすることで内部から外を見る時は広い視野を確保でき、外部から中を覗く時は見えづらくなるのです。
さり気ないセキュリティ機能です。
長屋と門の構造はこうなっています。
門を挟んで左が仲間(ちゅうげん)部屋、右が厩(うまや・馬小屋)。
これも新家邸長屋門と同じ構成ですね。
あちらは私邸なので中に入れませんが、こちらは金沢市の所有なので見学自由。
中がどうなっているのか、直に見ることができます。
早速入ってみましょう!
まずは仲間部屋から。
仲間とは武士の身の回りの世話をする者で、今でいう家政婦さんみたいな感じです。
門番や屋敷内の雑用、主人が外出する際の付き添いなどをしていたそうです。
こちらは二間になっていて、土間の入口の先が細長い部屋になっています。
奥にはさっき見た武者窓。
ここで訪問者の対応をしたんですね。
その横にはほぼ正方形の部屋。
住み込みの仲間は、ここで寝起きをしていました。
厩はオール土間。
サイズ的には仲間部屋より少し広めで、ここには2頭の馬が飼われていました。
ここでちょっと気になることがありましてね。
ここの換気ってどんな具合だったんでしょうかね?
結構密閉されてんですよ。
馬って臭いじゃないですか、ウ〇チとか平気でボタボタするし。
こんなにガッチリ壁でふさいじゃったら、臭いの逃げ場がないんじゃないの?とか思うのですが。
しかもすぐ隣の仲間部屋には人が住んでる訳だし。
その辺、どうだったんですかね?
一通り門を見たら、庭もぜひ見て行ってください。
すぐそばを流れる用水から引き込んだ水を使った、地泉回遊式の庭園が広がっています。
それほど大きなものではないんですけどね、でも狭い空間に植栽をこってり盛り込んであって、その隙間をチョロチョロと水が流れてて、すごく涼やか。
見てるだけでスカッとした気持ちにさせてくれる、清廉な構成になっています。
京都なんかによくある枯山水もいいですけど、やっぱ庭には水があった方が断然いいですな!
長町武家屋敷跡に残る旧加賀藩士高田家跡。
屋敷がないのが少々残念ですが、門と庭だけでも見応え十分。
見学無料ですので、ぜひ遊びに来てみてください。
すぐそばには長町武家屋敷休憩館なんて施設もあります。
武家屋敷散策で疲れたし、腰下ろして休みたい~って人はそちらへどうぞ。
観光ボランティアガイドが常駐しているので、ちょっとした観光情報なんかも仕入れられますよ。
関連タグ >> 古建築 長町武家屋敷跡
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