
高岡市立博物館 古代ギリシア神殿の体育館の中は運動禁止です
2020年12月23日

高岡古城公園の一角に謎にいびつな建物があります。
高岡市立博物館です。
ご覧の通り左は古代ギリシア神殿風、右は近代的な鉄筋コンクリート造。
一見別々の建物が隣接しているように見えますが、ドッキングしています。
正真正銘、これ全部でひとつの建物です。
コレなんでこんな事になっちゃってるのかと言うと、何となく分かるかもしれませんが、左がまず先に建てられて、右が後から付け足されたのです。
それならそれで先に建てた方のテイストに合わせれば良かったんじゃないの?と思うのですが、しなかったんですね、なぜか。
それは予算の都合だったのか、それともザ・お役所仕事の賜物だったのか、その辺の事情は不明です。

左、カッコイイですよね~♪
構造こそRC(鉄筋コンクリート)ですが、モチーフはバリバリのギリシア神殿。
正面は柱をガツンと据えた四柱式になっていて、上部にはペディメント(三角形の部分)。
おっと、柱の形状が丸じゃなくて四角っておかしくね?なんてツッコミは入れちゃ~いけません。(←とツッコむ)
本来はこちらが正面口なんですけどね、現在は完全にクローズされています。
どうも老朽化が原因だそうで。
って事で、入口は右側の建物になっています。

こちらがその右側建物。
見ての通りガッチガチの近代建築ですね。
直線とコンクリートで構成された積み木のようなエントランス。
左の建物とはえらい違い。
これはこれでスタイリッシュで、特にケチの付けようはないんですけどね。
でも左とひと繋がりだと思うと、どうしても違和感がありますよね。
どうせなら左に合わせてデザインして欲しかったな~。

館内の構成はこんな感じ。
新館(右の建物)では企画展を行っていて、展示内容はその時々で変わります。
旧館(左の建物)では常設展を行っていて、基本いつ行っても同じものが見られます。
今回は内容の変わる新館部分はスキップ、固定展示している旧館部分にフォーカスして見て行きます。
こちらでは高岡の歴史や産業についての展示を行っています。

まずは第1常設展示室。
天井を高く取った長方形のひと間になっていて、外観とは裏腹にギリシア感ゼロ。
どちらかと言うと体育館みたいな構造。
ちなみにこのギリシア神殿風体育館(←?)、元々は高岡産業博覧会の美術館パビリオンとして造られました。
なので弾力的な展示が行えるよう、こんな風なニュートラルな空間にしてあるんですね。

展示は『原始・古代』→『中世』→『近世』→『近代』→『現代』、と時代を追って見て行く構成になっています。
そのスタートにあるのがこちら。
『漁樵図屏風(ぎょしょうずびょうぶ)』です。
作者は堀川敬周(ほりかわ けいしゅう)。
江戸後期に活躍した絵師で、京都画壇に学び、初期高岡画壇の礎を築きました。
この作品は左が漁師の親子、右がキコリで、両者が問答を繰り広げる中国古典を題材としています。
これって結構人気のテーマだそうで、他にも数多くの絵師の作品が残っており、かの葛飾北斎も晩年に手掛けています。

こちらは古墳からの出土品。
ステキだ~♪
高岡一帯は古墳銀座というか、ゴロゴロあるのですよ、古墳が。
残念ながら見学用に整備されているものはほとんどないのですが、学術的な調査はそれなりに進められているようで。
その一部がこれらの出土品。
左は腕輪、中央は金環、右は銅鏡ですね。
なんかこんなん見てるだけで胸わくわくしちゃいますね。
古代ロマンワールドむんむん!

時代は一気に飛んじゃいますが、こちらは近代コーナーの展示。
電話なんですけど、今の若い人、知らないだろうな~この黒電話。
わたしがガキの頃は家にありましたよ、コレ。
当時の電話は、設備も機器も全部電電公社が独占してましたからね。
電話と言えばコレ。
どこの家に行っても同じものがありました。
真ん中にある円盤のダイヤルに指を突っ込んで、ジーコジーコ回してかけるのですよ。
いや~なつかしい!
当時は携帯電話なんてなかったな~。
って言うか、こんな話できる時点でぢぢーですな、わたくし(笑)。

なぜかジオラマなんかもあります。
商家の店先の再現。
少々窮屈ではありますが、スペースの都合上ダウンサイズした模型になっています。
右側に掛けられている看板をちょっと見て欲しいのですが「タカヂアスターゼ」と書かれています。
消化を助けるお薬で、高峰譲吉(たかみね じょうきち)って人が開発したものです。
高峰は高岡出身の科学者で、アドレナリンなんかも発見しています。
薬関係でメチャクチャ儲けて、おカネわんさか持ってて、ニューヨークに行くと文化活動の一環として贈られた高峰桜なんかが今も残っています。
興味があったら見に行ってみてください。(←ニューヨークまでか?)

その第1常設展示室を出るとエントランスホールBというスペースに出ます。
こちらは先に見たギリシア神殿風入口の内側ですね。
本来の入口です。
いいですわな、この木製の扉。
実用性だけで作られた素っ気なさが逆にイカしてて。
空間全体の空気もレトロ感にあふれてて。
めっちゃノスタルジー。
今はなぜか物置き状態になってんだけど(汗)。

そして第2常設展示室。
ここでは高岡で発展した産業について紹介されています。
おもな産業は鋳銅と漆器。
共に江戸時代の殖産政策を起源とし、現代にもその命脈は受け継がれています。

銅製品の代表格と言えばコレ、梵鐘。
日本人なら見たことない人はいないはず。
そう、お寺の鐘ですね。
梵鐘については今でも全国的に大きなシェアを占めているそうで、お近くの寺にぶら下がっている鐘もひょっとしたら高岡製かもしれません。
確認方法がないので見ても分からんけどね。

こちらは高岡が生んだヒット商品のひとつ、「にしん鍋」。
鋳銅技術を応用して作られた鉄製品です。
昔は北海道でニシンがうじゃうじゃ獲れたそうで、それを煮て絞って乾かした「鰊粕(にしんかす)」ってのが良質の肥料としてものすごく人気がありました。
乾燥してるので軽いし保存も効くし、輸送面でも便利ですからね。
その鰊を煮る道具として、この大鍋が売れに売れまくったのです。

最後に休憩室。
こちらでは”ふるさとの歴史を彩る人々”と題して、高岡出身の著名人を紹介しています。
先に名前の出た高峰譲吉を筆頭に、室崎琴月(むろざき きんげつ・作曲家)、林忠正(はやし ただまさ・美術商)、五十嵐篤好(いがらし あつよし・十村役)といった面々。
ちょっとマイナー過ぎて、正直わたしも知らん人ばっかなのですが、それなりの足跡を残した人たちのようです。
まあ一服でもでもしながら、彼らの辿った人生をゆ~っくりと追ってみて下さい。

高岡古城公園の中にひっそりとたたずむ高岡市立博物館。
入場無料ですので、お城散歩のついでにお気軽にどうぞ。
なおこの施設、既に移転が決定しています。
今はまだ時期も移転先も未定とのことなので、もう少し先の事になるとは思いますが、どこに行っちゃうんでしょうね?
この謎にギリシアな建築が見られるのも、ひょっとしたらあとわずかかもしれません。
せっかくなので見られる内にぜひ一度見に来といてください。
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