
月読宮 四重に連なる社殿の荘厳なビジュアルにため息♪
2021年02月03日

伊勢神宮には関連する小神社が125もあります。
これらは正宮(しょうぐう)→別宮(べつくう)→摂社(せっしゃ)→末社(まっしゃ)→所管社(しょかんしゃ)→別宮所管社と6段階に格付けされており、それぞれ2、14、43、24、34、8の神社が列せられています。
そんな伊勢神宮ヒエラルキーの第2位の位置、別宮のひとつにエントリーされているのがこの月読宮(つきよみのみや)です。
場所は伊勢神宮の内宮を下ったちょっと先、外宮との中間くらいに位置します。

この神社、結構普通に住宅地の中にありまして、え?ここ?って所にあります。
なんも考えんと通ると、どこにでもあるごくありふれた土着の神社。
ほぼスルー確定です。
でもね、一歩中に入ると全然雰囲気が変わるのですよ。
なんたって伊勢神宮グループの序列第2位の神社ですからね。

鳥居をくぐるといきなり森。
鬱蒼とした木立の中に細い道がぐんにゃりと伸び、突然の神秘感に包まれます。
さっきまで普通に住宅地の一角にいたはずなのに、一瞬で異世界にでも吸い込まれたかのような不思議~な空間。
この森は多分、大古の姿がそのまま残ったものでしょうね。
今は住宅地に飲み込まれちゃってますが、恐らく昔はこんな感じでこの辺り一帯が森だったのでしょう。
きっと1000年、2000年前の人もこれと同じ眺めを見ていたはず。
そう考えると、ん~ファンタスティック♪

そんなクラシックロードを抜けるとようやく社殿。
まず最初に目にするのがこちらの宿衛屋(しゅくえいや)です。
一般的には社務所と呼ばれるものですね。
中には神社の人が常駐していて、お守りの販売や御朱印の受付なんかをしています。
建物はばっさりした木造切妻屋根の平屋。
日本的ではあるけれど、伊勢神宮的ではないですね。
そこ別にどうでもいいですが。

その宿衛屋を後にしてすたすた歩くと、木が中途半端~に邪魔しつつ、通路の向こうになんやら見えてきます。
お、何かあるぞ?的な。
この寸止め感がね~。
早く向こうの景色が見たいけど、左右の木立が邪魔して見えない、見たい、早く見たい、見えない!
木立邪魔ーーー!!
多分この神社、イジワルです。(←?)

そしてどーん!と登場、四連の社殿!!(3棟しか写ってないけど)
左から順番に伊佐奈弥宮(いざなみのみや)伊佐奈岐宮(いざなぎのみや)、月読宮、月読荒御魂宮(つきよみのあらみたまのみや)。
これね、現場で直接見るとインパクトが強烈なんですわ。
こってり古風な神明造の社殿が横一直線にズラリと整列。
こんな壮観な眺め、日本中探してもここだけでしょ♪

では左から順に見て行きます。
まずこちらが伊佐奈弥宮。
祀ってある神さまはもちろん伊弉冉尊(いざなみのみこと)。
国生みの神ですね。
この神さま、神話上は死んだってコトになってます。
で、それをダンナの伊弉諾尊(いざなぎのみこと)があの世まで迎えに行くんですが、なんやかんやでもめて、壮絶な追いかけっこをした挙句、結局逃げられてしまいます。
ちょっとかわいそうな神さまです。

そして二番目が伊佐奈岐宮。
祀られているのは伊弉諾尊、もう一人の国生みの神ですね。
この神さま、奥さんの伊弉冉尊の猛烈な追跡を振り切り、命からがら現世に戻った後、禊(みそぎ)を行います。
今でもお葬式の後、塩で体を清めたりするでしょ?
あれと同じで、あの世で付いた汚れを水で清めたんですね。
その時に生まれたのが天照大御神(あまてらすおおみかみ)、月読尊(つきよみのみこと)、須佐之男命(すさのおのみこと)の3神です。
つまり伊弉諾尊は月読尊のお父さんなんですね。

そしてメインの月読宮。
祀られているのは当然月読尊。
月読尊は『月』の字からも分かる通り、「夜」を司る神さまと言われています。
姉である天照大御神が太陽、つまり「昼」を司るのに対する対極的ポジションと言えます。
ちなみに末っ子の須佐之男命は「土」を司ります。

