店主たみこの観光案内ブログ

金池山 心蓮社 仏教世界の「形」って知ってますか?

2020年11月11日

金池山 心蓮社

 

卯辰山寺院群の端っこ、富山寄りのところに面白いお寺があります。
心蓮社(しんれんしゃ)です。
変な名前ですがちゃんとお寺です、会社ではありません。

 

創建は1612年、江戸時代が始まったばかりでまだバタバタしてた頃。
京都の清浄華院(しょうじょうけいん・これもお寺の名前)の休誉露月上人という人が、ここ金沢の塩屋町に開きました。
その後1637年に今の場所に移転したものの、火事に遭って堂宇を焼失、以来コツコツと復興を重ねながら現在に至っています。

 

心蓮社の山門

 

まず入口にガガーン!とそびえるのがこの山門。
形式は薬医門(正面に主柱となる鏡柱を2本、後ろに控え柱を2本備えた門)ですね。

 

プロポーションがいいですわね。
基壇に正方形の石敷きをざっと並べて、その両側に同じく正方形に切り取った柱の礎石をがしっと据えて。
そこからすっくと伸びる黒く力強い鏡柱。
上部は組み木でガッチリと固められ、軒下には垂木の直線が規則正しく連続し。
屋根には滑らかなカーブを描いた銅板瓦がシックな深緑を放つ。

 

もうね、見た瞬間くぐらなおれませんわ♪(←なんでや?)

 

鐘楼

 

山門左手には鐘楼(しょうろう)。
これもプロポーション抜群!

 

ガッチリと組まれた基壇の石垣は表面に凹凸を入れた荒加工仕上げ。
石材には赤戸室石・青戸室石をランダムに散らして色どりを華やかにし。
その上に建つ上物は、梵鐘が丸見えの吹き放し構造。
柱は上部に向けてやや内側に傾け、腰貫(こしぬき)・飛貫(ひぬき)・頭貫(かしらぬき)の三本の梁で全体を固定。
飛貫と頭貫の間には龍の透かし彫りを入れて強烈なまでの霊力をアピールしつつ、屋根頂部には獅子口の鬼瓦も据えて迫力満点の威圧を備える。

 

こんな鐘鳴らされたら、鬼でも逃げますぜ!

 

前庭

 

そして境内中央には庭園。

 

これがまたね、決して広くはないんですけど味があるんですよ。
びっしりと生えた苔の中に散らされた配石の妙。
ぽつぽつと植えられた植栽の放つ、生き生きと萌える緑。
そしてぐにゃりとナナメに伸びる、まるでふすま絵のような黒松。

 

全体の構成が素晴らしいですな。
不規則が生み出す整然の美。
日本庭園の粋みたいなものがビンビンと伝わって来る、文化性あふれる名園です。

 

平和祈念塔

 

その庭園の右手にあるのがこちらの平和祈念塔。
異様ともいえる存在感で訪問者の目を奪います。

 

この形、どこかで見たことありません?
そう、高野山にある根本大塔!
あれにソックリです。
というか、あれをモデルにして作ったのでしょう。

 

ちなみにこの塔の形は仏教思想である「天円地方(=天は円く、地は四角い)」という考えに基づいています。
なので建物の基壇は正方形で、1つめの屋根の付け根の部分がくりんと丸くなってるでしょ?
これって要するに建物で世界の姿を表している訳なんですね。

つまりこの建物は建物そのものが「世界」。
そう考えるとなかなかにダイナミック!

 

阿弥陀三尊像

 

中を覗くと仏像が3体並んでいます。
中央が阿弥陀如来(あみだにょらい)、右が十一面観音(じゅういちめんかんのん)、左が恐らく勢至菩薩(せいしぼさつ)。
いわゆる阿弥陀三尊像。

 

この塔は平和祈念のための塔ですからね。
無限の光で人々を救うとされている阿弥陀如来は、まさに平和の象徴と考えられたのでしょう。

 

心蓮社の本堂

 

そしてお寺の心臓部である本堂。
こちらも立派な造りになっています。

 

先にも書きましたが、このお寺は一度火事で全焼しています。
その後ずっと質素な仮の建物でやり過ごしてきたのですが、大正の時代になってようやく再興が始まり、その時真っ先に作り替えられたのがこの本堂なのです。
なので本堂はこのお寺の中で最も古い建物となっています。

 

本堂正面

 

これがまたいいですわね。

 

大振りな切妻屋根がばっさりと広がり、その下には白漆喰の壁。
縦横に走る束と梁のラインがピシピシと小気味よく、全体にスカッと抜けが良くて。


そして入口上部にかぶさる大きな唐破風。
滑らかなカーブが実に柔らかく、そして美しく。
一方で軒下に彫られた龍の彫刻が勇ましいまでの神威を放ち、訪問者を迎える。

 

大正期の寺院建築。
あなどれね~ゼ~♪

 

めでた造りの庭園

 

そしてもうひとつ、忘れずに見て行って欲しいのが裏庭。

本堂の脇にある細い通路、ちょっと雰囲気的に入り辛いんだけど、勇気(?)を持って進んでください。

ぐるっと進んだ先に庭園が現れます。

 

こちらは「めでた造り」と呼ばれる遠州流庭園となっています。

この「めでた造り」について色々調べたのですが、はっきりした定義が不明。

どうも「心」の字を表した池に、鶴と亀に見立た植栽を配した全体の構成を「めでた造り」と呼んでるようです。

多分このお寺だけで用いているオリジナルワードでしょう。

 

まあその辺、あまり面倒臭く考えなくていいです。

純粋に庭の眺めを楽しんでってください。

清廉で心静まるい~い庭ですよ!

 

山門前の地蔵堂

 

決して広くはないけれど、コンパクトに見せ場の詰まった心蓮社。
見れば見るほどエキサイティングに面白いお寺です。
訪問の際には、ひとつひとつじ~っくりと鑑賞してってください。

 

あっとそうそう、ここの山門の前には地蔵堂がありまして、そこのお地蔵さまには歯痛を癒す力があるんだそうです。

歯が痛い~って人、一度お参りしてはいかがですか?

 

歯医者に行った方が絶対早いけど(笑)。

 

 

金池山 心蓮社

住所:石川県金沢市山の上町 4-11

TEL:076-252-8623

ホームページ:浄土宗公式サイト

 




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関連タグ >> 卯辰山寺院群 お寺 

 


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