伊勢神宮 内宮(皇大神宮)五丈殿~正宮 ◆神さまの大好物はア〇ビ?
2020年11月02日
伊勢神宮の内宮レポート3回目。
前回は神楽殿までを見てきました。
今回はいよいよその先、メインである正宮まで進みます。
まず見て欲しいのが神楽殿の横にあるこの大きな建物。
これは五丈殿(ごじょうでん)と呼ばれるもので、まあ言ってみれば雨除けです。
見ての通り柱と屋根だけで構成されていて、雨の日の祭祀はここで行われます。
外宮にもありましたよね、これと同じものが。
五丈殿と九丈殿。
あれと同じです。
その五丈殿の横に小さな建物がふたつあります。
左が御酒殿(みさかどの)、右が由貴御倉(ゆきのみくら)。
まずは御酒殿から。
こちらは名前から分かる通り、酒の神を祀ってあります。
昔はここでお酒を醸造していたんだそうですが、今はご覧の通り建物があるだけです。
仕立ては社殿と言うより、ほぼ倉庫ですね。
千木(ちぎ・屋根上端部に付けられたV字形のツノ)もなく鰹木(かつおぎ・屋根の大棟上に横向きに並べてある棒)もなく、床は高床式じゃなくて、周りを囲む瑞垣(みずがき)もなく。
社殿らしいものと言えば正面に立てられている蕃塀(ばんぺい)くらい。
蕃塀とは以前に外宮の正宮の所で説明した通り、邪なるものの侵入をシャットアウトする霊的な防御壁です。
その隣にあるのがこちらの由貴御倉。
御酒殿がお酒を祀るのに対して、こちらでは食べ物を祀っています。
元々は食物庫だったそうで、その用途が転じて食べ物を祀る神社となったそうです。
こちらはサイズこそ御酒殿よりひと回り小さいのですが、何気に千木と鰹木はちゃんと付いています。
一応(?)神社の社殿としての体裁は整えてる感じ。
これは多分、結構最近まで御酒殿が神を祀る場所ではなく作業のための場所だったからでしょう。
先にも書いた通り、御酒殿ではかつて酒造りが行われていた訳ですから、神棚くらいはあったでしょうが、基本的には人間が活動する場所でした。
なのでごてごて神社的に装飾する必要がなかったのでしょう。
その名残りが今もこうして建物の違いとして残っていると考えられます。
その由貴御倉の横、通路を1本渡った先に特に案内も標識もない建物があります。
ちょーっと何のためにあるのかよく分からない建物。
こちらは忌火屋殿(いみびやでん)と呼ばれるもので、神さま、つまり天照大御神(あまてらすおおみかみ)に奉幣する食事を用意する場所です。
分かりやすく言えば台所ですね。
ここでは毎日2回、神饌(しんせん・神さまのための食事)が作られます。
前にある注連縄で囲まれた広場は、祓所(はらえど)と呼ばれる祭祀のための場所。
用意された神饌とそれを捧げる神職は、ここで清めの儀式を行ってから神前へと進むのです。
そんな忌火屋殿の脇に妙な場所があります。
うやうやしく注連縄で結界された、謎なスペース。
こちら、実は神社です。
外宮でも見ましたよね、四至神(みやのめぐりのかみ)。
あの内宮版です。
外宮では榊の木を祀ってありましたが、ここでは石を祀ってあります。
この石がご神体となり、全然神社っぽく見えないけど、神社って事になっているのです。
なのでお参りの仕方は普通の神社と同じ、二礼二拍手一礼。
みんな訳も分からず焚火にでも当たるように手をかざして行きますが、アレは完全な勘違いですので、マネしないように。
さー、いよいよクライマックスの正宮、と行きたいところですが、もうひとつだけ寄り道。
正宮へと続く階段の下にこんな建物があります。
御贄調舎(みにえちょうしゃ)です。
ここ何かというと、やっぱり天照大御神に奉幣する神饌を用意する場所で、アワビ専用の場所です。
ここに外宮の祭神である豊受大御神(とようけのおおみかみ)をお迎えし、アワビを調理して捧げるんだとか。
なんでアワビだけそんな特別扱いするのかは不明ですが、まあ昔からアワビは高級食材だったんでしょうね。
神さまってのはどうやら思ってる以上にグルメみたいです。
そして最後になりましたが、行きましょう正宮。
内宮最大のメインイベントとなる場所です。
外宮の正宮は平地の延長線上にのっぺりとありましたが、内宮は高台の上にあります。
なのでお参りする前に一度見上げて、そして登る訳ですね。
この「上に上がる」という行為が高揚感を高めるのですよ。
「あーこの上に神さまがいるんだなー」みたいな。
中の配置図はご覧の通り。
外宮の正宮と似ているようで微妙に違います。
ただ参拝者目線で確認できる範囲ではほぼその実感はなく、大体まー同じ感じです。
なお撮影できるのはこの階段下まで。
そこから先は撮影禁止となっているので、外宮同様、この後は『読者さまのご想像ビジョン』でお楽しみください。
階段を登った先にある鳥居をくぐると、そこにあるのは南御門。
ガーンと視界を遮り、その先は全然見えません。
参拝者はこれ以上進めず、どうしても見たければ門を突破するか、あるいはドローンでも飛ばすか。
どっちも本当にやったら捕まるけどね。(←!)
