月夜見宮 ボロボロになっても倒れない神木のド根性に涙
2021年02月06日
伊勢神宮外宮から約300メートルほど北に、こじんまりとした神社があります。
月夜見宮(つきよみのみや)です。
この神社、れっきとした伊勢神宮グループのひとつで、しかも格付け2位の別宮に当たります。
何気に格の高い神社なのです。
見た目地味だけど。(←!)
まず入口を固めるのがこの木造鳥居。
基本的なスタイルは神明鳥居。
柱が丸柱で、笠木(天頂の横木)が5角形になっている所が、伊勢神宮独特の仕立てです。
柱の部分に何か取り付けてあるの、分かりますかね?
これは榊(さかき)。
魔除けですね。
そもそも鳥居自体に既に魔除け効果があるのですが、そこにこの榊も添えることで、さらにパワーを重ねているのです。
その鳥居の先なんですが、ちょーっと通路の形状をよく見て欲しいのですよ。
画像じゃ分かり辛いですが、クランクになってます。
お城用語で言うところの「枡形(ますがた)」ですね。
防御の仕掛けです。
これなんでこうなってるのか?
これもやっぱり魔除けなんですね。
ここに枡形を備え、悪霊の侵入を阻止しているのです。
何としても外敵は入れねーからなー!みたいな。
うーん、何て高いディフェンス力!!
その先を進むと敷地がぱっと開けて、一気に神社の境内らしくなります。
右手には手水舎(てみずしゃ)。
参拝前に手を洗ってお清めを行う場所です。
柱はやっぱり丸柱。
ここに限らず伊勢神宮の建物ってのは、鳥居も含めて、みんな丸柱で建てられています。
「意地ですか?」と問いたくなるくらい、ほとんど丸柱。
わたしも若い頃に比べりゃ、ずいぶん丸くなりましたけどね。(←別にそんな事は聞いてない)
その手水舎の横には祓所(はらえど)。
その名の通りお祓いをする場所ですね。
多分お祓いに限らず、この神社の儀式全般がここで行われるのでしょう。
特に雨の日なんかはこうして屋根のある建物があると便利ですしね。
伊勢神宮の中にもこれと同じ建物があります。
規模はもうちょっと大きいですどね。
興味があったら探してみてください。
そして正面奥に、いよいよメインの社殿が現れます。
月夜見宮の本体。
カッコイイーですわな~♪
縦横ナナメに走る直線!直線!直線!
彩色の一切ない簡素なたたずまいに、木の温かな素材感。
足元には清廉な白の玉砂利が敷き詰められ、周囲には幽玄な木立。
なんか霊感むんむんですわね。
ああ~~~神さまいらっしゃる~~!!!!的オーラ満点!!
こちらに祀られている神さまは、月夜見尊(つきよみのみこと)と月夜見尊荒御魂(つきよみのみことのあらみたま)。
前回見てきた月読宮では和御魂(にぎみたま)と荒御魂(あらみたま)が別々に祀られていましたが、ここでは同じ社殿に祀られています。
一緒に祀るんなら改めて名前2つ並べる必要ないんでないの?って感じですが、かつては月読宮同様、社殿を別々に分けて祀っていたそうです。
それが火事で焼けてしまい、でも2棟作り直す余裕がなく、ひとつの社殿にまとめて合祀しちゃったんだそうで。
それが今でも続いてて、こうして1棟のままの状態で残っていると、そんな経緯みたいです。
結構苦難の歴史を歩んできたんですな。
ちょっと見て欲しいのが屋根上の仕立て。
千木(ちぎ・屋根上端部に付けられたV字形のツノ)が垂直に切った男千木(おちぎ)、鰹木(かつおぎ・屋根の大棟上に横向きに並べてある棒)が奇数の5本となっています。
バリバリの男神仕様。
単純に考えると、ここは男の神さまを祀っているから社殿もちゃんと男神仕様にしてあるんだな~って感じなのですが、事実はそうではなくて。
これは親分である豊受大神宮(とようけだいじんぐう)の仕様に合わせてあるんですね。
ここ月夜見宮は豊受大神宮の管轄なので、社殿の仕様も豊受大神宮と同じ男神系に揃えてあるのです。
ただその豊受大神宮で祀られている豊受大御神(とようけのおおみかみ)は何気に女神なんですよね~。
ああ、ややこしい!!(笑)
隣の空き地は古殿地(こでんち)ですね。
次回の式年遷宮(しきねんせんぐう・20年に1回社殿を新設して入れ替える儀式)で新たな社殿を建てる場所です。
奥にあるちっちゃな祠は心御柱(しんのみはしら)が収められていると伝えられるもの。
でも伊勢神宮外宮の記事で書いた通り、この中に実際何が入っているのかは謎。
ごく一部の人間しか知らない、伊勢神宮のトップシークレットとなっています。
んーーーーー気になるーーーー・・・・(もんもん)。
月夜見宮本体を見たら、次はちょっと右横に行ってみてください、もうひとつ社殿が建っています。
こちらは高河原神社(たかがわらじんじゃ)。
豊受大神宮の摂社です。
祀っているのは月夜見尊御魂(つきよみのみことのみたま)。
なんやら月夜見尊と名前がかぶってて分かりにくいですが、どうも別の神さまみたいです。
開拓にまつわる力を持っているそうです。
その高河原神社の反対側に、なんか意味深な細い道があって、その先にこんなのがあります。
お稲荷さん。
お稲荷さんと言えば赤い鳥居がトレードマークですが、ここの鳥居はご覧の通り白木。
伊勢神宮の息のかかった神社は、例えお稲荷さんであっても白木になっちゃうんですね。
右側になんやらハシゴみたいなものが立てかけてありますが、これはつっかえ棒です。
奥にある木が倒れないように入れてあります。
この木、聞くところによると散々な目に遭ってまして、一度雷に打たれ、さらに戦時中は焼夷弾で根元を焼かれたんだとか。
おかげでボロッボロになって自立できなくなり、こうして支えてあるそうです。
うーーん・・・。
あしたのジョーみたい。(←古っ!)
根元には狛犬ならぬ、白い狛狐が一対。
不自然なくらい新しいのは、比較的最近設置されたものだからでしょう。
中央にある石はご神体ですね。
なぜ石なのかは謎ですが、この石が神の依り代という事みたいです。
石種は凝灰岩ですかね?
まあそこは別にどうでもいいんだけど。
月読宮と同じ神さまを祀っているのに、あちこちに違いが散見される月夜見宮。
参拝される時はぜひ月読宮とセットで訪問し、ひとつひとつの違いをチェックしながら歩いてみてください。
他にもここで書いてないような色々な発見が見つかるかもしれませんよ!
次回はここから車で5分ほどの倭姫宮(やまとひめのみや)を見て行きます。
こちらも別宮のひとつで、格の高~い神社です。
神域ムードいっぱい、いい所ですよ~。
関連タグ >> 神社 伊勢神宮
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