その横、一番右側にあるのが月読荒御魂宮。
こちらも隣と同じ月読尊を祀っていますが、よりアクティブな荒御魂(あらみたま)を祀っています。
荒御魂とは活動的になっている時の神さまですね。
もうちょっとちゃんと説明すると、同じ神さまでも和御魂(にぎみたま)と荒御魂、二つの面を持っています。
イメージとしては和御魂は「おっとり」、荒御魂は「ジャンジャン!バリバリ!」みたいな感じ。
つまり荒御魂の時の神さまはヤル気満々モードなんですね。
なのでよりお願い事が叶いやすいんだとか。

4つの社殿を一通り見たら、ちょっと仕様を確認してみてください。
屋根の造りが全部統一されてるのにお気付きでしょうか?
え?それが?と思われるかもしれませんが、これってちょっとイレギュラーなのです。
神社の屋根飾りってのには決まりがありまして、男神を祀っている場合の千木(ちぎ・屋根上端部に付けられたV字形のツノ)は先端を垂直に、女神の場合は水平に切るのが通例となっています。
鰹木(かつおぎ・屋根の大棟上に横向きに並べてある棒)の数も決まっていて、男神の場合は奇数、女神の場合は偶数。
それに対してここではどうなっているかと言うと、千木は女千木(めちぎ・水平切り)→女千木→女千木→女千木。
鰹木は6本→6本→6本→6本。
つまり全部「女性形」で統一してあるんですね。
でもここに祀られている神さまで女神は伊弉冉尊のみ、後は全部男神。
これはなぜ?

これってどうも親分に起因してるらしいんですね。
親分とは伊勢神宮内宮の事です。
この月読宮は内宮の所管になっていて、あっちが「女性形」なので、こっちの社殿も「女性形」で揃られてるみたいなんです。
そう言われればそんなモンなのかな~って気もしますが。
でも男の子に女の子の衣装を着せてるみたいで、な~んか妙ですな。

で、もうひとつ注目なのがサイズ。
分かりますかね、右と左で屋根の高さが違うの?
と言うか、建物のサイズ自体が一回り違うのです。
大きい方が月読宮、残り3社は全部ちょびっとスモール。
これはまあ当然でしょうね。
この神社は月読宮、月読尊が主役ですからね。
そこだけ社殿を大きくしてより強く存在を主張するのはむしろ当然。
何ならもっと露骨にデカくしてもいいくらい。

ここまで見てきて、あれ?古殿地(こでんち)なくね?と気付かれた方、いらっしゃいますでしょうか?
古殿地とは式年遷宮(しきねんせんぐう・20年に1回社殿を新設して入れ替える儀式)の次回の引っ越し場所なのですが、通常は現在の社殿の隣にあります。
でもないんです、ここは。
じゃあどこにあるのかと言うと、裏なんですね。
この月読宮だけは左右じゃなく、前後で敷地が入れ替わるのです。
なので現在の古殿地は、社殿の裏にひっそりと控えています。
注連縄張られてて、現場には行けないけどね。

一通り参拝が終わったら、ちょっと神社の裏口にも回ってみてください。
ここにももうひとつ神社があります。
葭原神社(あしはらじんじゃ)です。
祀られているのは佐佐津比古命(ささつひこのみこと)、宇加乃御玉御祖命(うかのみたまのみおやのみこと)、伊加利比賣命(いかりひめのみこと)。
いずれも農耕の神さまです。

ご覧の通り建物がかなり古く、建てられてから相当時間が経っているのが分かります。
この神社も遷宮は行われるのですが、その周期はハッキリ決まっていません。
古くなったら建て替えるわ、みたいな感じ。
現状かなり痛んでますので、そろそろやるかもしんないですね。

そんなに大きくはないけど、多くの見所がぎゅっと詰まった月読宮。
本体である伊勢神宮と違ってそんなに人が多くないので、ゆっくりと参拝が楽しめます。
ご訪問の際にはその美しい社殿をひとつひとつ、じっくりと時間をかけてご鑑賞ください。
次回はここと兄弟関係にある月夜見宮(つきよみのみや)を見て行きます。
兄弟って言うか、同体なんですけどね。
あららはあちらでまた違う面白さがあって楽しいですよ~♪
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