なので我慢です。
見たい気持ちをじーーーーーーっと抑えてください。
門の脇に回って奥を見ようと思っても、4重に巡らされている塀が邪魔して、やっぱり向こうは見えません。
見えるのは屋根の上っかわがチョロンとだけ。
うあ~~~不完全燃焼~~!!
この見たーいけど全然見えーんという、なんともやり切れない気持ち。
もーちょっと見せてくれてもええーんでねーー???
そんな悶々とした気持ちを引きずったまま、出口です。
ほら、皆さんガックリと肩を落としてるでしょ?
え?別にそうでもない??(汗)
まあ見せてもらえんモンは仕方がないので、ここは諦めて、諦めて、残念ながら諦めて、なんとか自分に言い聞かせて諦めて、とにかく諦めて、力づくでも諦めて、涙を飲んで諦・・(←かなりしつこい性格)、次イキましょー。
この出口の石段を下りた所にある石垣の造りにちょーっと注目してみてください。
何気に面白いものが見られます。
それがコレね。
え?コレが?と思われるかもしれませんが、この石垣の積み方、ものすごく古いやり方なんです。
取り合えず崩れなきゃいいや、程度の技術。
このやり方だと強度が弱く、高くは積めないんですね。
じゃあ高く積むにはどうすんの?と言うと、お城に詳しい方なら既にこの時点で何の話がしたいのかピンと来ると思いますが、そう、アレをやるんですね。
それがコレ、算木積みです。
この画像は姫路城の「ぬの門」を出てすぐの所にある高石垣ですが、見て欲しいのは角の部分。
平面部と違って、長細い石を横向きに置いてあるのが分かります。
しかもよーく見ると、長面と短面を交互に重ねています。
これが算木積み。
この方法が開発されたのは戦国時代後期。
伊勢神宮ができたのは、当然それより全然前。
なので石の積み方を見ただけで、ああずいぶん古~い時代に積まれたモンなんだな~、ってのがひと目で分かります。
石垣ついでにもうひとつ。
もう少し横に回り込むとこんな景色も見られます。
分かりますかね?石垣が2段に積んであるのが?
そしてよく見ると、下の積み方が上に比べて明らかに粗い。
これは2度に渡って造成した痕跡ですね。
下の石垣が積まれた頃はまだ技術が拙く、そのせいで石が粗く大きく不揃いです。
かなり大雑把な印象。
それに比べて2段目は石のサイズをほぼ揃えて緻密に組み上げ、上端のラインもシャープに揃えてあります。
両者の技術レベルの格差は明白で、恐らく上と下とでは何百年かの時間差があると思われます。
長々と見てきた伊勢神宮編。
いよいよ次回がラストです。
最後は正宮を出て脇にある道をぐるりと通り、参集殿までのルートを見て行きます。
残り僅かの伊勢神宮ワールド、どうぞもう少しだけお付き合いください。
関連タグ >> 神社 伊勢神宮 伊勢神宮 内宮
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